懐かしい、声がする。
「エフィー」
振り返ると、そこに、彼がいた。
生涯かけて私を愛し、そして愛した、たった一人の男。
彼はあの優しい茶色い瞳で私を見つめていた。
「ジョン!」
私は駆け寄り、彼をぎゅっと抱きしめた。
そのぬくもりも、匂いも、髪も、目も、私の体に巻きつく彼の腕も、なにもかも懐かしい。
「どうしてあなたが・・・?」
私はようやく体を離して尋ねた。
彼はにっこりとする。「これは夢だよ、エフィー」
私は目を丸くした。「え・・・?」
夢?
「正確にいうと、夢と現実が混じりあってるってとこかな」
そう言って、彼は愛しげに私の頬を撫でた。「こうしてきみともう一度会えて嬉しいよ」
そこで、ようやく私は50年前の出来事を思い出した。
「ジョン・・・私・・・ッ!」
言いかける前に、そっと彼の指が私の唇に押しあてられた。
「きみが目を覚ます前に、一つだけ」見ると、彼の姿が霧のように消えかけていた。
「だめだめだめ・・・」なにが起こっているのか分かり、私は泣き声を上げた。「ジョン、お願い・・・行かないで」
泣いている私に彼は悲しげに微笑んだ。
「僕の最後の言葉を思い出すんだ、エフィー」
ローザははっと目を覚ました。
慌てて体を起こし、辺りを見回す。
太陽が窓から差し込んでべットを照らし、外では鳥のさえずりが聞こえてくる。
ジョンも、あの温かいぬくもりも全て消えている。
「・・・夢?」
いや、違う気がする。
夢にしてはあまりにリアルで―――それでいて現実離れしている。
「・・・夢と、現実が混じり合った世界、か」
ローザはジョンの言った言葉を思い出した――――‘僕の最後の言葉を思い出すんだ―――’。
ローザは眉を寄せた。最後の言葉?
――――私とジョンの間に、最後ってあったけ?
最後にジョンに会ったことを思い出そうとしたけど、途中で霧がかかったように見えなくなる。
思い出そうとすればするほど、段々その霧が濃くなっていって――――・・・。
なにかが思い当たり、ローザは目を見開いた。
「冗談でしょ・・・」あまりの衝撃に、愕然とする。
「記憶がなくなってる・・・」