ケースケの実母が倒れたという
連絡が奥さんから入った。
急きょケースケは帰ることになった。
ケースケが帰るのだから、私も帰らざるを得ない。

私だけ、一人でフランスに残っても、仕方ないのである。

しかし、早々に帰宅して、
家族にはなんて言おう。
また言い訳作りに頭を悩ます。
しかし、そんなことは後から思えば、
ちっぽけなことであった。

私はケースケより一日遅れで帰国し、
その後箱根のホテルで残りの滞在日数をつぶした。

そしてフランスみやげを抱えて、
何食わぬ顔して家に帰った。


ほぼ1週間ぶりの我が家の
玄関を開けたとたん、
何か不穏な空気を感じた。

「ただいまー」と
明るく装った声もしらじらしく響き、
誰からも返事がかえってこない。
スーツケースをひきずりながら
リビングにはいっていく私に
誰も目をむけようとしない。
私は改めて
「ただいま。今帰ったよ」
声をかけた。
リビングには
いつになく子どもたちもダンナもそろっていた。
「・・・ん・・」
声になるかならないか、の
音がかすかにどこかから
聞こえるにとどまった。
「おばあちゃんがさ・・
ビワがたくさんなったから、取りにおいで・・・てさ、
電話がかかってきて・・」
沈黙をやぶったのは娘だ。

「ビワ?」


ピンクセラムな夜