よいタイトルが思いつきませんでした。 -8ページ目

無理してはいけない

必死で誰かのために頑張ったけど
全てを破壊され

あげく当時の小説の読者にも見捨てられた自分


ファンていっても
自分が望む展開以外は否定するひとが多いのですよね


自分の場合、結局、誰も助けてはくれなかったし

自分の力で戦うしかなかった


最初に書いた小説も、自分を救うために書き始めたようなもんだった
それが少しでも、誰かの支えになってくれたこともあるらしい

だからって見返りを求めても返ってこないのだ



もうこの世界の残酷さには気付き初めているのかもしれないけど


同じように困っている子がいたら
自分は手を差し伸べてあげたいのだ

私立諸越学園芸能科特別編(後)


※こちらは小説後編となります。前編は一つ前のエントリーに戻り、お読みください。



私立諸越学園芸能科特別編(後) そして、杉田くんの憂鬱


「う~ん、今回のもなかなかええわ! マリオ、おまえウチらの専属の構成作家にならんか?」

「う~ん。まあ、考えとくよ」

 人気お笑いコンビの片割れと、そのネタ出しを代行しているゴーストライターの密談は、しかし意外にも白昼堂々行われていた。

「ほなネタ代の前払いとして、焼きそばパン!」

「サンキュー。今月、金欠だったから助かるよ」

 報酬の前払いは、我が校では入手困難な焼きそばパン。3日間の睡眠時間を削って完成したコントの台本への対価としては安いかどうかは、僕にはわからない。彼らのコントを見たお客さんが決めることだ。

「そいじゃ、専属の件、考えといてくれよな~。どうせ役者の仕事もパッとしないんやろ?」

 余計な一言を付け加えて、池田は足取り軽やかに去っていった。残りの昼休みを有意義に過ごすのだろう。一方の僕は、ひとり寂しく昼食タイム……

「みーちゃった、みーちゃった! 『週刊醜聞』にチクっちゃおーかな!」

 ……とはいかなかった。いつの間にか御坂が僕の背後に立っていた。

「うん、この焼きそばパン美味しい!」

 そして、僕の昼食を奪い取って勝手に食べていたのだった。

「『週刊醜聞』って、御坂の事務所と裁判沙汰になってなかったっけ? あと、ひとの昼食を奪わないでくれ。今日は朝も食べてないんだ」

 『週刊醜聞』は、SGM128のスキャンダルをひたすら追うことで業界で有名だった。かつての御坂の『事件』のときも徹底的に彼女を叩いていたので、僕はこの雑誌に良い印象を抱いてない。

「裁判は和解の方向だってさ。SGMの次のドームツアーのガイドブックは醜聞社が担当するらしいよ。来週の週刊醜聞の巻頭グラビアもあいこんだってさ。今日、なにも食べてなかったの? じゃあ、返してあげる」

 淡々と裏事情を解説した後に、御坂はいきなり食べかけの焼きそばパンを僕の口の中に突っ込んだ。

「んがんふ……ぢょ、み゛ざがごれ……」

 関節キスってやつじゃないのか、おい!

「残念ー! 本当はモリモリが食べてたやつでしたー」

「ぶばーーッ!!」

「うわあマリオが噴いた、文字通り「噴飯」って光景だよ。いや、この場合は噴パンかー」

 やけに楽しげな御坂だったが、朝飯も昼飯もろくに食べてない僕は倒れそうなんですけど。

「ていうかモリモリ今日は休みなんだから、食べられるわけないじゃん。なんでまた、簡単に騙されちゃうかなー」

 杜田が欠席だなんて事は、とっくに気付いていたはずだった。それでも僕が簡単に騙されるのは、「御坂」だからだ。表向きは冷静に振る舞ってるけど、本当は御坂の一挙手一投足に動揺し続けている。

「まったくもう。あたし、雑巾持ってくるー」

 結局、昼休みは僕が吐き出したモノの掃除で終わってしまった。御坂が床を雑巾掛けするとき、スカートから下着が見えそうになってドキドキしていたことは内緒だ(彼女のことだから、ワザとやってるのかもしれないが)。





 そして放課後。僕と御坂は学園構内カフェ『アフタースクール』にて、遅い昼食を取っていた。芸能学園という特殊な環境だからか、高校としては珍しくこんな施設が用意されている。確かに今をときめくアイドルがそこらのファーストフード店にいたら、大騒ぎになることは想像に難くないから、この配慮は学生たちにとってはありがたいものだった。売れてない僕には、そうでもなかったが。

