「ハッ、俺はそんな簡単に倒れるようなヤワじゃねェよ」



トラファルガーは分からねえがな、と馬鹿にしたように鼻で笑うキッド。



「安心しろ、兵器に殺されたあんたの骨を俺が拾ってやるよ」



パチパチと二人の間に火花が飛び散る。



二つの男性ホルモンがぶつかり合っているのをダフネは間が抜けた表情で眺めていた。



どうして男というものは、こう・・・・単純なのだろうか。



そういう点にかんしては、女でよかったと思う。



めんどくさいが、単純ではない。




「言っただろ」



突然、キッドがダフネを見た。「俺を信じろって」



温かい目。



思わず口元が綻ぶ。「ええ、そうね」



‘信じろ’―――か。



ふっとダフネは笑った。



いつからこんなにも人を信じなくなってしまったんだろう?




昔から、人と距離を置いてしまうような子供だった。それは間違いない。



多分、父親の影響もあると思う。



でも、白ひげとの出会いで、なにもかもが変わった。



彼が手を差し出した、あの瞬間。



誰かを信じたいと思った。


誰かを愛したいと思った。




そして―――愛されたいと思った。




人としての感情がなかったダフネを変えたのは、たった一つの出会い。



そして築かれた深い、海のような信頼感。





会いたいな、と思う。



モビー・ビックに。親父に。皆に。そして―――




「ダフネ」



懐かしい、あの声。


あの掌。


あの体温。



彼の顔が脳裏に浮かび、心がきゅっとなった。










――――――穏やかな空気が崩れたのは、たった一人の一声だった。








「キッドの頭!!」



こちらに向かってくる、キッド海賊団の船員と思われる一人の男。



その手には、何かが握られている。



「どうした?」



キッドが怪訝そうに、息も絶え絶えな男を見下ろした。「何かあったのか?」



「そ・・・それが・・・」



男は慌てて、手に持っていたものをキッドに差し出した。



それは、新聞だった。


普通の、ただの新聞。


だが男が握ったせいかクシャクシャになっている。



キッドは受け取り、新聞に目を通した。



段々と見開かれていく目。



「ウソだろ・・・」




ぽつりとつぶやかれた声は震えていた。



新聞から顔を上げて、ダフネを見る。



「なに?」



わけが分からず眉をひそめるダフネ。



キッドは何も言わず、新聞をダフネに差し出した。



戸惑いながらそれを受け取り、新聞を広げた。












‘白ひげ海賊団2番隊隊長、ポートガス・D・エース公開処刑’















一面に、大きく書かれた文字。




そして、彼の写真。






ダフネは大きく目を見開いた。