ドン・ファン 願望
今ではすっかり若年寄りのような単調な生活が板についたが、
何を隠そう、以前は女猟家ドン・ファンに憧憬の念を抱いていた。
一度に何人もの女性をも愛せるそのバイタリティ。
生命の横溢。歓喜の日々。大挙して止まない快楽。
そんな安直なイメージを頭蓋に描きつつ、また、「ドン・ファンは誰も愛さなかった」という後世譚を心の片隅に配し、僕なりに善戦したことがある。
が、結果は惨残たるもので、第一に体力と金が続かない。意志も途中 でねじ折れた。
それに時間も限られていた。これは言い訳のほかの何ものでもないが。
反対に、得られたものは、「ドン・ファンは誰をも愛していなかった」という再認識,
それと彼の驚嘆すべき集中力と器用さを改めて思い知らされた。
嗚呼、なんという自惚れだ。
僕は羞恥の念に駆られ、いてもたってもいられなくなり旅に出た。
自戒という大義名分の下の遁走というのが事実だが。
嘘のようなほんとの話。
続きはまた後日に。