大好きなあんかけ焼きそば。

もう、中華料理屋さん入ると、
メニューも見ずに、これを注文する。

その日も、迷わず注文して食べていた。

1人でテーブル席に座り、目の前の
だんじり祭りのポスターが貼られた
壁を見ながら食べていた。

ふとその横の壁に
何やらうごめく
茶色の物体。
背中がやや光っている。
救いは小さめであることか。

ぎゃー!!

叫びそうになりながら、

言葉を飲み込む。
目を見開いたまま、

それでもなおかつ、
食べることをやめない
自分自身に
我ながらすごい根性と思う。

早く食べ終わりたい、

早く食べたい、

早く食べ終わって
ここを出たい。

いっその事、席を変わろうか?

それとも、食べ残したまま、
帰ろうか?

その時
店員さんに伝えるのは、
是か非か?

そうこうしてるうち、

横の壁を張っていた

茶色のゴキ◕〇
が、なんと、目の前の壁に移動してきたではないかっ。。!

目の前を
うごめくものを視野に入れながらの
あんかけ焼きそば。

拷問である。

まだだんじりポスターの
黒っぽさに紛れて、若干
うごめきがわかりづらいのが
せめてもの
救いか?

いや、それにしても
わたしの限界値ももう最低ラインだ。

ふと、後ろを振り返ると

カウンターの席が空いていることに
気がついた。

あ!カウンターに移ろう。

即座にそう思い、

〔すみません。。カウンターにうつってもいいですか?〕

はいはい、いいですよー、どうぞどうぞ。

気持ちよくそう言ってはくれるが、

なぜ席を移ろうと思う経緯にいたったか?
ということには思いめぐらせてくれることは
ないのだろうか?

私の食べかけの鉢を
カウンターに移してくれようとしてくれる
店員さん。


ほらほら!そうしてる間にも、

あなたの背後に
ゴキ〇〇が張ってるんですよ、
見えないんですか?
気が付かないんですか?

喉元までその言葉が出てくる。

私がとりあえず自分の飲みかけの
お水とおしぼりを手に取って
立とうとすると、
「あー、大丈夫ですか。お持ちしますよ」

いえいえ、水持つくらいは大丈夫です。
それより、ゴキ〇〇ですよ。

心の中で叫びながら、
右目でゴキ〇〇の動きを確認する。

まだ下まで降りてはない。
ポスター周辺を散策中だ。

私はカウンターに座り、

ゴキ〇〇が視野に入ってこない

幸せをかみしめながら、
あんかけ焼きそばをいただく。

あー、やはりこちらの方が

数倍幸せ。

最初からこうすればよかったのだ。


食べ終わるや否や、
そそくさと
伝票もって、立ち上がる。

カウンターの中の店主とおぼしき
おじさんが、
「すいませんねー」という。

すいません、とはどういうことだろう。

まさか、ゴキ〇〇がいるような店ですみません、
などという意味ではなかろう。

もしかして、私がゴキ〇〇を確認しながら
移動した一部始終を知っていながら、容認してたのでは、あるまいな。。

それとも、ゴキ〇〇がいることなんて、

この店では日常茶飯事、ごくごく当たり前のことかもしれない。

入口付近に陣取っていた
常連と見える
グループのおじさんたち。

きっと、そんなことも

ひっくるめて、
納得の上、この店に通ってるのだ。

もう、私が来ることは

二度とないけれども。