老いたる飼犬の悲哀。 | ~ 或る阿呆の話 ~ turbo Ver1.03

老いたる飼犬の悲哀。

 何が悲しいかって、僕の額が緩慢なスピードで拡大しているのも確かにそうなのだが、全てのモノが老い行き、そして終いには消えてどっかに逝ってしまう、というこのどうしようもない事実、この事に尽きる。そうは思いませんか?
 今更ながらの感はあるが、そのことを想う時のこのミットモない胸の内に広がる寂寥感。
独り六畳間で焼酎を啜りながら思わず涙がこぼれてきそうになる。
そして、その時の哀れな僕の背中よ!
どこぞのどなたかはわかりませんが、そんな” みっともない ”という形容詞を絵に描いたような僕を見かけましたら、どうか暖かい気持ちで完全に黙殺してくださいまし。(噴飯っ!)

で、遅い夕食の前に、最近失礼にも僕に欲情しやがる、うちの老犬と連れ立って、散歩に行ってきた。

世の常かもしれないが、貰われてきた赤ん坊だった頃は、頼んでいなくとも家族のみんなから始終愛でられ、もてはやされていたのだが、年老いて、毛並みも悪くなり、常に己の生殖器を愛撫してばかりいるこの無垢で阿呆な老犬は、今では散歩の催促の哀愁たっぷりの鳴き声を発しようとも、もう誰にも見向きもされない。これを哀れといわず何をかいわんや、である。
 もっとも、うちの家族の皆は老犬以上に老け込んで、祖父など出来損ないのゼンマイ仕掛けの玩具のようにしか歩けなくなってしまったのだから、しようがないところはあるのだが。(悲しさ2倍増)

 昨日雨がどしゃぶって、その時の雨の匂いとワン公の小便の臭いが入り混じったモノ、あれは悲しみ以外の何ものでもなかった。

僕はそのにおいを嗅ぎ決心した、「コイツと最後まで連れ添おう」と。

毎日散歩して、うまいご飯作ってあげるから、どうか僕に欲情するのだけはやめてくれよ、

これ以上悲しくなんかなりたくないんだ。