(出演:伊集院先生、
荒瀬先生、朝田先生)
荒瀬:あーー、なんで……あ、にゃんで俺がこんな事を
麻酔科の荒瀬門次は猫耳付きのカチューシャ、しっぽ、猫の手の形をした手袋を付けた状態で半日過ごさなくてはいけなくなった。
それだけではない、にゃんにゃん口調で話さなくてはならないというルール付きだ。
ちなみになぜこうなったかというと……
全ては荒瀬の常日頃の口癖から始まった。
~オペ直前~
荒瀬:ひとーつ、ふたーつ、
みーっつ、よーっつ、いつーつ、むーっつ、にゃにゃーつ……はい落ちたー
朝田:これより○○○の××手術を行う
伊集院:(にゃにゃーつとか完璧ふざけてるし……。それに、何で誰もツッコまないんだろう?いやそりゃ集中しなきゃ重大な医療ミスに繋がり兼ねないっていうのは勿論重々承知してるけど……。ぃよし、今日こそ問い詰めるぞ荒瀬先生に!)
朝田:伊集院
伊集院:へ!?あ、はいっ!
朝田:何を考えてる?
伊集院:え……?
朝田:オペ以外の余計な事は考えるな。集中しろ
伊集院:(いやそんな、バレたよ。荒瀬先生のにゃにゃーつの意味を考えてたなんて言えないし……。どうしよう)
朝田:伊集院
伊集院:………へ?
朝田:気を抜くな。どんな難易度だろうとオペはオペだ。いいか、始めるぞ
伊集院:す、すみません。
(んんんっ!!後で覚悟しておいて下さいよ荒瀬先生)
荒瀬:おいおい、しっかりしろ伊集院(ニヤッ)
伊集院:(だっ、誰のせいで叱られたと思ってるんだぁぁああぁぁああっ!!)
~オペ直後~
朝田:伊集院
伊集院:な、何でしょうか朝田先生(汗)
朝田:お前らしくないぞ。なぜ荒瀬が数を数えている時に笑っていた?
伊集院:(うわわっ、やっぱりニヤケてたのか自分っ!!)……へ!?何の事ですか?
朝田:質問に答えろ
伊集院:え、いやっあの……っ。えっと……
荒瀬:おいおい、そんなつっかかるなよ75キロ
伊集院:荒瀬先生……!
荒瀬:ちょっとニヤケてた位で何だよ。そん位見逃してやれ
朝田:何を言ってる。チームの誰かのほんの少しの気の緩みが重大な医療ミスへと繋がったらどうするんだ?お前が責任を取れるのか
荒瀬:おカタイねぇ朝田は。少しは息抜きしたらどうだ
伊集院:い、いえ。朝田先生のおっしゃる通りです。僕にはまだ、責任を取れる位の技術も覚悟も勇気もありません。僕のせいで……申し訳ありませんでした
朝田:ああ、今度から気を付けろ
伊集院:はい、以後気を付けます!
荒瀬:あんま叱んなよ。
朝田:ああ。
朝田は短く返事をすると、その場を去っていった。
ポツリと残された伊集院と荒瀬の視線がふと重なり合う。すると荒瀬はいつもの気だるそうな表情から一変、いたずらっぽく目を細め笑った。
荒瀬:気になってたか、やっぱり
伊集院:え……?
荒瀬:お前さぁ、術中チラチラ俺ん事見てたろ?
伊集院:えぇっ……!?ちょっ、何の事か全然解んないんですけど
荒瀬:とぼけるなよ、見てたろ伊集院
伊集院:だっ、誰が先生なんか見てるもんですかっ!自意識過剰ですよ
荒瀬:そうか、残念だ
伊集院:(あー、絶対納得してないよこの人……。ま、後で色々尋問するからよしとしますか。絶対恥かかしてやるから、覚悟しておいて下さいよ荒瀬先生……?)
【後編へ続く】