「先生、吉田先生、小川さん何か
クラスで変わった行動ありませんでしたか?
もしかして家庭に何か問題があるかもわかりませんよ。
ちょっとキッチリ話を聞いてみたほうがいいと
思いますよ。」
保健の先生は私の目の前で
吉田先生に興奮しながらそう告げている。
「よろしければ私が保健室で話し聞きますけど・・」
まるで吉兆のささやき女将のように
吉田先生の耳元でささやく保健の先生。
しかし、ささやき女将よろしく
すべてささやきはこちらにまで筒抜けなのである。
吉田先生はまだまだ続きそうな保健の先生の
話を目で制して
「その場には及びません。私がハルちゃんと
話しますので先生はご心配なさらないでください」
冷静におさめると
私に「ハルちゃん、あとでちょっと話ししようか」といった。
あ~あ・・職員室行きか・・
ちょっとウンザリしてきた。
他の先生がたくさんいる前で説教されるなんて
まるで悪い子みたい。
私って悪い子なのかな?
お父さんは私のことを
「ハルはいい子。本当にいい子」と
いつもいってくれる。
だから私はずっと自分のことをいい子だと
信じて生きてきた。
お母さんにぼろくそ怒られてもお父さんが私を守ってくれてる気がしてた。
お母さんがガンガン怒ってるその横でお父さんはいつも
私をニコニコしながら見ていてくれて
「ハルは本当はいい子なんだよね」といった。
でも、今ふと考えたら
本当は・・?てことは、
じゃあいい子ではなかったのかもしれないけど、
単純だから気がつかなかった。
いい子じゃないから今から先生に怒られるんだろうか。
吉田先生は「音楽室に行きましょうか」といった。
音楽室?
なんで?とおもったが
ちょっとほっとした。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
先生がグランドピアノのイスに座って、
私は生徒が座るオルガンのほうに腰掛けた。
「ハルちゃんは・・確か
ピアノが上手でしたね」
先生はおもむろにそう言った。
「あ・・でも。・・もうやめちゃったから。。」
「そうですか・・よく音楽の授業が始まる前に
このピアノで曲を弾いてましたね。
あれは何と言う曲だったんですか?」
「えっ。。と・・
嵐・・とか。。西野カナとか・・」
先生はふっと笑って
「先生は全然わかりませんが楽しそうでしたね」
「みんなも喜んでくれるから・・だけど
家でもそんな曲ばかり練習してピアノの練習曲を
全然弾かなくなってしまって。
先生からも怒られて・・で、やめちゃった」
「そうですか・・
この間懇談があったとき
そういえばお母さんが合唱団に入った、と
言っておられましたが
今何を練習してるんですか?」
「あ・・あの。。翼をください、とか・・」
先生はイントロを弾きはじめた。
私は思わず口ずさみ始めた
叶うならば、翼が欲しい。
(中略)
子どものとき、夢見たこと
今も同じ・・夢に見ている・・
この大空に翼をひろげ
飛んでいきたいよ
哀しみのない
自由な空に翼はためかせ
ゆきたい・・
なんだか泣けてきた。