「今日は空いてるねえ。さすがにテスト前は、人がいないか」

 ストロー越しに、お茶(『暴々茶ZERO』、カロリーゼロらしい)をすする御坂が周囲を見渡して言った。

 普段は、ゼニーズ事務所所属アイドルがSGMの研究生をナンパするという、どこぞのゴシップ誌が喜びそうな光景が見られるのだが、テスト前は遊び好きの学生も準備に忙しいらしい。もっとも、芸能科のテストは自作のノートなら持ち込み可能というゆるい内容なので、概ねみんなノートの写し作業に四苦八苦しているのだろう。ちなみに、『アフタースクール』は、芸能科の生徒しか利用できない。前述した生徒同士のナンパ行為とかが、普通科の生徒に見られたら大変なことになるのは間違いないからである。

「なんだか、ちょっとしたデートみたいだねえ。せっかくだから、イチャイチャしとく?」

 なにを言ってるのだ御坂は。

「さすがに学園内では、そんな気にならないな」

「あれ? あんなに下ネタ満載のネタを作ってたひとがそんなこと言うの?」

 ばれてた!
 コントの内容が御坂にばれてた!

「池田くんをちょっと突っついたら、メールで台本を転送してくれたよ~。つか、AVネタ多すぎ」

 これは、台本内でネタにした女子校生AVを僕が密かに年齢を偽って注文していたことまで追及されるに違いないと、僕を覚悟を決めたのだが、次に御坂が放った言葉は意外なものだった。

「なんか悲しいなあ」

 そう言った御坂は、本当に悲しそうだった。てっきり怒られると思っていたので、僕は拍子抜けした。

「あれだけマリオが必死で考えたネタが、全部ホルモンバランスの手柄になっちゃうんだよ? あたしは悲しいよ」


※ホルモンバランス……池田けんじと川本たけしによる、現役高校生お笑いコンビ。古本工業所属。下ネタと時事ネタを交えたコントに定評があるが、その大半は池田のクラスメートの杉田眞理雄が考案したものである。


「確かにネタは僕がほとんど考えたけど、それを大勢のお客さんの前で演じるのは僕には無理だよ。リアクションとか、間とかの表現は池田や川本のセンスがあってなんとかなるもんだし」

 テレビ番組でお客さんが大爆笑する光景を見て、「これは本当は僕が考えたものなんだぜ」とこっそりほくそ笑むのも、悪くはないぜ? 常にセンターとして注目を浴び続けていた御坂には、たぶんわからない感覚なんだろう。

「そういう風に考えられるマリオは大人だよ。だからあたしが……っと、や、なんか複雑な気分。だって、タダ働きしてるようなものじゃん」

 なんか途中で言い淀んで、話題を変えた気がするけど、そこはスルーしとく。実はネタが好評だったときの成功報酬として、池田から可愛いファンの女の子を紹介してもらう約束があることも黙っておく。御坂の性格を考慮すると、なによりもこれを隠すことが重要なことな気がした。

