「ねェ、ニューゲート」
柔らかい笑みを浮かべながら女が俺を見た。
俺の名前を恐れずに口にするなんて、相当イカレてるか、肝が据わっているかのどちらかだ。
ちらりと女を見る。こいつの場合、どっちつかずだがな。
流れるような漆黒の髪に、鮮やかな海の瞳。
そしてその腹の中には、新しい命が宿っている。
この女の昔の破天荒ぶりを思い出しながらわからないものだな、と思った。
今の彼女の顔は、母親のそれに変わっていた。
愛おしそうに、自分の腹をなでる。
「もし、この子が大きくなったら陰ながら支えてあげてね」
と言い出した。
「・・・何でおれにそんなことを言うんだ?」
そう尋ねると、女はにこりと笑って見せた。
「なぜって、あなたなら、この約束、守ってくれそうだから」
そう言って俺の手をほっそりとした手で包んだ。
「多分、私はこの子の成長を見てあげられない。だから、この子をお願いね、ニューゲート」
俺はふん、と鼻を鳴らした。「自分のガキぐらい、自分で見やがれ、バカ娘」
すると女はきょとんとした表情になった。
そして悲しげに「そうよね」といった。
――――その約束の意味が分かったのは1年後。
女は消えた。