今日の患者さんは関東地方から来られた30代女性。
イボ痔が戻らなくなり、腫れを繰り返していることで困って受診されました。
今までの経過
10代後半から排便時の出血がありイボ痔になったそうです(自己診断)。
地元の病院を受診したら「今すぐ手術は必要ない」と言われ服薬で経過観察。
その後も痛くなったり良くなったりの繰り返し。
5か月前に、お腹の風邪をひき、そこで痔が悪化。
それからひどい痛みが続いた。
今は痛みは軽くなったが、イボ痔が戻らなくなり腫れを繰り返している。
現在の排便と生活習慣
毎日排便があります。
下剤の服用はありません。
トイレの時間20分と長いです。
残便感があります。
ウォシュレットは排便後の洗浄のために使用しているだけでなく、肛門を刺激して排便を促しています。(ウォシュレット浣腸)
水圧は「中」で10秒くらいお尻を洗浄しています。
紙に便が付くので3回は拭いています。
入浴時には手に泡を付けて肛門を洗い、シャワーのお湯を直接、肛門に当てて10秒くらい洗浄しています。
市販の痔軟膏やオロナインを使用したりもする。
飲酒は週に2〜3回。
喫煙は1日7本。
現在は強力ポステリザン軟膏を使用しています。
診察の結果
診察しようとお尻を見ると・・・おしりの穴がどこか分からないくらい巨大な見張りイボがあります。
そして洗い過ぎた肛門周囲の皮膚が色素沈着して真っ黒です。
指を入れると肛門が少し狭い。
つっぱって伸びが悪くなっています。
洗い過ぎると肛門が狭くなる理由についてはコチラ↓
そして巨大な見張りイボの奥には切れ痔(裂肛)がありました。
まだ治ってなかったんですね・・・。
切れ痔(裂肛)の奥には肛門ポリープもあります。
指診で便を確認。
軟便があります。
肛門の中も便まみれでした
今日は既に排便を済ませてきたのに・・・です
便を出す坐剤を入れて残った便を出してきてもらいました。
排便を済ませてからもう一度診察です。
でも・・・まだ便があります
しかもコロコロ便です。
一体、いつの便だろう?
ずっと出し切れずに出口に溜まってたんでしょうね。
次は坐剤ではなく浣腸を使いました。
(浣腸は迷走神経反射により神経調節性失神を生じることがあるため、初めて使用するときは医療機関で行うことをお勧めします)
浣腸して再度トイレに。
ご本人は何も出なかったと言われましたが、再度診察すると先ほど触ったコロコロ便は無くなってしました。
ちゃんと出せたようです。
この「出口が空っぽ」という状態をカラダ(肛門)と頭でよく感じるようにしてもらいます。
なぜなら本来、肛門は空っぽが普通だからです。
そこに便はありません。
便が下りてきたら便を感知し、便意をもよおし、排便反射が起こって排泄するようになっています。
そのサイクルがうまくいかなくなったから便が残ったり、溜まったりするようになっていくのでしょう。
衝撃の診断
患者さんの衝撃は3つありました。
- イボ痔ではなく切れ痔と見張りイボだったということ
- 毎日出ているのに便秘だったこと
- 専門だと思ってかかっていた病院が専門ではなかったこと
「何と言っても一番の驚きは、イボ痔だと20年近く思っていたものが、イボ痔ではなく切れ痔と大きな見張りイボだったこと!」 と患者さんが言われました。
おそらく「10代後半から排便時の出血がありイボ痔になった」という自己診断も、切れ痔だったと思われます。
この頃から切れていたのでしょう。
軽度の裂肛だったものが、年数が経つにつれ悪化していったと考えられます。
見張りイボも肛門ポリープも残便がある証拠。
残った便が傷を汚染するから炎症を起こし突起物が出来ます。
そこに痔の注入軟膏を入れると痛みが緩和されるため何となく治った気になるのですが、便まみれの肛門にどんな薬を入れてもちゃんと効きません。
便通を治すことなく痔の完治はあり得ないから、こうして通院していても悪化していったのです。
「坐剤と浣腸で身をもって自分が出残り便秘であったことを知りました。」
とトイレのあとに言われましたが、残った便を自分の目で確かめると納得出来ます。
自分ではスッキリしているつもりでも肛門はスッキリしていないという「ニセモノのスッキリ感」も多いです
そして医者選びも大切です。
専門外の先生がよく間違えるものの代表が「見張りイボをイボ痔と勘違いする」ことです。
手術を勧められているケースも多く、外側の見張りイボだけ切除しても中の裂肛や肛門ポリープは治りませんので、また見張りイボが出来て、繰り返し何度も手術を受けている患者さんも大勢おられます。
どうせ手術するなら外だけでなく中もきちんと切除して、裂肛の傷を治りやすい形に整えてあげる「裂肛手術」を受けて下さい。
専門の先生ならちゃんと手術してくださると思います。
専門の先生かどうか分かりにくいという声も受診した患者さんからたくさん聞いています。
大腸肛門病専門医でも肛門専門とは限りません。
