ナカマップの小説書こう会で何の前触れも無く、突然始まったリレー小説をまとめたものです。
タイトルは未だに決まっておりません。
何かいい案あればおっしゃって下さい。
参加は自由です。どなたでもどうぞ。
なかなかに楽しいし、練習にもなるかと。
1 岩瀬瑠奈
姿形が自分と全く同じ人間と『入れ替わってみて』三日が過ぎた。
『入れ替わり』には少し抵抗があったけども、やってみるといいものだった。
彼には気の良い友達がいたし、それどころか彼女さえいた。異性とつき合うとか、考えた事も無かったけれども、これもまたいい。
もうこのままでいていたい。本気でそう思う。
でも、そろそろ、彼の方から連絡があるかと思う。当たり前だ。『あんな生活』は『こんな生活』をしている人間からしたら、狂っていると思っても仕方がない。
連絡が来たら、僕はどうするだろうか。
2 ふぉるひゃると
彼から連絡が来ても、僕が譲らないという手もある。なんとか丸め込んでやるのだ。僕になら出来る。そうだ、そうしよう。
彼になりきるというのは、存外簡単なことだったから、僕は何年でも「彼」でいられる。僕は彼になれる
彼を説得できさえしたら、もう悩むことはない。平々凡々、平和な暮らしが手に入る。平凡、良いじゃないか。
そこまで考えて一人でにやついていると、胸ポケットから電子音が響いた。
3 華宮@アンズ
やはりきたか……。
僕はドキドキと高鳴る心臓を抑えながら、胸ポケットから今流行りのスマートフォンを取り出すと、画面には予想した通り、彼の名前と番号が表示されている。
僕は恐る恐る通話ボタンをタッチした。
「……やぁ久しぶり、と言っても三日ぶりだけど」
スピーカーを通して聞こえてきた声に僕は正直驚いた。何故なら前に話した時よりも、彼の声は深く沈んでいてちゃんと耳を傾けていないと聞き取れないほど、弱々しかったからだ。
4 戯言係り
「ところで……」
彼はそう切り出してきた。その声はか細いながら、何かしらの期待感を望んでいるかのように上擦っている。彼の一言一句に全身の毛が粟立つ感覚を味わいながら、言葉を待った。
「”俺になった”気分はどう?」
その言葉に心臓が跳ねる。
それは好奇心から出た言葉なのか、明確な悪意を持って吐かれた言葉なのか僕には判断出来なかったからだ。
「いい気分だよ。こんな体験したことない」
それでも、前向きな感想を述べれた僕はふてぶてしい奴なのかもしれない。
「それじゃ”僕になった”気分は?」
そう言うと彼は押し黙った。
5 岩瀬瑠奈
あいつの世界は、狂っていた。
人間一人が歯車だとする。人間という歯車は互いに噛み合って、家族だとか友達だとか、社会を形成して、世界を廻す。
俺の世界はそうだ。
だけど。
あいつの世界は、あいつという歯車が、誰とも何とも噛み合ってなかった。家族でさえも、学校の生徒教師、それらその他の人間が、まるでそこに誰もいないかのように振る舞う。あいつの歯車は、一人孤独にくるくると狂狂と空回りしている状態だった。
俺はもう耐えられない。これ以上この世界にいると、俺の何かが壊れる。崩壊する。
一週間という約束だったけれど、もう限界だ。
6 ふぉるひゃると
俺が壊れてしまう前に、俺は俺に戻らなければならない。
生存本能だろうか、俺の全てがそう叫んでいる。ここは暗くて錆びている。時間が腐った匂いがする。人が生きるべき場所ではないと。逃げろ! 逃げろ!
「一週間という約束だったんだが」
息を吸って切り出す。
「俺は疲れた。楽しんでるところ悪いが、こんなお遊びは終わりにしよう」
言い切って、耳に押し当てた電話から漏れた密かなため息に、俺は凍りついた。
嗤っている。あいつのため息は、俺を嗤っている。
「終わりにしよう? 僕にその気はないよ」
7 華宮@アンズ
俺はその言葉に愕然とした。今こいつは何と言った? その気が無いだと? そりゃそうだ、あんな地獄みたいな世界に比べりゃ俺の世界は実に幸せで平和なものだ。
コイツが元の世界に戻りたい気持ちも分からなくもない。だが、それは俺だって同じだ。一刻も早くこんな腐りきった世界から元の幸福に満ちた世界に戻りたい。
どうすればいい? どうやってコイツをその気にさせられる? 俺は必死に考える、電話向こうのコイツを説得する言葉を……。そしてこうも思う、こんな事なら入れ替わりなんてしなければ良かった……と。
続く。(多分)