「ヤミヤミの実?」


ダフネはサッチの手に納まっている実をまじまじと見つめた。


「・・・名前と見た目からしてロクでもないものに違いないわね」



サッチがにやりと笑った。「食べてみなきゃ分かんねェだろ」



「そうだけど」


ダフネはちらりともう一度その実を見た。



嫌な感じがする。


何か、何かが違う。


他の実と。




不審げに見るダフネにサッチはやれやれと溜息をついた。


「そんな心配すんなよ、ダフネ。俺なら大丈夫だ」


そう言ってくしゃっとダフネの髪を撫でる。



「でも・・・」



ダフネは食い下がった。「嫌な予感がするの」



「なんだ、心配してくれるのか?」


可愛いとこあんじゃねぇか、とにやりと笑う。


はいはい。


ダフネは呆れたように目をぐるりと回し手をあげてみせた。


聞く耳を持たないとはこのことだ。



「あなたの好きなように」


後悔しても知らないから、という蠱惑的なまなざしでサッチを見る。



立ちあがって埃を払った。



「じゃあね、おやすみ」



ふん、と鼻を鳴らし背を向けるとサッチの手が伸びてダフネの尻を叩いた。


氷のような視線をサッチに向けると彼は腹を抱えて笑っていた。



























「後でどうなたって知らないんだから」


ぶつぶつとぼやきながらダフネは見張りのために甲板に向かった。


もし次に私のお尻にちょっかいを出したら目玉をえぐりだしてやる。


王道中の王道、「股間にひざ蹴り」だって。


泣きわめくサッチを見て私は澄みきったハスキーな声で「ざまあみろ」と言ってやる。



甲板に出ると誰かにぶつかりダフネは勢いよく尻もちをついた。


「痛ーッ」


目を細め手で尻をさする。我ながら見事な尻もちだった。


「すまん、ダフネ!」


そう聞こえたと思えば脇に手を入れられ抱き起される。



ダフネは慌てて首を振った。「いいの、ティーチ。気にしないで!」



黒いカーリーヘアのその男の名前はマーシャル・D・ティーチ。


第2番隊隊員でダフネの部下だ。


「大丈夫か?」



心配そうにダフネの顔を覗き込む。



「ええ、平気よ」


にっと笑ってみせる。お尻はまだひりひりするけど。



その笑顔を見てティーチはふっと笑みを浮かべた。



「ダフネ副隊長」



そう言ってダフネを抱きしめる。


力強い力に抱きしめられダフネは息ができなかった。「ちょ・・・ティーチ・・苦し・・・」



「お前に会えて、本当によかった」



「・・・へ?」




ダフネは目をぱちくりさせ、部下を見上げた。


ティーチの目は決意に溢れていた。



「ティーチ・・・?」


いつもの彼じゃない。


彼の変貌に戸惑うダフネ。



さっと体を離す。時間だ、と彼は呟く。



時間?一体なんの?


「じゃあな、スウィーティー」


そう言ってダフネの頬に唇を押しつけ慌ただしげに甲板を下りて行った。





しばらくダフネは動けないでいた。



何が起こってるの?


何が彼を急がせてるの?



何故か胸騒ぎがする。



ダフネは振り返った。



ティーチがぶつかって来た場所をたどる。


ゆっくりと歩くつもりが早足になっていた。



何かがそうさせていたのだ。



ダフネは息を切らせながら角を曲がった。




その時、月光に照らされ床が露わになった。



その色は――赤色。




ダフネははっと立ち止まった。



血の海の果てには・・・。



「サッチ!」



ダフネの絶叫が静かな海を切り開いた。








あとがき



えーん。


ってか今回は「お尻」ギャグでした。。。タッツー