「ねーねー君超可愛いねぇ~」



「お兄さんたちと遊ばない??」



「悪いことしないからさぁ~」





最低最悪!!



私は舌打ちしたいのをなんとか堪えた。



今までナンパには何回か合ったけど、これまで以上にしつこい。



汗臭い男たちに囲まれながら必死に視線をめぐらす。



周りは暗闇で、人っ子一人いない。



いつもはこの帰り途を通らないようにしているけど、明日の試合の準備をしなくちゃいけないから、と近道をしてみたのだが・・・。



(なんでこんな目に会っちゃうんだろう・・・)



この場にいない思い人を心の中に描く。黒子君がいてくれたらなぁ・・・。



きっと、私を助けてくれる。



だって私の王子様だもの。




「ねぇ、姉ちゃんってばぁ」



ぐいっと腕を引っ張られ、私は思わず手を出して男の頬を張り上げてしまった。



パチン。



と乾いた音が鳴り響く。



「・・・あ、」


やっちゃった・・・。



凄い目つきで睨みつけられ、体が震え上がってくる。


本当にやばいかも!!



殴った男は唾を吐き、私に向かってきた。「てめぇ、よくも・・・!!」


きゃーきゃー!!


まじどうしよう!!!


殺されちゃう!!!


大丈夫、私の声は大きい・・・!!



悲鳴を上げようと息を大きく吸い込んだ。



その時。



「やめな」



え・・・?



凛とした、ハスキー・ヴォイス。



振り返ると、真っ青な瞳と出会った。



わぁ。



びっくりしちゃうほど、すっごい美人・・・。



ジャージ姿でフードを目深に被っていて・・・。



男たちも口を開けたままぽかんとしている。


この人に比べたら全然比べ物にならないもの。



「な、なんだ、てめぇ!!」



ようやく気を取り直して男たちの一人が食ってかかった。「イケ面野郎は自分の尻でも舐めてやがれ!!なんにも出来ないくせ・・・ぐぎゃああああああああああああああああ!!!!!」



そいつが言う前にその男性はそいつの股間に膝をつき上げた。



うっわ。痛そう・・・。


相手に反撃を与える隙もみせず、彼は男たちを次々と倒していく。


無駄な動きがない、優雅な動作。


見惚れていると、男たちは既に逃げ出していた。


やーいやーい!!ざまーみろ!!


そう言ってやりたいけど、足がガクガク震え我慢していた涙が溢れ出す。


すると、その人が優しく私の頭を撫でてくれた。



ようやく落ち着いてきて、私は頭を下げた。「あの、ありがとうございました」



また涙が一筋こぼれ出す。「なんてお礼を言えばいいか・・・」



「お礼なんていらないよ」



くすり。



柔らかな笑い声。



顔を上げると、優しい瞳と目が合った。



あまりに綺麗な笑顔だったからおずおずと笑みを返す。「あなたみたいな白馬に乗っている王子様を探してたんです」と冗談っぽく言った。



するとその素敵な男性はにやりと笑った。「誰が王子様だって?」



フードに手をかけ、すっと後ろに下ろす。



!!


またまた驚き。



さらりと流れる金髪。


ちょうどいいくらいの胸のふくらみ。



まぎれもない。



この人は女性だった。



しかも。



「!あなた、」




どこかで見たことがある。



でも一体どこで―――・・・・。




彼女は不思議そうに私の顔を覗き込んだ。「どうかした?」



「い、いいえ」



ごくりと唾を飲み込む。



もしかして、私大事なことを忘れてるんじゃ―――・・・



「あのッ」



「え?」



「どこかで会ったことがあります?」



彼女は目をぱちくりさせまじまじと私を眺めた。



しばらくして苦笑する。「ごめん。結構顔覚えはいい方なんだけど、覚えてないや。」




そう言って彼女は背を向けた。「それじゃあ、私はこれで」




「あの・・・!」



私の呼びかけに彼女はまた振り返った。



「あなたの、名前は?」




春風がふんわりと顔を撫でた。



彼女はにっこりと笑ってみせた。





「アンナ。霜月 アンナ」





その姿はまるでヒーロー



(霜月アンナ・・・)


(やっぱどっかで聞いたことある)