さて 今回のテーマは 最後のタイプ 技術者タイプです



技術者タイプ の 復習です


経営者タイプとちょっと似ていますが 主に治療方法についてのリクエストがハッキリしているタイプです

「目頭切開と切開二重の手術を受けたいのですが 目頭切開はZ法で行ってください 切開二重は中縫いをしない方法でお願いします」

といった具合です 手術手技の違いやその長所や短所などを自己流で研究するあまり 「どうなりたいか」よりも「どういった方法で手術されるのか」が心配でたまらなくなってしまった状態です



こんな感じですね



さて カウンセリングをしていて こういったリクエストが 一番困ります


ちょっとシビアなたとえになりますが


仮に あなたが明日 胃がんの手術を受けるとしましょう


あなたの主治医がこう説明したとしましょう


「明日のあなたの胃がん手術は、胃の全摘出手術です。」

「安全のため周囲のリンパ節を2群まで郭清します。」

「再建はルーアンワイ吻合術で行います。」

「さあ、今日はゆっくり休んで明日に備えましょう」


あなたはインターネットなどで毎日のように検索して 胃がんの治療について 独学の知識が豊富だったとします

独学で得た知識を元に 自分なりに治療方法を悩みぬいた結果 主治医にこう提案します



「画像所見では、私の癌は胃の下の方にあったはずです。」

「幽門側胃切除でお願いします。」

「リンパ節転移も見つかっていないので、リンパ節は取らずに残してください。」

「再建方法は、方法が単純で失敗の少ないビルロートⅠ法でお願いします。」

「胃と腸を吻合する際には、糸が残らないように溶ける糸でお願いします。」


主治医は見る見る 困惑しきった表情に変わります


そして 主治医の先生がとてもいい人なら こんな風に言ってくれるかも知れません

「そんな無茶を言われると、いのちの保障はできません。溶ける糸の件は了解しました。その通りにしましょう。でもあとは私の勧めた方法で手術しましょう。」、「私の勧める手術方法でも、あとの回復がとても大変なんてことは無いですよ。○○さん、私を信じて予定通りの手術を受けてください。」



しかし 「最近は医者が患者の希望を受け入れないと訴えられる時代だから 患者の希望には逆らわないでおこう それで問題があっても自分の責任ではないしね」 と考えるような主治医なら


「どうしてもとおっしゃるなら、ご希望の方法で行いましょう。ただし、手術後の合併症の危険や癌の再発の危険は高くなりますよ。」


そんな こんなで あなたの希望どおりの方法で 手術が行われます

その結果は 主治医の言葉通りです



手術後の合併症の危険や 癌の再発の危険は 高く なりました



本当の目的を見失った結果です

本当の目的とは


「たすかりたい 死にたくない」


だったはずです




この場合 いのちがかかっています

医師としても自分が正しいと考える方法を 強く患者さんに勧めやすく

また そのように勧める正当性が 客観的にも認められやすいです

なので このような結果になることは 少ないでしょう

主治医は自分が勧める手術法で 何とか患者さんを説得しようとするはずです


しかし美容外科の場合 いのちにはかかわらず 基本的に患者さんの希望により行われる治療なので 患者さんの希望が優先されます



だからこそ 治療方法の技術的な 細かい指定は いい結果をもたらしません

一番やってはいけないことだと思います


まさに カウンセリングで言ってはいけないひとこと です


技術的な細かい指定は とてもお勧めできませんが

自分が良いと思っている方法を こういった方法はどうかと聞いてみるのは まったく正当なことなので遠慮はいらないと思います


読者さんは 何言ってやがんだ


自分が手術の際にとやかく言われたくないだけだろう このわがまま医者め!!


と お思いになるかも知れません


まあ そういわれれば そういった一面が 有るかも知れません


技術的な方法を こと細かく指定されても それなりに いい結果にもっていけるように 日々 研鑽していますし 自信もあります 

しかしながら やりにくいのは事実です 自由にやらせていただいたほうが いい結果が期待できます


旨いと評判の とんかつ屋

その店では黒豚を使っていて 独自のブレンドオイルで揚げているとしましょう

その店に行って こう注文するようなものです

「イベリコ豚でとんかつを作ってくれ 油は100%植物性で作ってくれ。」 と


結果はどうでしょうか?

普段の その店のとんかつより おいしいでしょうか? まずいでしょうか?


もっとわかりやすく言えば

とんこつラーメン屋の大将に 「旨い しょうゆラーメンを作ってくれ」 と頼んでいるようなものですよ

たまたま しょうゆラーメンも得意ならいいですけどね・・・


患者さんが自分なりに 調べ上げて考えられた結果 その方法を希望するに至った

そのお気持ちはよく分かります


自分の身体の ことだから それは ご心配でしょう


担当の医者が 名医かヤブ医者かも 分かりません


そんな 得体の知れない医者に 切られるのです


不安でたまらなくなります


「こういった方法で 治療して欲しい」 と希望する気持ちは痛いほど分かります


でも 残念ながら このように 技術的な指定は 決していい結果を生みません



僕の一番言いたいことは これです


ネットで 美容外科治療を独学で調べつくして 担当医にそのようにして欲しい とリクエストすることはお勧めできません


それならば 自分の希望する治療において 腕のいい医者を探すことに その努力のすべてを注ぐべきです


簡単ではないですが やって見る価値は有ります


ネットの口コミを 頼りにカウンセリングに行ったり

さらに とっても言いにくいことでは有りますが

カウンセリングの際に 自分の希望している治療に関して 得意なクリニックや先生を 他に知りませんかと 担当の先生に聞いてみる というもの 体当たり的ですが いいかも知れません


でも とっても勇気が必要ですし 普通は自分が得意だと言うでしょう あるいは医者によっては怒り出す先生もいるかも知れません


しかしながら 自分の身体の問題です 勇気を振り絞って 聞いて見るのもいいでしょう


複数の医者から 勧められる医者は 本物ですよ 




 

それから なんといっても


美容外科手術のインターネットでの知識は本当にやっかい です


この業界の最も悪い部分ですよね


まったくの ウソの情報ではないことがほとんどですが

完全に本当のことを言っているわけでもない・・・


氾濫する ネットでの美容外科知識が 美容外科業界 自らの首を絞める

といった 状態ですよね


なので 僕はブログに 治療法の技術的な問題に関しては あまり書かないのですよ





次回予告


カウンセリングで言ってはいけないひとこと 番外編

「ほんとうは怖い 美容外科ネット雑学」


最近こういったネタにも 飽きてきたので 

この番外編はいつ書くかは分かりません

他にもっと伝えたいことができたら

書かないかも知れません


あしからず