「何あれ・・」
残された6人は消えゆく二人を
見送りながら、あっけにとられていた。
藤枝君は、グレーのスーツの上から
薄いベージュのトレンチコートを着ていた。
襟をたてながら「じゃあ、僕たちも行こうか」
フッと笑った。
その笑いは
仕方ないな・・じゃあ、僕たちも楽しもうよ。
とも、
ほんとにあいつらはしょうがない奴らだな。
どちらとも受け取れる笑いだった。
口火を切ったのは,
ダウンジャケットの磯ヶ谷君。
「もう1軒、どこか行こうか」
しかし蘭子の
「私、門限があるからこれで・・」
の言葉で一気に座が白けた感じになり
私たちはただ駅までゾロゾロと歩いた。
「じゃあ」「じゃあまた・・」
お互いが言いあいだした。
私は、ここで別れたらもう終わりじゃん・・
これで終わり・・?
一抹のさみしさと、でもじゃあどうすりゃいいのよ!との
せめぎ合いの中、
藤枝君を見た。
すると彼はポケットから名刺ケースを出し、
私たち女子3人にそれぞれ配ってくれた。
「僕の名刺。
アドレスは個人のだから、送ってくれて何も問題ないよ」
受け取った名刺には、
「★❤カンパニー」とだけ書かれ、
藤枝くんの名前とその下にはアドレスが載っていた。
ーアドレスか~・・これってパソコンに届くメールでしょ?
それに、3人にくれたなんて、ただの儀礼的じゃ・・
今日隣で盛り上がってたと思ってたのは
ただ私のひとりよがりだったのか。
携帯のアドレスをどうして私にだけ
教えてくれないんだろう・・
私は不完全燃焼したモヤモヤを抱えながら、
それは表情にも言葉にも出さなかった。

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