小さい時から、日本を出ることばかり考えていて、若いころは全てを日本を出ることに注いでいた。日本の文化に対して、まったく興味をもつことがないし、娘に日本語を伝授することもなく、日本と日本的なものに対して、距離を持ち続けてきた。
ラフカディオ・ハーン関連のイベントがダブリンのトリニティカレッジで行われるという情報を得たのが二日前。カレッジ近くの教会でラフカディオ・ハーンの耳なし芳一をテーマにした尺八と薩摩琵琶、そしてアイリッシュ・ハープのコンサートがあるという。
イギリス人で日本に住んだことがある友人に、「興味ある?」と連絡し、一緒に行くことになった。
トリニティ・カレッジ近く、Dawson streetにあるSt Ann's Church、この教会、毎週木曜日に音楽のコンサートを催しているらしい。
私たちがいったのはこちら。
よく考えたら、琵琶の生演奏を聴いたのは初めてだったかもしれない。一体、琵琶を演奏する人は日本にどのくらいいるのだろうか?
平家物語で書かれている日本語は、ご存知のように、古典の日本語だが、日本人でない方が、琵琶と尺八の演奏を習得し、さらに平家物語の弾き語りまで習得されたとの情熱にただ頭が下がる思いだった。
演奏が始まるまえに、弾き語りで語られる部分の日本語と英訳をのせたプログラムが配られていて、私のまえに座っていた紳士に、日本語の意味を聞かれたが、日本語を勉強された方で「これは古い日本語ですね」と気づかれたようで、「私も現代訳がないと読めません」とお答えした。
平家物語の琵琶の弾き語りって、かなり無作法に言ってしまえば、死にかけている伝統だろうと思う。日本人でない方が、こうして守ってくださることに感謝の思いでいっぱいになった。
ところで、もう大昔にNHKで小泉八雲を主人公にしたドラマ「日本の面影」が放送されたのを、思い出した。奥さんの節さんが八雲氏にせがまれて耳なし芳一の話を聞かせるのだが、これを観た時のゾクゾクした印象が忘れられずにいた。こちらで観られる。小泉八雲役はウエストサイドストーリーのジョージ・チャキリス、節さんは檀ふみが演じている。
最近、Kwaidan(怪談)をProject Gutenbergでみつけ、Kindleにダウンロードしたので、早速、耳なし芳一を読んだ。英語が元のはずなのだが、英語になると、怪談のあのひんやりした雰囲気が薄まってしまう気がする。怪談を語るときの、独特の日本語の口調が、怪談の雰囲気を作っていることに気づいた。だって耳なし芳一、Hoichi the earlessなんですよ。怪談は日本語で聞きたいと思う私は、やっぱり日本人だった。
