「うぃ~ヒック・・・・今日はぁ~いい夜ですねぇーっとォ~」
「・・・・・お前どれだけ酒飲んだんだ」
冬の凍てつくような寒さの夜。
居酒屋で酒に囲まれ眠り込んでいたこいつを引っ張りだすのに1時間もかかってしまった。
全く・・・手間のかかる女だ。
突然、彼女の手が伸びて俺の首に巻きついた。
「ひゃぁ~寒い寒い・・・ヒック・・・竜二はあったかいねぇ~♫」
「馬鹿野郎・・・っ!人見てんだろ!!」
慌てて引き離そうとするが、全身の力がかかってるので振りほどけない。
「いいじゃーん別に~なに恥ずかしがってんのよ」
「なっ・・・!!」
ぱっと自分の顔が赤くなっていくのが分かった。
彼女が不思議そうに俺の顔を覗き込む。「どーしたの~」
なにのんきなことを言ってるんだか・・・。
俺はそのとろんとした目から視線をそらした。
「やめろ」
「はぁ?」
「いいから」
さっさと俺から離れろ、馬鹿女。
そう言うと彼女はむっとしたように立ち止った。
「分かりましたよぉ~」
ポケットに入れている小さな袋から桜の花びらを取り出し、ふっと息を吹きかける。
するとそれは瞬く間に牛車に変わった。
「もういい。これからはあんたなんか頼らない」
ふん、と鼻を鳴らし、俺に背を向ける彼女。
俺は溜息をついた。
そして牛車に乗り込もうとする背中を後ろから抱きしめた。
驚いたように見開かれる目。
「本当に」
くいっとその顎を上げる。「お前は馬鹿だ」
そう言って俺は淡い桜色の唇を奪ってやった。
桜色のきみ。