「ピー・・・」
若頭の笛の合図がGOサイン。
暗黙の了解で新美町のだんじりが
先に動き出す。
それを見送っている笠田町の面々。
無表情を装っているが悔しい気持ちを抱えてる。
昔のだんじりのケンカの名残が今も尾を引いてるなんて、
なんて伝統的なともいえるし、
なんていやらしいしつこさともいえる。
でもその伝統的な部分にあぐらをかき、
得意げな気持ちでだんじりを曳く新美町。
うらめしそうな笠田町の様子を横目で見つめながら、
行き過ぎようとしたその時。
胡畔の(ごはん)の目の端に
懐かしい人影が目に飛び込んできた。
ー・・・えっ?!嘘・・?
もしかして・・?
振り返ってたしかめるにはもう遅過ぎた。
昼間のだんじりの勢いは
振り返ることなんて許されない。
もたもたしてると振りほどかれる。
あれは・・・あれは・・・
胡畔はだんじりともに駆け抜けながら、
あるいは引きずられながら
考えた。脳の中身が流出するのではないかと思えた。
流れ出るものを必死で食い止めようとした。
まぎれもなく駿太君。駿太君の姿だった。

