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すべてを見抜く「万能鑑定士」

今回は今までと趣向を変えて小説のお話を。


万能鑑定士Qの事件簿


万能鑑定士Qの事件簿 I (角川文庫)/松岡 圭祐
¥540
Amazon.co.jp

作 松岡圭祐 <Ⅵ巻まで刊行中>



とにかく設定がすこぶる面白い!! 主人公の凜田莉子は、飯田橋の神田川沿いにある雑居ビルの1回に「万能鑑定士Q」という店を構えるモデルを思わせる容姿の美女。彼女の「猫のような」と表現される大きくつぶらな瞳は、あらゆるものを一目で鑑定してしまうのです。…と言っても、その能力はいわゆる超能力の類ではなく、彼女のたゆまぬ努力によって培われた能力なんですよ。彼女はその能力と、自身の「誰かのために役に立ちたい」という思考からくる行動力によって様々な事件を解決していく…というのが物語の展開です。ちなみに、「万能鑑定士」というのは屋号であり、莉子は特別な資格を持っているわけではありません。


作中で解決される事件は「日本を襲ったハイパーインフレ」「大規模な詐欺」「映画ファンのコレクターアイテムの焼失」などで、よくある推理小説のように、連続殺人を解決するといったものではありません。そのため「殺人なき推理小説」などと評されています。


この作品の凄いところは、実際に起こった事件や奇妙な出来事を作中で引用し、作者独自の解釈でまだ解明されていない出来事に答えが示されていること。例を挙げると、シリーズ1作目にあたるⅠ・Ⅱ巻(1作目のみ上下巻構成)の「力士シール」。この「力士シール」はネットで調べていただくとわかるのですが、2008年~2009年に銀座などの都市部を中心に実際に起こった奇妙奇天烈な事件でして、当時は都市伝説的に話題になったもの。実際ではグラフィティライターの手によるものという説や、某国工作員による暗号説、カルト教団の活動説など多くの説が飛び交ったものの、明確な答えは出されていないんです。が、そこに松岡先生は独自の説として、答えを導きだし、物語に巧妙に織り込まれているのです。その答えは、Ⅰ巻のあとがきとして書かれている三浦天紗子の解説にて「どんな説より説得力のある解答」とされており、Ⅱ巻を読み終わったときには「本当にそうだったんじゃないか」と思わされてしまうほどです。気になった方は是非とも一読してみてください。また、「大規模な詐欺」に関しては、かつて打ち込み系のダンスミュージックで一世を風靡した大物音楽プロデューサーが裏で糸を引いている…など実際に起こった事件のオマージュがなされていたりも…。なお、地名や会社名も実際のものを使っていまして、角川書店やそれに関連したアニメ・漫画作品の名前も実名で登場。角川書店の社内の様子などは、他の映像作品で使われていた物と比較するとわかるのですが、忠実に表現されています。このことが、よりこの作品をリアルな雰囲気にしている要因なのでしょう。


莉子以外に物語に登場する主な人物は、先述した「力士シール」の鑑定を依頼したことから莉子に依頼したことから交流が始まる、『月刊角川』の編集者、小笠原 悠斗や、莉子が事件を察知すると相談に行く、牛込警察署知能犯捜査係警部補・葉山翔太などがいまして、物語に花を添えてくれます。小笠原は「力士シール」鑑定を依頼に向かった際に、自分の着けていた時計から、職種や勤務先、入社年数などを当てられて、莉子の能力に心酔。以降は奇妙な出来事がある度に彼女を頼るようになっていきます。まぁ、一人の男として絶世の美女である莉子とお近づきに…という思惑もあるようですが。


私的にオススメなのは度々例に挙げているⅠ・Ⅱ巻「力士シール」に関するエピソード。莉子が「万能鑑定士」になるまでの経緯を語られているほか、事件の黒幕やその手法などの結末も「まさか!!」と思わせてくれますよ。現在書店によっては、平積みされていたりして、見つけやすくなっていますので、年末年始の連休のお供にいかがでしょうか?



☆GUMP☆