「ありゃりゃ・・・誠凛負けちゃったんだー」
ガムをくちゃくちゃと噛みながら携帯をぱかっと開け、受信したメールを見るなり彼女は嬉しそうにそう言った。「また対戦できると思ったんだけどなー」
「・・・嬉しそうだな」
俺は横目でバスケットボールの上に腰を下ろしている彼女を見やりながらボールをバウンドさせた。
「まあね」彼女はゆるりと笑った。「この前みたいな馬鹿馬鹿しい試合、二度とやりたくないし」
「馬鹿馬鹿しい?」俺は手を止めて、信じられない気持で彼女を見た。「あの練習試合を、馬鹿馬鹿しいと思ってんのか、おめーは」
その時。彼女の表情ががらりと変わった。
「当たり前でしょ」
低い、うなるような声。
「負ける以上の屈辱なんて、ありえないわ」