そしてやってきた公演当日、事前に警察が手を廻した大ホールに
人影は見られませんでした。ただ一人、客席中央に陣取る純白の
スーツの水野を除いて。
 
今、ステージには老鼓師、そして己の内なる「情鬼」と対峙する舞人
(まいびと)の姿が。
 
鬼気迫る、尚且つ妖艶な踊りが続く中で怪人の願いは叶えられました。今、藤千代は彼一人の為に踊っているのです、ようやく彼女を自分だけのものに出来る日が訪れたのでした。
 
一方、会場の操作室(地下の電気室?機械室?)では警察がガス人間
抹殺計画の最終段階に入っていました。何と彼らはホールにUMガス
(無毒無臭の可燃性ガス)を充満させ怪人もろ共一気に葬り去ろうとして
いたのでした!えっ、まさか東京の真ん中でビル一つを吹き飛ばすって
本当にそんな事するつもりなんですか?
 
 
現在の不発弾処理でも半径数百mの住民を避難させて自衛隊が出動して
行っているのに警察だけで怪獣(怪物?)退治をやるとは警視庁、いや
都知事の権限でも不可能なのでは?これはどう考えても軍隊の領分だと
思うのですが。
 
その時、会場を取り巻いていた群集の一部が場内になだれ込みました!
って警察は自分達がこれから何をするのか分かっているのでしょうか?
当然ビル周辺は絶対立ち入り禁止にしなければいけないのにまるで
火事場見物のような人だかりです。
大体、場内の操作室で爆破スイッチを押そうという事からして無茶苦茶
ですね、点火した途端全員吹き飛ぶでしょう。或いは1000人規模の
ホールに満たしたガスに引火して小規模爆発で収まると考えている?
会場内で花火大会でもやるつもりなのでしょうか(笑)
 
藤千代の舞台に退屈した暴徒から
「ガス人間を出せ!」
と罵声が飛びます。でも警察が会場ごとガス人間を爆殺する計画は
既に報道陣には漏れていたのですが、この人達は命が惜しくないので
しょうか?まさか警察がそこまでしないだろうと高を括っていたのかも
知れませんが、マッチ一本火事の元です(古!)間違って?一服する
バカが出てくるかも(笑)
 
しかし、あまりに下品な連中の悪態に自分達のセレモニー(結婚式?)
を邪魔されたと頭に血が上った水野さんは
「俺がガス人間だ、出て行け!」
と一喝します。
次第に変身していく彼を間近にして暴徒達は慌てふためいて逃げ出し
ました(笑)
 
様子を伺っていた操作室ではこれ幸いと(藤千代さん達を残したまま
田端警部・田島義文さんの一存「私が責任を取ります(笑)」で)
点火スイッチが押されました!
が、うん?何も起こりません(みなさん命拾いしましたね・笑)
 
何と配電盤が壊されていたのでした!いったい誰が?と思う間に
藤千代さんは情鬼の舞台を演じ切りました。
 
たった一人の拍手に迎えられる春日流最後の家元、彼女は家門の
頚木(くびき)からやっと自由になる事が出来たのです。
(「これからは自分の思う通りに進もう」)
舞台を駆け下りた藤千代は水野に抱締められたまま手にしたライター
(自らの終演ボタン)を押したのでした…。
 
途端に起こる大爆発!ホール全体が紅蓮の炎に包まれました。
上手い具合に?会場から外に避難していた岡本さん達は遠巻きに
燃え上がるビルを眺めております。
 
「ガス人間は死んだんでしょうか?」
「分かりません、何故爆発したかも分からないのです」
と田宮博士
(伊藤久哉・いとうひさやさん:ガス人間抹殺計画の立案者で当初は
研究対象としての彼に興味を示し、藤千代さんを説得していました)
は少し残念そうな表情を浮べました。
 
最小限の犠牲でガス人間の恐怖を永遠に終息させた本当の立役者は
生涯最後の舞台で文字通り自らの命を燃やし尽くした一人の舞姫だった
のでした。
 

映画ではこの後、瀕死のガス人間が会場の入り口に這い出してきて
(息絶える?)ラストとなるのですが、私的には
「二人の魂はこのまま天に昇っていきました」
の方がシックリくるのです(世評では藤千代さんの着物を羽織ったまま
息絶えた水野さんの上に会場の外に飾られてあった大きな祝い花輪が
倒れ被さるラストが評判なのですが、彼一人で?というところが少々
気にかかるのですね。死出の道行きは二人で歩いて貰いたいものです)
 
しかし、藤千代・爺やという本格的な和食の一品に岡本・京子という
お昼のランチ?が絡んだ贅沢な夕食を戴いた気分を味わえる(笑)
幸せな一作ですね。こちらも「海底軍艦」に負けない個々の役者が
素晴らしいキャラクタードラマだと思います。
 
ひょっとして、水野さんが(超人ではなく)普通の?横領犯だったと
しても、このような名作が生まれたかも知れませんね。
本作は特撮恋愛ドラマの傑作という評価を受けていますが特撮の
冠(かんむり)を外しても十分観る者の心に訴える傑作だと思います。
 

如何でしたでしょうか、大スペクタクル以外の世界でも特撮ドラマは
活躍しています。
では、またこのような名作の世界にご案内したいと思います。
 
それではまた。
 
                                       (了)