ボブ・ディラン「OH MERCY」(1989年)という作品。
ボブ・ディランの26枚目のスタジオアルバム。何気なく簡単に書かれるようでいて、事実、80年代の当時で26枚ものアルバムを出していることは凄いことだ。
その当時、U2のプロデューサーだったダニエル・ラノワを起用し、制作されたアルバム。
とてもカッコいいアルバムだと私は昔から感じていて、売れ行き(アメリカ30位、英国6位)がそこまで良くないのは意外に思う。
1曲目の「POLITICAL WORLD」の比類なきほどの切迫感。ディランの歌声までやけに真剣さがあって、いつもとはだいぶ違った歌声に聞こえる。その歌声こそ、この時代の困難さを如実に表していると思う。
時代状況を敏感に察知したディランが曲を書き、ダニエル・ラノワがそれをうまく調整した、まさに80年代最後の世界を表現した傑作アルバムと言えるだろう。
全10曲収録。