こんにちは、機能性医学の入門書を書きました!是非ご一読いただけますと幸いです。

 斎藤が「機能性医学」に出合ったのは2006年のことでした。自分で鴨の燻製をつくったのですが、しばらく放っておいたら白カビが生えました。でも、ソーセージで白カビなんて珍しくない。胃の中に入れば、胃酸が溶かしてくれるだろう、と侮って食べました。自製の薫製ですから、ことのほか美味しく感じました。ところが―—、その日の晩から猛烈な下痢に襲われ、やがて手足に湿疹ができ、全身が気だるくなり……で、酷い目に遭いました。
 そのあと、たまたま米国で開かれていた機能性医学に基づく腸内環境再生の講演を聴講することになり、これだ! と思いました。思い込んだらまっしぐら。この新しい医学、ファンクショナルメディスンを習得しよう、と認定医プログラムに参加するため、年に2、3回渡米しました。
 通うこと7年。昨2014年に目出たく認定医を取得しました。その間、2008年に日本機能性医学研究所を設立し、ドクター向けの教育セミナーを行い、機能性医学の治療に必要な、たとえば腸内環境を再生する「mdFood」や、日本初の高濃度ビタミンDサプリ「VD1000」、マグネシウム欠乏を改善するための「CaMg300」などを医家向け、一般向けに開発し、いまも製造・販売しています。→ http://www.mdfood.jp
 2011年に大きな転機がありました。東日本大震災をきっかけとする福島第一原子力発電所の大事故です。3月12日午後3時36分に1号機が、同月14日午前11時1分に3号機が爆発しました。私は当時、たまたまガイガーカウンターを持っていて、15日深夜から1時間おきに東京の空間線量を測定しました。15日朝9~11時までの2時間、東京の空間線量は1μSv/hと通常の10倍の線量に上昇するのを動画におさめ、YouTubeにアップしました。https://youtu.be/AjFP5hdaOF8
 正直そのとき「日本が失われてしまう」と思いました。どうやって日本で生きていくのか? 医者として自分は何ができるのか?いろいろ悩み、考えました。
 2012年1月、放射線医学、ストレス医学、遺伝子学などの研究者が集まり、「湯布院サミット」が開かれました。アンチエイジング研究の第一人者、白澤卓二・順天堂大学教授のお声がけによる、クローズドの、いってみれば内輪の学会でした。この会が、2013年に白澤卓二先生と日本ファンクショナルダイエット協会(JFDA)を設立するキッカケになったのです。
 JFDAは第一に、機能性医学に基づいた食事法、ケトジェニック・ダイエットを広めることを目的にしています。もともとは糖尿病治療の食事法として一部の研究者たちの間で検討されていたもので、ここでの「ダイエット」は「減量」ではなく、「食事法」という意味です。糖質制限し、タンパク質とビタミン、ミネラルを積極的に摂取することで体内のケトン体を増やせば、カラダの抗酸化力も増す。そうすれば、国民を放射線の害から守ることができる。私はそう考えました。
 白澤先生と私、斎藤で、機能性医学のライフスタイル・アイコンである「ケトジェニック・ダイエット」を、痩身法であると同時に、抗酸化力を引き上げるアンチエイジング健康法に昇華させたのです。
 斎藤がいまも憂慮しているのは、日本人のタンパク質の摂取量が1999年をピークに減少傾向にあることです。誤った健康志向による「肉ばなれ現象」が原因です。この減少を食い止めるには牛肉のイメージを変えるしかない!
 考えた末、実践して書き上げたのが『腹いっぱい肉を食べて1週間5kg! ケトジェニック・ダイエット』(ソフトバンク新書)です。人類はもともと肉食です。だから、肉はいくら食べてもアレルギーが起きにくく、ビタミン、ミネラルも豊富で、タンパク質源としては最適なのです。カラダにいいオメガ3脂肪酸が豊富な牧草牛にドライエイジングをかけ、健康訴求と嗜好性を高めた「次世代のステーキ」をいかに普及させるか。美食家を満足させながら、「痩せる」こともできる魔法のスーパーフード、それが牧草牛です。
「義を見てせざるは勇無きなり」
 人として当然行うべきことと知りながら、それを実行しないのは勇気がないからであるという意味の、『論語』にある言葉です。
 私にとっての「義」とは、「機能性医学」です。機能性医学を知った以上、この医学を世の中に届け、実行しないとしたら、天に対して恥ずべきことです。本書は、JFDA設立に次いで、勇気ある斎藤が起こした行動の第2弾になります。
 健康と病気の大きな別れ道は、健康情報を知っているかどうか、です。アメリカの政治哲学者ジョン・ロールズの言葉を借りれば、「国民には『無知のベール』がかかっている」。近頃話題の日本国憲法ですが、第25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあります。健康でいる権利は万人に平等にあるべきだし、そのための知識のインフラも平等に整備されてしかるべきです。しかし、知識のインフラはさまざまな理由で平等に行き渡らない可能性があります。それならば、日常的にスーパーやコンビニで、機能性医学の考え方が入っている食品が手軽に買えるようになればいい。
 斎藤先生の夢は? と取材等で質問されると、「これを食べていれば健康が維持できる究極のカップラーメンをつくることです」と答えているのは、考えた末に思いついた方法です。私が新たに「コンビニ健康法」を提案しようとしているのは、ライフスタイルが多様化している現代人にとって、最も取り入れやすい方法だからです。
 この本は、健康を目指す一般の方はもちろん、医師などの医療従事者、食に関わるすべての人々、あるいは、「物事には原因と結果がある」という科学的なモノの見方や考え方を学ぼうとする学生のみなさんにも読んでいただきたいと思います。
慢性病を根本から治す 「機能性医学」の考え方 (光文社新書)/光文社

¥864
Amazon.co.jp