店に入ると玄関にはハングル文字の大きな掛け軸と白磁器があった

色白で小柄な女性の店員が出迎えてくれた


店員
いらっしゃいませ!ご予約はされていますか?

ヨウコさん
ついさっき2名で予約したミヤタですけど。

店員
失礼いたしました、ミヤタ様ですね。お待ちしておりました。奥の席になりますので、ご案内します。


小上がりの半個室のような席を案内され、オレとヨウコさんはテーブルを挟んで座った


店員
オーダーはいかがいたしましょうか?

ヨウコさん
うーん、どれにしようかなあ?やっぱりいいお肉だから値段がなあ…

オレ
ヨウコさん、今日はお金持ちなんでしょ?

ヨウコさん
アッ!ワタシってバカね!それじゃあ、この特選黒毛和牛の上コースをお願いします。れいじクンはビールどうする?

オレ
いただいてもいいですか?

ヨウコさん
もちろんよ!店員サン、生ビール二つお願いします!

店員
かしこまりました。少々お待ち下さいませ。


店員は早足で厨房へオーダーを伝えに行った


オレ
ヨウコさん、車でしょ⁉︎飲んじゃって大丈夫ですか?

ヨウコさん
大丈夫!大丈夫!お金あるんだから代行運転頼んじゃうから!

オレ
そうでしたね!それなら心配ありませんね。


あまり時間がかからずに肉が運ばれてきた

店員が一つづつ肉の部位や焼き方の説明をしていった

肉を焼き網に乗せると香ばしくも甘い香りが立ち込めた

確かに今まで食べていた焼肉はなんだったのか?と思わせるほどの美味しさだった

ヨウコさんとは明るく会話が弾みビールもいい調子で飲んだ

でも、途中でヨウコさんが、"あんまり飲み過ぎないでね" と意味あり気に微笑みながら囁いた…

"ああ、明日は仕事だしな" その時、オレは単純にそう思っていた…


美味しい焼肉を堪能しヨウコさんが会計を済ませて店を出た

同時に4.50代のスーツの男性と20代後半に見える派手な女性が店に入っていった

昨日の夜、ホテルで見たあの男とヨウコさんのことを思い出した…

結局、焼肉のカネはあの男のカネなんだと思ってしまった…

口の中に入れていたハッカ飴が少し苦く感じた…


街中から少し離れた場所なので人通りは少ない

すぐにヨウコさんは腕を絡ませてきた…

"ヨウコさんはオレを選んだんだ"

オレはそう自分に言い聞かせた…


来た道を戻らず酔い覚ましに2人で腕を組みながら川沿いの道を歩いた

しばらく歩いていると川面にピンクのネオンが反射していた

ふいにヨウコさんが立ち止まり上目使いでオレを見た


ヨウコさん
休憩してく?れいじクン…


オレは何も言わずヨウコさんと腕を組んだままラブホテルの中に入った…


ホテルの部屋に入ってすぐにキスをしてヨウコさんを抱きしめた…

ヨウコさんの口の中はハッカ飴と焼肉の味がした…

服を脱ぐのももどかしくお互いを求めあった…

お互いを繋ぎ合わそうとしたその時…



ブブブブブ ブブブブブ ブブブブブ

オレの携帯電話が振動した…


ヨウコさん
…出なくていいの?…

オレ
……


オレはヨウコさんを抱いている手を離し携帯電話を手に取った…

電話はやはりユミからだった…

オレは携帯電話の電源を切った…


オレは再びヨウコさんを抱きしめた…


オレ
…今…オレは…ヨウコのれいじ…だから…


オレとヨウコさんは繋がった…

何度もお互いの名前を呼び合った…

オレはオレの中にいるユミを消すように激しく動いた…

ヨウコさんは激しく反応していた…


あの男ともこうして…

あの男のことを思い出してしまい、それが頭の中を駆け巡った…


"…1人は50代で会社を経営してるヒト…"

"…そういう関係なの…"

"…会うたびにアクセサリーをプレゼントされるの…"

ホテルのフロントで騒ぐあの男…

ホテルのフロントでのあの男とのやり取り…

ヨウコちゃん!お待たせ!おや?こちらの方はどなた?

オレ
ウチのヨウコに何かご用ですか?

エッ…


オレの体は熱くなり血液が一点に集中していった…

これ以上ないくらいに硬くなってきた…

硬くなったものは中で柔らかく締め付けられた…

オレはさらに激しく動いた…

ヨウコさんはオレの体の下で悲鳴に近い声を上げていた…


アルコールの影響なのかオレはなかなか果てなかった…

ヨウコさんは何度か果てたようだった…




終わってもヨウコさんはオレに体をくっつけたままでいた…

オレの肩に自分のアゴを載せていた…


ヨウコさん
…ハア..ハア..ハア…れいじクン…ハア..ハア...どうしたの?…ハア..ハア...スゴく激しかったよ…でも…ハア..ハア...スゴく良かった…ハア..ハア...

オレ
……



ヨウコさんはオレから少しだけ体を離し耳元で呟いた


ヨウコさん
…さっきの電話…奥さんからでしょ…かけ直さなくて大丈夫なの?…

オレ
……


なんとなく…ヨウコさんと同じ空間にいる時にユミへ電話やメールをすることはためらわれた…


しばらくオレとヨウコさんは手を繋いだままベッドで並んで横になっていた

天井のオレンジ色の暗い灯りをぼんやり眺めていた


不意にヨウコさんはオレの方に体を向けた…


ヨウコさん
…あのね…れいじクン…少し前から思ってたコトがあるんだけど…聞いてくれる?…

オレ
…どうしました?…

ヨウコさん
…これから…これからはワタシのコト…ヨウコって呼んで欲しいの…だから…ワタシもレイジって呼んでいい?…

オレ
…エッ…いいですよ…でも、なんか照れますね…


ヨウコはオレの体に向けしがみついてきた…


ヨウコ
…レイジ…ワタシの名前を呼んで…レイジの気持ちを聞かせて…

オレ
…ヨウコ…好きだよ…

ヨウコ
…ワタシもよ…レイジ…大好き…


お互いの唇を合わせて舌を吸いあった…

お互いの抱き合う腕に力が入り足を絡ませた…


"レイジ…レイジ…ずっとこのまま…ずっと…あぁ…もっと…もっと…"


ヨウコはオレの上に乗り激しく腰を振りながら、うわ言のように何度も呻き何度も果てた…


"…ヨウコ…ヨウコ…ヨウコ…"


オレは頭の中が真っ白になった…




このままヨウコと抱き合っていたいが

そんなわけにもいかない

2人でシャワーを浴びたらかなりアルコールが抜けていたことを感じた


ラブホテルを出て駐車場に着き代行運転の事務所に電話を入れた

代行運転を待っている間にヨウコが微笑みながら話し出した


ヨウコ
そうそう…レイジ!もうワタシに敬語使っちゃダメだからね!

オレ
エッ!どうしてですか?

ヨウコ
ほら、また!…ワタシ達…もう…他人じゃないでしょ…

オレ
…わかりました…

ヨウコ
もう!言ってるそばから!

オレ
アレッ!ゴメン。これから気をつけま…気をつけるね…


代行運転の車が到着し、オレとヨウコはヨウコの車の後部座席に並んで座った

車は夜の街中を走り抜け先にオレのアパートへ向かった

ヨウコはオレの手を握ったままオレの肩に頭を乗せていた



オレとヨウコは繋がりあい…始まってしまった…

どうにもならないのに…

苦しくなるだけなのに…


夜道を走る車の行き先は決まっているけど

オレとヨウコのこれからの行き先は決まっていなかった