悪魔の囁きが聞こえてくる。
私は震えながら、床の上で苦しんでいる彼を見下ろしていた。
彼の体はボロボロで――所々破けた白い服に、真っ赤な血が滲んでいる。
「さあ、ローザ」悪魔が耳元で囁く。「ジョンを殺すんだ」
嫌よ。そんなことしたくない。
だが意志とは裏腹に、杖を持つ腕が上がっていく。
「エフィー」彼の声が聞こえる。私を見つめ、にっこりとほほ笑んでいる。「きみを愛してる」
次の瞬間、彼の血が舞う。
この世の終わりを見ているようだった。ぐっしょり濡れた冷たい影に覆われていく。永遠に続く暗闇に。
悪魔の歓喜に満ちた笑い声が闇の中から聞こえてくる。私は叫び声を上げる。
ジュリエット・オコーネルは悲鳴をあげながら目を覚ました。
昔の彼女を知っている一人―――マダム・ポンフリーが勢いよくカーテンを開けて入ってきた。
「しーっ。ローザ、落ち着いて」
「あいつがやってくる!あいつが、あいつが・・・!」
押し戻そうとするマダム・ポンフリーの手に抵抗しながらジュリエットは叫んだ。「お願い殺さないで・・・ッ!あの人を殺さないで・・・・ッ」
「落ち着くのじゃ、ローザ」
ジュリエット―――いや、ローザははっとした。
アルバス・ダンブルドアが、ベットの脇に立ち彼女を見下ろしていた。
「ダンブルドア・・・」
そこでようやく周りを見渡した。
医務室にいるらしい。白いシーツのベットの上で息を荒げながらマダム・ポンフリーに力づくで押さえつけられている。
「ポピーや」ダンブルドアはローザから目を離さないまま、マダム・ポンフリーに言った。「わしとローザ、二人っきりにしてくれんかの?」
マダム・ポンフリーは不満そうに眉を寄せた。「ですが・・・」ちらりとローザに目をやる。「今の彼女の精神状態では一体何をしでかすか・・・」ごくりと唾を飲み込む。「・・・・ジョンの時みたいに」
「ローザは大丈夫じゃよ、ポピー」
ダンブルドアは静かな声で言った。有無も言わさぬ口調だった。
マダム・ポンフリーは渋っていたが、ようやく頷いた。「分かりました」と言って、カーテンを閉めて出ていく。
「さて、ローザ」マダム・ポンフリーが事務室に戻ったのを見届けた後、ダンブルドアは身を乗り出した。「全てを話してくれ」
彼女の表情が一変する。顔や目が恐怖に満ちていく。
ローザは首を振りはじめた。「だめ、だめ、だめ、だめ、だめ・・・・」
「ローザ・・・」
ローザはベットの上で背を丸め、頭を抱えた。「もう生きていけない・・・・生きていけない・・・ジョンがいない・・・何もかも失った・・・なにもかも失って・・・」
涙が頬を伝い、ベットのシーツに落ちて染みになっていく。
やったのは彼だと叫びたかった。だけど、それは真実ではない。
ジョンを殺したのは、この私だ。