「昔、ある子供が行方不明になった」
四ツ谷先輩は例の直接頭に入ってくるような声で言った。
「だが誰もその子が消えたことに気付かなかった――――・・・。なぜなら、何者かが、その子供に成り済ましていたからだ」
真はいつものようにぞくっと背筋が凍るのを感じた。
「――――その消えた子はどこへ?」
淡々とした声で美夜が言った。
真は彼女を見て驚いた。美夜の顔はどこか強張っていて、冷酷なしたたかさがあった。
四ツ谷先輩はニヤリと笑った。
「入れ替えた子供は地中深くへと隠される。二度と、見つからない場所に」
「ではあなたは―――」美夜はすっと目を細めた。「妹が、あの松の木の下に隠されていると?」
四ツ谷先輩は肩をすくめた。「可能性はあるな。幽霊となってでてきたんなら」
「犯人は誰だと?」
「校長だろな、おそらく」
唯一この中学を把握している人物。
彼女は頷いた。「なるほど」
「それじゃ」
四ツ谷先輩は立ち上がって背延びをした。「放課後、あの松の下に来い。本当にきみの妹があの冷たい地面の下にいるかどうか確かめる」
「分かりました」
彼女は表情を変えなかった。
背を向けた彼女に四ツ谷先輩が「ところで」と声をかけた。
麻薫 美夜は振り返った。
「君たち双子の見分け方は?」
彼女の顔は強張ったままだったが、少しだけ頬をゆるませた。
「髪です」
「髪?」
「私はブロンドでしたが・・・妹は黒髪でした。そう、まるで・・・」
鴉の羽のような。
小さな声で、彼女はそう付け加えた。