招待されたところは、ケイコの自宅サロンだった。
ネイルアートの店を開いていた。
(離婚しても、男がかりでこんなお店がひらけるなんて・・)
私の心を見透かしたように、ケイコが
「あ、これモトモト結婚している時から
私が開いていたお店なの」
この言葉を信じるしか、自分を救う道はない。
大理石の玄関からは、ふかふかのじゅうたんを敷き詰めた
吹き抜けのホールが見える。
靴を脱ぐべきなのか。否か。それすらも判断できない。
「あ、いいのよ。そのままで」
見れば、ケイコもヒールのあるパンプスをはいたままだ。
歩いても音のしないジュータンの上を通り抜け、
シャンデリアの飾られている部屋に案内された。
「コーヒー飲む?紅茶?」
「・・・あ、どちらでも・・」
「ダメよー。女は意思表示はっきりしなきゃー。
おいしいクッキーいただいたから、紅茶にする?」
ほどなく、ケイコがティーポットに入れた
紅茶とカップを運んできてくれた。
きっとどこかのブランドだろうが、何て名前なのかはわからない。
クッキーを一口かじった。
とてもおいしい。
「本当にヨシミに会えてよかった。
同窓会で見た時、うれしかった・・」
しみじみそう語りながら
私をじっと見つめる。
この瞳にいったい何人の男がまいったんだろう。
ケイコは細長い指先とその先に光るネイルをきらめかせながら、
ソーサーに左手を添え、カップを持った。
そのさりげない一連の動作にも
どことなく気品が漂っている。
「ねえ・・せっかくだから、
私のネイル、していってくれない?」
「え・・でも・・」
やっぱり営業だったんだ。
「あ、お金なんてもちろんいらないよー。
ぜひ、ヨシミにネイルさせてもらいたくて」


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