私はもう待てなくなり、自ら相手の唇をむさぼりはじめた。
もう、その唇の持ち主が誰であるか、などということは
どうでもよいことであった。
私はもはや肉欲の塊となったのである。
自分の欲しいままに相手を求める。
それのどこが悪いのだろう。
私たちはもつれ合うように
再びベッドへとなだれこんだ。

「一晩に3ラウンドって
20代前半で終わったかとおもったよ」

克弘はうっすら笑みを浮かべる。
私も私の中にいったいどれほどの欲望が渦巻いてるのか。
自分でもはかりしれなくて怖いくらいであった。
でも、今確かに克弘を欲している。こんなにも。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ねえ、結婚しようよ」
今度はハッキリと聞こえた。
はるか遠くからではない。
耳元で
そして、目を見てそう言われたのだ。
結婚。その二文字に込められた
未来への遥かなる憧憬。
そして、それさえ叶えることができたなら、
私はもう無敵で、世の中の全ての幸せを手に入れることができるんじゃないか。
ずっとそう思ってきた。
そう思わせてくれる甘美な言葉、結婚。


ピンクセラムな夜