内科、外科、肛門科と3つのカテゴリがあるのですが、どの領域の専門医なのかは記載がありません。
それは医師の経歴で推測するしか方法がないのですが、以下のサイトに詳しく見分け方を書いていますので受診の参考にして下さい。
このサイトに探し方を書いています
特に肛門を専門にする女医は全国でも20名くらいしかいませんので、女医にこだわるより専門性にこだわって男性医師でもいいので本当の専門医にかかってほしいです。
治療経過
治療はシンプルです。
- 毎日坐剤を入れて便を出し切ること
- 「Sザルベ」で肛門マッサージをすること
- 温水洗浄便座を含め肛門を洗わないこと
- 禁酒
2週間少しで毎回の排便時の痛みが全くと言っていいほど無くなりました
そして坐剤を入れると必ず残便が出ます
坐剤を使って肛門を空っぽにするようにしただけで、あれほど辛かった出始めの硬い便がなくなり本当にビックリ・・・されました。
いかに今まで自分がウンチを溜めこむのがクセになっていたのかと実感されたようです。
3週間後の受診(再診)
関東地方からの受診だったため2回目の受診を3週間後にしました。
見張りイボは巨大ですし、切れ痔もかなり慢性化していて古そうな傷だったので治ってないだろうなぁ・・・と内心、考えていたのですが、なんと切れ痔(裂肛)は完全に治っていました−
でも肛門は狭いままです
狭いと言っても排便は出来ますし痛みもありません。
診察だって普通に出来るため、手術は必要ないと判断。
肛門マッサージをしていると徐々に広がってくるため続けてもらうことにしました。
そして大切なのが排便のコントロールです。
切れ痔(裂肛)は治りましたが出残り便秘は治っていません。
だから坐剤も継続です。
本当は肛門の穴を広げるために定期的な通院が望ましいのですが、次回の受診は半年後としました。
その間、自己管理です。
もうバッチリ出来ているので大丈夫だと思います😊
本当は痔になる前に来て欲しい
痔は排泄の結果です。
だからその間違った排泄を治さずに手術をしても薬を続けても痔は治りません。
特に切れ痔(裂肛)は肛門のケガ。
初期に治療をすれば完治します。
だけど一般的な治療は飲み薬と痔の注入軟膏。
それだと一時的に痛みや出血などの症状は緩和されますが、根本的に治ってないので、知らないうちに切れ痔(裂肛)が悪化していきます。
何年か経ってから気付く人も多いです。
だから
本当は痔になる前に来て欲しい。
教えてあげたい、正しい排泄。
そうなれば痔は予防出来るのに・・・って強く思います。
だけど痔でもないのに、何も困ったことがないのに、肛門科なんて行きません💦
だからいよいよひどくなってから受診されるのでしょう。
一人でも多くの人に出口の便秘のことを知って欲しいと思って情報発信を続けてきました。
これからも続けていきたいと思います。
この患者さんが実際に書いて下さったアンケートはコチラ
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HPやブログを拝見して、この先生に診て頂きたい、と思い、受診しました。
出残り便秘の説明を読んで、ひょっとしたら自分もこれなのではないか。
だとしたら、便通もいぼ痔(と思っていた)も、生活習慣や便通を改善することで、良くなるのではないか、と思ったからです。
初回の診察で、みのり先生に診て頂き、坐薬と浣腸で身をもって自分が出残り便秘であったことを知りました。
でも、何といっても一番の驚きは、いぼ痔だと20年近く思ったいたものが、いぼ痔ではなく切れ痔と大きな見張りイボだったこと
そして専門医だと思ってかかっていた以前の病院がそうではなく、そのため、いぼ痔と勘違いされていたと知ったことです。
はるばる新幹線に乗って先生に診て頂いて本当に良かったです。
どうりで、薬でも中々良くならなかったはずです。
先生に「いぼ痔は1つもありません」と言われて、狐につままれたような気分でした。
今日で2週間と少しですが、毎回の排便時の痛みが全くと言っていいほど無くなりました。
頂いた坐薬を排便後に使い、肛門を空っぽにするようにしただけで、あれほど辛かった出始めの硬い便がなくなり、本当にびっくりです。
いかに今まで自分が、うんちを溜めこむのがクセになっていたのか、と実感しました。
これからもしっかりうんちを出し切って、おしりの状態を良くしていきたいと思います。
本当にありがとうございました。
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診療所のセラピードッグ「ラブ」🐾
左側がラブです🐶
ラブはこの写真当時6歳。
生後4か月から
犬のようちえんに通っているので
ベテランワンコです。
新入生のしつけにはうるさいようです😅
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患者さんのリクエストで復活させた
化粧品と発酵素するりの記事は
コチラ