「大物のお笑い芸人なら、たいてい優秀なブレーンが付いてるものだよ。僕だって、池田から専属の構成作家にならないかって誘われたし」

「ふーん。役者の仕事を諦めても?」

「う……」

 唐突に御坂から投げつけられた「諦めても?」というひどく冷たい響きの言葉に、僕の周囲の時は止まった。

「今みたいに地味な役者を続けながら、構成作家やったりもできると思うよ」

「役者として、ずっと地味なままでいいの? 今より売れたいとか、上に行きたいって思わないの?」

 浅はかな僕の未来予想図なんて『妥協』にすぎないと言うことを、御坂の言葉は暗に伝えていた。


 沈黙が続いた。

 どうして僕が役者を志したのか、そんな簡単なことさえ僕は忘れていたのだ。


 「本当にたいせつなものは、案外近くにある」ということを思い出すには、今の僕には時間が必要だった。



「ちわーっす! 注文の『ニンニクラーメン チャーシュー抜き』出来上がりました! お熱いので、お気を付けください!」

 長い沈黙を破ったのは、御坂の注文したラーメンを届けに来た店員だった。……というか、カフェでラーメンって、どういう店なんだ? ここは。

「わーっ、前から食べたかったんだーこれ」

 無邪気な笑顔を見せる御坂に、さっきまでのシリアスな様子はなかった。

「カロリー大丈夫なの、それ?」

「たまには、こってりしたものが食べたくなるんだよ。チャーシュー抜いてるからカロリー方面もだいじょうぶ!」

 チャーシュー抜いただけで、どうにかなるカロリー量には見えなかった。



「ごちそうさまでしたー。と言うことで、勝負だーっ!!」

「は!?」

 意味がわからない。

「あたしもホルモンバランスのコントのネタを考えるよ。どっちのネタがウケるか勝負しようよ!」

 御坂の思考は、常人には予想できない。

「次のホルモンバランスのコントの台本はあたしが作るよ。さっきマリオが渡してた台本と、どっちがお客さんのウケがいいかで勝負ね」

 作るとか、簡単に言ってのけてるけど大丈夫なのか? いくら天才の御坂でも、この勝負はさすがに
僕に分[ぶ]があるように思える。

「わかった。御坂がやりたいなら、僕は従うよ」

「マリオが勝ったら、あたしがなんでも言うこと聞いてあげるよ。あたしが勝ったら、マリオのゴーストライター稼業は廃業して役者に専念すること」

「え!? なんでも言うこと聞くとか……」

 一瞬にして頭の中がピンク色に染まった僕をからかうように御坂は言う。

「もう勝った気でいるの? 気がはやいんじゃない? よーし、じゃあさっそくマリオの鼻をへし折ってやるためにネタ考えよっと! じゃあね~」

 風とともに去りぬ御坂だった。



「マリオは、きっと連続ドラマで主演張るような役者には、ならないと思う。……だけど、マリオはマリオだけしかない場所を見つけて、そんな立ち位置を持った役者になると思うんだよ。そんな日が来ることを、あたしは期待していたいんだ」

 去り際に、御坂が本気とも冗談ともつかない調子で言った言葉だ。




 ——1ヶ月後。

 コント台本の勝負は、御坂の圧勝だった。

 僕は忘れていたのだ。

 SGM128のバラエティー番組でのコント台本は、ほとんど御坂が執筆していたということを。

 Wikipediaにも書いてあるような、御坂の才能を僕は忘れていたのだった。

「あたし、今ならマリオが言おうとしてたことも理解できるよ。ゴーストライターの優越感ってやつ? 誰も知らない秘密を自分が握ってる感覚って、なんか楽しいね! いやあ、なんでも経験してみるもんだね!」

 超速筆の売れっ子ゴースト構成作家さまは、売れない役者に逆戻りした僕に慰めの言葉を掛けるのだった。

 お笑い芸人ホルモンバランスは、芸の幅が広がったとして、この年ますます人気を集めるのだった。その陰に、僕と御坂のこんな勝負があったことは、誰も知らない。

 特別編 おしまい。


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私立諸越学園芸能科特別編(前)


私立諸越学園芸能科特別編 (前)谷村さんの憂鬱

 
 谷村さんは、人気お笑い芸人である。
 しかし、残念なことに鬱を患ってしまったので、現在は自宅療養中なのである。

「しかし、仕事はやりたくないけど、ごっつ暇やな~。誰か来えへんやろか。全然、誰も来えへん! 薄情なヤツらばっかりやわ~」

 谷村さんに、友達はいなかった。
 テレビの中ではいつもハイテンションな谷村さんだが、カメラが回ってないときはとにかく寡黙なシャイボーイなのである。
 収録が終われば、即帰宅である。周囲の芸人仲間からは「谷村さんは人付き合いが悪い」と、専らの評判だ。

