―――ワン!
背後で聞こえた鳴き声。
視線を向けると、そこには一匹の子犬が、尻尾を振りながら玉章を見上げていた。
(野良犬・・・・・・)
よく見ると、口元に何かを咥えている。
最初は無視しようかと思ったが、子犬は小さな手足を動かして玉章の足元に駆け寄ってくる。
これをとってくれと言わんばかりに、玉章の周りを飛び跳ねる子犬に玉章は呆れたように溜息をつき、かがみこんで器用に挟まっている白いものを抜き取った。
(手紙?)
その流れるような文字を見て、玉章は目を見開く。
これは・・・・瑚々からの手紙だ。
玉章は震える手でその手紙を読み始めた・・・・。
‘この最後の優しい時間に、
愛は感じやすく、とても純粋になる。
薄明かりに力を秘めた夕日が――――’
「―――――‘確信に満ちた愛を、目覚めさせる’」
背後に聞こえた、その声。
玉章は信じられない思いで振り返った。
その瞳、その姿、その声に、魂が揺さぶられるのを感じる。
身体の中の血が騒ぎだし、胸が熱くなる。
目が合ったその瞬間、二人は駆け出す。
玉章が片腕でその身体を抱き上げ、強く抱きしめると、彼女もぎゅっと力強く彼を抱きしめた。
「きみは、僕の全てだ」
額と額をくっつけ、見つめ合いながら、玉章が囁く。「なによりも大事でなによりもかけがいのない存在――それは、いつでもきみだった」
「あなたは孤独だった私に夢と希望を与えてくれた」
涙を目にためながら瑚々は微笑んだ。「私はいつもあなたのものよ、玉章。どんなに二人が離れていても」
だから、と上目遣いで彼を見つめる。「だから、‘あの言葉’を言って」
玉章は瑚々の頬に触れた。
彼女の温もりを感じ、何よりも大事なものは彼女だけだということを実感する。きっと、この想いは、今もこれからも、永遠に変わらないだろう。
玉章は彼女の顎を片方の手で上げた。
「君を愛してる」
その瞬間、瑚々の目から涙が溢れ出し、瞳に鮮やかな紫色が広がる。
「私も愛してる」
二人は顔を見合わせ、ゆっくりと唇を合わせた。
All For You
(どんなことがあっても)
(二人は決して離れない)


