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1992

1992

5月20日土曜日。
汚いグラウンドの上、バンドマンは同じレーンを何周も何周も走り続ける。無我夢中で走り続ける。気がつけば汚いグラウンドから沿道で大観衆が応援している花道を走っている人もいる。変わらずグラウンドのレーンをずっと走り続けている人もいる。それでも走ることを辞めない人もいれば、馬鹿らしくなって辞める人もいる。同じレーンを走っている間、もしかして死ぬまでこのままずっとここを走ってるんじゃないかと怖くなることもある。それでも、きっといつか大観衆の中を走り抜けることができるはずだと信じて走り続ける。ゴールテープはたぶんない。走っている途中、突然不安に襲われることがある。全力で走っているはずなのに、自分だけ周りに置いていかれているような錯覚に陥ることがある。前が見えなくなって、前がどっちかわからなくなる。それでもただただ走り続ける。汚いグラウンドの上、バンドマンは同じレーンを何周も何周も走り続ける。
飲み会や打ち上げの帰り道、1人になった途端突然襲ってくるあの虚しさは日に日に大きくなる。朝までワープできるから、記憶がない方がまだマシだ。バイト終わりの帰り道、突然襲ってくるあの虚しさは250mlのアルコールに薄めて身体の中に流し込む。野心はないよりある方がいい。野心を持っている人間はギラギラと輝いている。虚しさは日常に溶け込んでいる。野心は人に宿り、走り続ける原動力になる。汚いグラウンドの上、バンドマンは同じレーンを何周も何周も走り続ける。