「やることもないし、エロビデオでもみっかー。さっき届いた女子校生モノをさっそく」

 ネットショップから届いたばかりのDVD入りの封筒を手に取る谷村さん。傍らにはティッシュ箱も用意して、すっかり臨戦態勢だ。

 ピンポーン

「なんや? またなんか届いたか? せやけど、おれ、わざわざ宅急便のにいさんが届けにくるようなデカい荷物頼んだかな?」

 谷村さんは、配達員と顔を合わせるのが面倒なので、アダルトビデオを注文するときは常にポストイン指定なのである。

 ピンポーンピンポーンピンポーンピンピンピンピンピンポーン

「うるさいねん」

 ピポピポピポピポピンポーン
 ピポピポピポピポピンポーン

「うるさいいうてるやろ! ……おっ、おまえ」

「谷村さん、ひさびさっすわー。今日は、谷村さんの見舞いに来たんですよ」

 谷村さんの相方の安倍であった。
 谷村さんと安倍、2人合わせてエイティーエイト。いまや日本の大物お笑いコンビと言われている2人である。

「おう、なんやおまえか……まあええわ、入っ……」

 谷村さんが言うまでもなく、部屋の中につかつかと入りこむ安倍であった。

「おまえ、おれが言う前に勝手に上がり込むとか何様やん」

 安倍のぶしつけな態度に苦言を呈す谷村さんだったが、しかし顔はほころんでいた。見舞いに来てくれたことが嬉しかったのである。

「谷村さんが、なかなか復帰してくれないから心配してたんですよ。入院から自宅療養なった聞いたんで、今日はちょっと顔見に来たんすわー」

「おまえ嘘言うなよ、この間のラジオで『ひとりのほうが気楽やわ~』言うてたやろ!」

「谷村さん、それメディア用の冗談すから~。ぼく、本当に心配だったんすよ」

 谷村さんは鬱なので、冗談だとは理解しつつも、やっぱりおれ嫌われてんやないかと、ついつい疑ってしまうのだ。

「大丈夫すよ~谷村さん、ぼくが本気で心配してるっていう証明のために、今日はええもん持って来ましたから! ……谷村さん、こういうの好きでっしゃろ?」

 いやらしい笑顔を浮かべながら、谷村さんに紙袋を見せ付ける安倍。

「なんや? 差し入れかなんかか? おれ、いま甘いもんはあんま喰う気ねえへんぞ」

「またまた~谷村さんわかってるくせに~、谷村さん長い入院で溜まってる思いましたから、ぼくがとっておきのを探してきたんすよ~」

 紙袋の中から一枚のDVDを取り出す安倍。アダルトビデオであった。

「お、おまえなかなか気が利くやん」

 さっそく安倍からDVDを受け取る谷村さんだったが、パッケージに書かれたタイトルを見て絶句した。

『スーパー熟女伝説!! 山本のぶ子さん(65)脅威の潮吹きスプラッシュ!! 今夜も3回戦!!』

「ね、年金もらえるやん……。こんなわけわからんビデオに出えへんでおとなしく年金もらっとけよ」

「あれ? 谷村さん、熟女好き言うてませんでしたっけ?」

 谷村さんはテレビや雑誌などのメディアで、女の好みを訊かれた際は「包容力のある年上に甘えたいっすわー」と答えるのが常であった。

「や、まあ、おれみたいな絶倫なやつには、確かに経験豊富な 脂[あぶら]の乗った女が向いてるとは思うてるけどね」

「そうすよね! そうすよね! だからぼく、たくさん谷村さんの好きそうなの持ってきたんすよ!!」

 次々に紙袋からアダルトビデオを取り出す安倍。

『衝撃のリアルドキュメント! 38歳童貞が、実の母親で筆おろし!! 母さん、僕イっちゃう!!』

「それ、法的にアウトやろ……」

『ビーストファック!! 熟女リポーター島松トモ子がライオンと全裸の一本勝負!!』

「ライオンとか、頭噛みつかれるどころやないで~喰われるやろ!」

『JKJ48—48歳オーバーの熟女48人が集まって全裸大運動会!!』

「想像するだけで、恐ろしいわ……」


「あれ? 谷村さん、どうしました? 顔色悪いっすよ」

 谷村さんは、本当は若い女の子が好きなのである。ネタで年上好きとか言ったことを、今更ながらに後悔するのであった。

「ああ、昨日は女とやりまくったからな。疲れとるねん」

「さっすが谷村さんやわ~! 退院早々女を連れ込むとか、モテる男は違いますね! ぼくはモテへんので、仕事するしかないですけどね! 谷村さんがうらやましいですよ~」

 本当は、仕事を休んでひとりでアダルトビデオを見ていただけなのである。かつては谷村のコバンザメと言われた安倍も、いまや名司会者と評価されるようになっていた。谷村さんは、マイペースに仕事をこなしている安倍がうらやましかった。

「安倍、おまえもおれがいなくてもどうにかなるんやろ?」

 もともとは学校の後輩だった安倍である。谷村さんは相方の成長に複雑な気分なのだった。

「なに言ってんすか谷村さん! いまのぼくがあるのも谷村さんのおかげっすよ! はやく元気になって帰ってきてくださいよ~。ぼくかて、ひとりは寂しいんす。エイティーンエイトは、谷村さんとぼくの2人で成立するもんなんすから!」

「そっか、そやな。まあ、たぶんもうすぐ戻れると思うわ」

 谷村さんの目に、キラリと光るなにかがあった。安倍の言葉に感動して、思わず泣きそうになったのである。

「あれ、谷村さん? 泣いてんすか?」

「泣いてんちゃうわ! 目に虫が入っただけや!」

 そうして目を擦る振りをする谷村さんだった。

「そうすか……じゃ、ぼく今日のところはもう帰りますわ。今日のラジオで、谷村さんが元気やったって、リスナーのみんなに報告するんで、谷村さんもよかったら聴いてくださいね!」

