ミネルバ・マクゴナガル教授は、今年入学する新入生の名簿に目を通しながらホグワーツの廊下を歩いていた。
今年は新入生に加え、転入生も入学するらしい。
しかももうすでに転入生は到着しているとのこと。
このホグワーツは広く、複雑なのですでに迷っているのではないかとマクゴナガルは睨んでいた。
そのことをダンブルドア校長に言うと、校長はさもおもしろそうに「彼女なら大丈夫じゃよ」と笑っていた。「きみもすぐにその意味がわかる」とも。
でも本当に大丈夫なのだろうか?
そう思うと、いてもたってもいられなくなった。
早くその転入生を見つけて、歓迎会までに連れて行かなければ。
廊下を右に曲がって、階段を降りようとした時、一人の生徒とすれ違った。
最初、マクゴナガルは頭がいっぱいで、それどころではなかったのだが、すれ違いざま、少女が「久しぶりね、ミネルバ」と言ったので、はっとして振り返った。
何より驚いたのは、言葉ではなく、その声だった。
50年たっても変わらないその声は、彼女と同じものだった。
「お待ちなさい!」
慌ててそう言うと、少女は立ち止った。
階段の最後の段を上がろうとしているところだった。
マクゴナガルは震える指で少女をさした。「あなたが・・・どうしてここに・・・」
50年前の記憶の断片が蘇る。すすりなく声。棺桶からはみ出した白い手に、赤い血が映えていて・・・。
ごくりと唾を飲み込む。「あなたは50年前に・・・」
「それは現実だけど、真実ではない」
マクゴナガルの言葉を遮って、少女が背を向けたままそう言った。
肩越しに振り返る。「あなたなら、分かるでしょ?」
マクゴナガルは息を呑んだ。
長い漆黒の髪。雪のように白い肌。瞳の色は違えど、その顔はまさしく・・・。
「エリザベス・シィーリア・アントワネット・・・・!!」
彼女は答えるようににっこりと妖艶に微笑んだ。
マクゴナガルが立ち尽くしている間に、階段が動き始める。
彼女が最後の一段を上がった瞬間、マクゴナガルはようやく校長の言った意味を理解した。
そして新たな戦慄が、体中に流れるのを感じた。