「皐・・・」
こつ、こつ、こつ。
「月っち・・・」
思いっきりスルーされた。
何気に傷つくッス・・・。
俺は髪をかき上げた。ったく・・・いつもの女の子たちとは違い、一筋縄ではいかないッスね。
それに朝の一件以来、相当避けられいる。
だが今はクラッチタイム。
俺は踵を返して彼女のあとを追いかけた。
「皐月っち~待ってくださいッスよ~」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ちょ・・・無視はなしっすよ!ちゃんと応えてほしいッス!」
「・・・・・・たとえばあなたが女の子たちに手を振るみたいに?」
皮肉たっぷりの平坦な口調。
だけど返事は返してくれた。口元が自然と綻ぶ。
「あれ~知ってたんスか?ってか皐月っち案外俺のこと見てるんスね?」
すると思いっきり睨まれた。
んー。ちょっとからかってみただけなんスけど。
でもなんていうーか、眼力すごくないっすか?
思わずどきっとしてしまう。
その間に俺を置いて彼女はかつかつと速足で歩いていく。
「ちょ・・・ちょっと、皐月っち?!」
慌てて追いつくと彼女はぽつりとつぶやいた。「あなたってぺリシテ人ね」
「ぺ・・・なに?」
そんな難しい?言葉を言われても俺にわかるはずがないッス。
すると彼女は立ち止って見下したように笑みを浮かべた。「ぺリシテ人。高尚な思考や知性を持ち合わせていない自惚れ屋の俗物のことよ」
俺は目をぱちくりさせた。
「つまり皐月っち・・・・俺を馬鹿にしてる?」
彼女は大げさに肩をすくめた。「いいえ、まさか。おつむの弱い体育系の遊び人を、どうすれば馬鹿にすることができて?」
いや・・・思いっきり馬鹿にしてますよ?
「それより」
彼女は指を上に向けた。「どこまでついてくる気?」
目を上げるとそこには女子トイレのマークが。
冷たい女子の視線が俺に刺さってくる。
あれって・・・黄瀬くんじゃない?
女子トイレに何の用?
もしかして、変態なんじゃ・・・。
俺は慌ててそこから立ち去った。