「あっ、このシチュエーションって…」
「なっちどうしたの?」
「なっちどうしたの?」
「うん、ママ。こうやって入院をきっかけにして、
ベットの上で歴史の謎を推理した名探偵がいたのよ」
「へー、本当」
「うん、私が尊敬する高木彬光(たかぎあきみつ)先生
「うん、私が尊敬する高木彬光(たかぎあきみつ)先生
が生み出した名探偵、神津恭介(かみづきょうすけ)よ」
「神津恭介?」
「うん、彼は3回の入院の中で源義経(みなもとのよしつね)
「うん、彼は3回の入院の中で源義経(みなもとのよしつね)
が成吉思汗(ジンギスカン)になった事、邪馬台国がどこに
あったかという事、それから神話と古代天皇達の関係を
次々に解き明かしたのよ」
「へー、高木さんて学者なの?」
「ううんママ、推理小説家よ。でもね、この研究は学者
「ううんママ、推理小説家よ。でもね、この研究は学者
レベルに達していると言って良いと思うわ。
私は逆に先生が作家だったからより自由な発想で歴史の
謎に迫れたと思うの。先生の説は学会で広く認められて
いるものでは無いかもしれないけど私達読者は素直に
受け入れられるわ」
「へーなっち、えらくごひいきなのね」
「うん、ママも一度先生の『成吉思汗の秘密』を読んで
「うん、ママも一度先生の『成吉思汗の秘密』を読んで
みると良いわ」
「成吉思汗ってモンゴルの?」
「うん、一代で中国北方の遊牧民族を統合して後に
「うん、一代で中国北方の遊牧民族を統合して後に
中国から東ヨーロッパにまでまたがるモンゴル帝国
の基礎を築き上げた大英雄の成吉思汗。
現在ではモンゴル語の発音に照らしてチンギス・ハーン
と呼ばれてるけど、その人が源氏の英雄源義経が変身
した姿だったっていう途方もない推理を展開するのよ。
まあこの説は江戸時代から盛んに言われるようになった
ものだけど、義経一行が東北から北海道に逃げていく
道筋にいろいろとゆかりの地が出てくるのね。
その一つに青森県の八戸(はちのへ)があるんだけど、
そこで義経は地元の豪族の娘との間に鶴姫っていう
子供を儲けるのね、そして鶴姫は成長して別の豪族の
息子と恋人になるんだけど何と2人の家は仲が悪かったのよ」
「へー、ロミオとジュリエットね」
「うん、全くその通り。2人は駆け落ちするんだけど
「うん、全くその通り。2人は駆け落ちするんだけど
追っ手に追い詰められて、椿山(つばきやま)っていう
山の中で心中しちゃうのよ」
「えっ!そのままね」
「うん、もちろん義経は北海道からシベリアを越えて
「うん、もちろん義経は北海道からシベリアを越えて
モンゴルへ行っちゃたからそんな事知るよしも無いん
だけど、その後義経の作ったモンゴル帝国も100年程
で衰えて中国、その頃の明(みん)によってまた北方に
追いやられちゃうのね。
それから250年以上たってまた北方の遊牧民族が
南下して来て清(しん)王朝を作るのよ。この清が
中国の最後の統一王朝で第12代の溥儀(ふぎ)が
ラストエンペラーになるわけね。
この人には溥傑(ふけつ)っていう弟がいて、この人が
日本の貴族の嵯峨浩(さがひろ)さんと政略結婚する
のね。
でも、2人の夫婦仲は良くて女の子が2人生まれてるのよ
そして長女の慧生(えいせい)さんが学習院大学の同級生
の男の子と交際してたんだけど、お互いの家の環境の
違いからか、伊豆の天城山で心中しちゃうのね」
「えっ、それって?」
「うん、当時は天城山心中って言われて大騒ぎになった
「うん、当時は天城山心中って言われて大騒ぎになった
んだけど、先生はこれを椿山心中の再現だと考えたのよ」
きみは頭の中を整理していた。
「えーっと、慧生さんは清の王族で…なっち、清と
「えーっと、慧生さんは清の王族で…なっち、清と
モンゴル帝国の関係は?」
「うん、民族としては別なんだけど清を作った満州族
(まんしゅうぞく)は元々女真族(じょしんぞく)といって
モンゴル帝国の時代にはずっと支配を受けてたのね。
その後は明の支配を受けるようになって、それから後の
清を作る皇帝が出て民族名も満州族に変えて溥儀まで
繋がっていくのよ」
「ふーん、まるっきり接点がない訳でもないのね。でも
その男の子って?」
「うん、貴族では無いんだけど青森県の鉄道会社の
「うん、貴族では無いんだけど青森県の鉄道会社の
重役の息子よ」
「青森?」
「そう、青森県、八戸市のね」
「そう、青森県、八戸市のね」
「何ですって!!それって…」
「うん、男は八戸の資産家の息子。女の祖先は
「うん、男は八戸の資産家の息子。女の祖先は
義経に繋がる。お互いの家からは理解を得られない」
「うーん…感じるものがあるわね」
「なっち、浩さんはこれは無理心中だと言ってたんだよね」
「なっち、浩さんはこれは無理心中だと言ってたんだよね」
ドクターは記憶を辿っていた。
「うん、確かにね。でも2人を追い詰めたものは何だったの
かしら?私は2人の出会いから運命的なものを感じるのね
先生はこの事件をきっかけに『成吉思汗の秘密』を書き
上げたのよ」
「ふーんなるほど、理論的には途方もないけど引かれる
わね。うん、魅力的!その本読んでみるわ」
「私は信じてるわ、最早願望の世界に入ってます(笑)」
「私は信じてるわ、最早願望の世界に入ってます(笑)」
「そうかー。なっち、そこにロマンがあるわけだね」
「あれー?ドクター分かってるじゃない!そうよ、
歴史は人間のした事の積み重ねなのよ。
学校で年号ばっかり教えるからみんな歴史嫌いに
なっちゃうのよ、もっとロマンを伝えないとね」
「よーしなっち、そんなロマンあふれる歴史の謎解きを
やってみるか?」
「そうね、どうせやるならそうしたいんだけど、そういう
ネタは中々無いのよね」
つづく