近年注目されているバレット食道には癌のリスク!?
20世紀末までは、日本ではバレット(Barrett)食道に関する認知は低く、大きな問題とはなってはいませんでした。しかし、21世紀になって、Barrett食道が急増していきています。日本では扁平上皮がんが主流ですが、欧米ではbarrett食道を背景とした食道腺がんが主流となっています。ライフスタイルの西洋化等により、今後日本でも、欧米のようなBarrett食道による食道がんが主流になる可能性があります。■Barrett食道とは1950年にイギリスのBarrettが報告したのにちなんで、Barrett食道と称されます。正常では、食道下端に食道ー胃接合部があり、腺膜面はその付近で、食道側の扁平上皮と胃側の円柱上皮の領域が接しています。その扁平上皮と円柱上皮の境界を扁平円柱上皮境界(squamo-columnar junction;SCJ)といいます。SCJ直上の扁平上皮が次第に円柱上皮に変化していくことがあり、これをBarrett上皮、そのようなBarrett上皮を有する食道をBarrett食道と呼んでいます。■Barrett食道の症状Barrett食道自体は、症状はありません。ただ、逆流性食道炎を合併していることが多く、逆流性食道炎による胸焼けや吞酸などの症状を伴うことがあります。■Barrett食道の診断CTやMRI,胃透視などでは診断はできません。内視鏡検査で診断できます。ただし、Barrett食道の知識がないと見逃す可能性があります。■Barrett食道の原因慢性的な胃からの酸やペプシンの逆流と逆流物の食道からの排出遅延が最大の原因と考えられています。ただし、胃全摘後に、Barrett食道が発生することがあることから、酸の他に胆汁や膵液の逆流も関係している可能性があります。ただ、Barrett上皮化の機序の詳細は未解明です。慢性的な酸逆流がある人でもBarrett食道にならない人もいます。■Barrett食道が注目されている理由Barrett食道から食道がんが発生する危険性があるからです。アメリカでは、20世紀終盤に肥満が非常に増え、その結果、逆流性食道炎、Barrett食道が大幅に増加しました。さらには、Barrett食道を背景とする食道腺がんが大幅に増え、今では食道扁平上皮がんと同じくらいの頻度となっています。日本では、扁平上皮がんが主流ですが、今世紀に入ってからのBarrett食道の増加ぶりをみると、近い将来、日本でもBarrett食道由来の食道腺がん急増する可能性があります。■Barrett食道の治療プロトンポンプ阻害薬の投与で、Barrett食道が部分的に消退しうること、腺癌の発生が抑えられる可能性があることが報告されていますが確証はありません。現時点では、併存する逆流性食道炎に対する治療が主体となっています。Barrett食道のdysplasia(異形成)が認められた場合は、内視鏡的焼灼(アルゴンプラズマ凝固など)や内視鏡的切除が行われます。粘膜下層浸潤の場合は外科的切除も行われます。アメリカなどでは、高度のBarrett食道の場合、dysplasia以前の段階から治療を始めることもあります。■Barrett食道の予防ライフスタイルの西洋化、運動不足、ヘリコバクター・ピロリ保菌率の低下などに伴い、今後ますますBarrett食道が増加する可能性があり、その結果、食道腺がんの増加が心配されています。喫煙や肥満が危険因子であり、果物や野菜の摂取がBarrett食道や食道腺がんのリスクを下げることが知られています。これらを考慮した生活習慣対策が重要です。Barrett食道だけでは問題ありませんが、Barrett食道のある人は、ない人に比べ30~60倍の食道腺がんの発症リスクがあり、Barrett食道からの年間腺がん発症率は約0.5%といわれています。そのため、Barrett食道の人は、定期的な内視鏡検査を受けたほうがいいでしょう。