「蓮・・きてくれたんだね・・」

なつかしそうな目で
園長先生が蓮を見つめていた。

蓮はお世話になった
施設の園長先生に会いに来ていた。

「元気だった?」
軽く蓮の細い腕をなで、
見上げながら
そう聞いた。

「ん・・先生も・・元気だった?」

「うん。。
もうトシだからね・・
いろいろ病気したり大変だった時期もあったけどね。」

子どもたちが物珍しいものでも見るように
蓮を取り囲んでいた。

「わー!!このお兄ちゃんの時計、
金だ、金!!」

一人の男の子が叫んだ。

「これ、おもちゃだよ。」
笑いながら蓮がそういった。

少しあいた窓からは
優しい風が吹いてきた。


「蓮・・あなたにずっと・・話そうかどうしようか
迷ってたんだけど・・」

園長先生が
マグカップのお茶を一口飲んで
おもむろに口を開いた。

「あなたの・・
お母さんだという人がきてね・・」

蓮は息をのんだ。

「その方は、体を悪くして入院することになったといって。
もし、万が一のことがあったら
最後にあなたと弟のユージに会いたいといって・・」

蓮はテーブルを見つめた。
「会うかどうかはあなたの判断にまかせます。
お母さんにも蓮に伝えることができるかどうかは
わかりませんと伝えてあるの。。
ただ・・私たちも
本当にその方が蓮の母親かどうなのか・・
わからなかったんだけど・・」

といって
園長先生は
たちあがって
部屋の片隅にあるレターボックスをあけた。

中から取り出したのは
2冊の母子手帳。

「お母さん、これを大事にもってらしてね。
これが・・私と子どもだちとをつなぐ証だからといって。
この手帳を見たら
私が母親だということがわかってもらえるといって・・」

テーブルに置かれた
すりきれた
母子手帳。

蓮は触れることができなかった。


オトコとオンナの分かれ道