第11次瀬戸内カヤック横断隊③ | DriftWoodBeach

第11次瀬戸内カヤック横断隊③

2013年11月17日
リーダー:楠(午後から平田)
潮汐:情島 満潮 8:43(328)20:23(310)
      干潮 2:12(27)14:39(103)
天候:曇りからの雨、のち曇り
メンバー:シングル23艇




初日の夜に谷口さんが急に倒れてしまった。救急車に運ばれすぐに病院に運ばれて事なきを得たが、何が起きるかわからない横断隊。その後谷口さんは急激な過労による低血糖が原因で倒れたようで後遺症はまったくなく、のちに復帰する。
天候が良いからと一気に漕ぎ進んできたものの、隊員全員が余裕を持っているわけではないということが如実に出た結果だったと思う。サポートメンバーが付いている状況で車が来れる場所だったからよかったがこれが無人島やひと気のない浜だったらと思うとぞっとする。気をつけなければならない。

翌日からは小豆島の方一つのショップ、「自然舎」の山本さんと今井さんが加わり、一人離脱、二人参加の計23艇で行われることになった。


 ◎自然舎(山本貴道:小豆島) http://jinensha.com/





リーダーは副隊長と言ってもいい存在、楠さん。この日も6時集合、6:30出発となった。

7時になると朝日が昇り、この日も天気が良くなるように思えたがそれも束の間、風が次第にあがってきて空も曇り空になってきた。


周防大島の東の先端、片山瀬戸は地味ながら潮が速い。そして情島と諸島の間、諸島水道は激烈に潮が速いことで有名だ。
この時はちょうど満潮の潮止まりにこの地点に来ることができ、難なく諸島南側を通って津和地島の東側に抜けることができた。「難なく」と言っても潮と風がぶつかりかなりチョッピーな海を漕いで行くことになる。


津和地島と怒和島の間を北上し、津和地島の北で休憩してそのまま北上、鹿島まで渡ると思っていたのだがここでリーダーが怒和島に渡ると言い出した。怒和島の北にある浜にいったん上陸し、そこから態勢を整えて海峡横断する。そういう案だと思ったのでそれでは遅すぎる、早くしないと鹿島まで渡れないと焦った。
あとで聞いたところ、津和地島北は西に流れる潮流があり、それに乗ってしまうと間にある島をまわりこむ必要ができて遠回りになってしまうというのだ。なるほど。早く言ってよと思ったが伝達はできない状態だったから致し方ない。リーダーのいうことには従っておけという典型的パターンだった。






そこからの海峡横断直前になってこれまたアクシデント。
楠さんが体調不良をうったえて急きょ、平田さんにリーダーのバトンが渡された。
海峡横断は最初のうちは静かなもので、特に問題はないと思われる凪いだ海を漕いで行けた。後続グループは余裕をかまして「歌しりとり」までしていたしまつ。
ところが終盤になって南西風が強くなり、波浪の追い波が大きくなってきた。
ここにきてアンのスピードが落ちるようになってきていた。
今回の横断隊が始まった時、今回はこの子がキーパーソンになるな…と直感した。彼女のペース次第で隊は動く。初日は平田さんがファイバー艇、アンがポリ艇を乗っていたがそれをこの日は逆にすることになった。これで少しペースが速くなったが、いかんせんパドリングフォームが安定していない。女の子にしてはひじょうに根性があり、練習も重ねているだけに止まらないパドリングはさすがだが、言葉があまり通じないうえに何か言っても「ニコっ」と笑って済まされてしまう…。
とにかくアンが遅れるたびに後続者は彼女をサポートし、なるべく隊全体のペースが落ちないように努めていた。






鹿島に到着し、そのまま倉橋島の南端を目指した。
隊長の村上さんが「パラダイスが待っているよ」と含み笑いをし、平田さんにそこに行くように指示を出した。
そこは小さな入り江になっておりなんとか風をしのげる場所になっている。その頃には風の勢いは増し、雨もぱらついてくるようになっていた。砂浜に上陸すると、その丘の上で多くの人がバーベキューをしているじゃないか!
「いいところに来たよー、喰ってけ喰ってけ!」
そう言われるがままに陸に上がり、ドラム缶の焚火にあたると勢いよく薪が投入された。皿が配られこれでもかとカキやらエビやらサザエやらを渡され、日本酒を回された。


「ね、パラダイスでしょ?」


あまりのそれまでの過酷な状況と現実の変わりように唖然とする僕をよそに、隊長の村上さんはホクホク顔だ。
どうも村上さんの知り合いらしく、ここで休憩できると知っていたらしい。まさかこんな宴会をしているとは知らず偶然だったというがすごいタイミングだ。
僕らが陸に上がった瞬間、風が一気に上がり雨が降りしきった。どうやら前線が通過したようだ。雨はじきにやんだがその後は急激に冷たい風が吹き出した。

とても出発する雰囲気ではなかったが13時に出発する。
楠さんはかなり吐いたりしていたが意識はしっかりしている。大丈夫そうだ。


  





この日はそれから一時間半ほど漕ぎ、14:40に亀ヶ首にある浜でビバークとなった。
この浜はいつも通過ポイントでしかなく、トイレにしか使われていなかったが結構砂浜が広くて僕は前から気になっていた。カキ筏の孟宗竹やその他多くの流木が打ちあがっておりウハウハの環境である。
この日も風こそ強いものの、風裏の浜で非常に快適なビバークをすることができた。僕は時間に余裕があったので海でおかずを獲ることができた。ここもいい海でした。






昨夜病院に運ばれた谷口さんも夕方に合流。近くの場所からカヤックで合流することができた。すごいガッツだ!


月明りもあり、焚火の薪に不自由しない最高のキャンプではあったが翌日からの行程は考え物であった。
西風が強くなる見込みなのでこのまま倉橋島の東海岸を舐めるように移動して、情島に渡り、下蒲刈島まで一気に海峡横断するか…。そのまま北上して呉港の方に行くか…。
難しいシチュエーションの中で翌日のリーダーは西原さんに決まった。
プロガイドでない西原さんがどういうナビゲーションをするか?みんなの注目が集まったところでこの日の夜は更けていった。






ps:ちなみに楠さんの体調不良はまさかの二日酔いだった説が有力です…(笑)