「ざけんじゃねぇーよ!!」
そう叫んで私は屋上に置いてあるゴミ箱を蹴り飛ばした。
「なぁにが、幸薄そうな顔だよ、くそったれ!!」
普段なら隠し通している悪態をゴミ箱に向かって吐き出しまくる。
なんなんだ、あのアバズレは・・・。
私は自分のことをあれこれ言われるのが大っ嫌いで、さっきもマジ切れ寸前だった。
でも、真太郎がいたから・・・・あのキャラを崩すわけにもいかないし。
そういうことで、屋上までダッシュで上がり、こうして罵詈雑言をぶちまけてるってわけ。
私の拳はパンチを繰り出したくてうずうずしていた。
相手はなんでもいい。壁でも、人間でも。
ちらりと屋上の壁を見る。
・・・・誰もいないし・・・、いいよね。
有言実行。
この四字熟語をつくりだしたのは誰だっけ?
まぁ、誰だっていい。
私はこの言葉を誰よりも支持している人間だ。
足を踏みこみ、勢いをつけて私は拳を壁にたたきつけた。
ビシッという鈍い音がして、壁に蜘蛛の巣のような皹が広がる。
一部の欠片が落ちて、私の靴に落ちた。
うーん。やっぱ快感。
その時。
「・・・・何やってんの、琴ちゃん」
慌てて振り返ると、同じクラスの高尾が屋上の扉を開けたまま固まっていた。
げっ。
口元がひきつる。なんでこいついんのよ?
高尾は交互に私と壁に目をやって、「はーん」とどこか嬉しそうな声を出した。
「な・る・ほ・ど」
・・・・そのニヤニヤへつら笑った顔面に拳を叩きつけてやったら、どんなにいいだろう。
「あ・・・・あの、高尾君・・・?」
私は無理やり口角を上げて見せた。「あ、あなた少し勘違いを・・・」
「真ちゃんに言おう~♪」
そう言って扉をしめようとする高尾の襟首を、私は慌てて引っ張り、壁に押し付けた。
「へぇ~琴ちゃんって案外積極的~」
口笛を吹く高尾を私は睨みつけた。「あんた・・・このことを他言したら・・・!!」
「なに?俺を殴る?」
まぁそんなことしたら、君が一番困るだろうな~と能天気なことを言いくさりやがった。
なんなのこいつ!!
ブチン、と私の頭の中で何かが音を立てて切れた。
「こんの、くそったれのど狐野郎!!あんた、こ・・・」
「はいはい、黙りんしゃい。人来るよ?」
そう言って私の唇に人差し指を押しつけた。
まず私が考えたことは、この成り上がったうすのろの馬鹿の指をへし折り、肘でアッパーカットをくらわすことだった。
私は低く押し殺した声で早口に言った。「あんた、タマちゃんとついてる?ついてんなら私がつぶしてやるよ」
「あ~ごめん。それは嫌だ」
くっくっと笑って、高尾はポケットから携帯を取り出した。
私の顔がさーと青ざめた。「あんた・・・まさか・・・」
「最近の携帯ってハイテクだよな~録音もできるなんて」
奪い取ろうとしたが、やつはすぐにポケットに携帯を滑りこませた。
私は思いっきり高尾を睨みつけた。
「地獄に堕ちろ、クソ野郎」
「地獄に落ちるのは、どっちかな?」
そう言って高尾は私の耳元に唇を近づけ、こう囁いた。
「俺と付き合ってくれるなら、別に黙っててやってもいいけど?」
(知ってた)
(キミがみんなの前で無理に笑ってること)
(緑間は俺みたいに受け入れようとしないって)
(分かってるだろ?)