「せんでええし、おれもそんなん聴かんからなー」

 谷村さんの、照れ隠しである。谷村さんは、いつも素直になれない人だった。

「あれ、谷村さん、そこにある封筒なんすか?」

 谷村さんが小脇に抱えている物体に気付いた安倍。

「これか? まあ、おれほどになるとエロビデオ屋が勝手に送ってくるんやわ」

「なになに『パイパン女子校生、卒業即AVデビュー』!? 谷村さん、熟女好きがこんなん見たらあきまへん! これは、ぼくが持って帰りますからね」

 安倍は、谷村さんから女子校生モノAVを奪い取り、そのまま帰っていった。

「あれ、届くのいまかいまかと待ってたやつやったのに……」

 安倍がいなくなった谷村さんの家は、すっかり静かだった。残されたのは、マニアックな熟女AVの山である。

「こんなん、誰が見るっちゅうねん。仕方ない、出会い系サイトで女子高生ナンパすっかー」

 谷村さんは、本当は女子高生が大好きなのであった。

「くそっ、せっかくええ感じの女子高生みっけたのに『エイエイの谷村さんに似てる』ってメール送ったら、それきりメール来なくなったわ~。なめてんのか!」



 そうこうしてるうちに、夜が来た。約束のラジオの時間である。

『はい!! 今日も始まりましたよ~ エイティーエイトのオールライトイッポン! 今日はぼく、実は谷村さん家に行ってきたんすわ』

「あいつ開始早々おれの話しとるわー」

 もちろん、しっかりとラジオを聴いている谷村さんであった。

『みんな知ってると思いますけど谷村さん、心病みおって、いま仕事休んどります。なかなか復帰せえへんから、皆さんも心配しとると思いますけど、結論から言うと大丈夫です! 谷村さん、全然大丈夫!』

「はっはっは、えーねー飛ばしとるわ安倍のやつ。もう、おれ来週から復帰したろうかな」

『もうホント谷村さんすごいですよ! 谷村さん家に近付いたら、なんか「オウオウ」音がするんすよ! 谷村さん、鬱やからぼく心配になりましてね、人生に悲観して、なんかやらかしてんのかと思いまして、ぼく急いで谷村さん家に飛び込みましたから! もう、それは猛ダッシュですよ! そしたら、皆さんどうなったと思います? ぼく、もう驚きましたよ! 唖然としましたね!』

「ひっぱるなー安倍は、はよオチ言えよ! おれは元気やったって」

『なんと谷村さん、真っ昼間から女とやってました! 相手はおばはんです! そこらのスーパーでネギ買ってそうな臭そうなおばはんです! おばはんが「オウオウ」喘いでたんすわ! もう、ちょっとしたホラー映画っすわ!』

「おい、ちょっと待てーな!」

 事実と違うことを平然と言ってのける安倍に、谷村さんは驚いた。

『ぼく、もう衝撃の展開になにも言えまへんでした。そしたら、谷村さんね、ぼくに気付いて満面の笑顔で言うんすよ。「どや、おまえも一緒に」ってね! ドヤ顔です! これ以上にないドヤ顔でしたよ!』

「なんやそれ! おれ完全に変態やんか!」

『ぼくも、さすがに谷村さんのレベルにまでは付いていけへんので、「いいえ結構です」と丁重にお断りして、谷村さんのお楽しみが終わるまでスタバでコーヒー飲んで待ってましたよ。いやホント、谷村さんはクレイジーですわ! はいクレイジーということで、今日の一曲目は、今年で結成20周年だかなんかですってね、TWFの『クレイジーどやクレイジー』です! TWFのボーカルならぼくでもイケます!』

「確かに45歳のわりには若いけど、おれは今度この曲をカバーするグループのちっちゃい奴のほうがええわー。女子高生やし!」

 安倍のデタラメな話に狼狽しつつも、女子高生に関しては谷村さんは譲れないものがあるのである。

「あの、ちっちゃいのは、なかなか根性があってええ! 顔もかわええし、歌もうまいし、胸もデカいしおれ好みやわー」

 期待のグループのちっちゃい女子高生は、特に谷村さんのお気に入りのようだった。

『はい、谷村さんの話の続きなんですけどね! コーヒー飲んだぼくは、また谷村さん家に戻ったんすけど、もう臭そうなおばはんはいなくなって、谷村さんくつろいでましたね。 顔つやっつやっですよ! 詳しく聞いたら、谷村さんなんと、宗教の勧誘に来たおばはんをナンパして、そのままヤってしまったそうですよ! 谷村さん、家に来るおばはんはヤリまくりやって! みなさん谷村さん、鬱病やなかった! ホントはセックス依存症だったんすよ!』

「おい待て! おれは、どっかのスーパーゴルファーかなんかか! 番組に抗議電話かけたる! なんやこれ、『お掛けになった電話番号は使われていますが、忙しいのでまた掛けてください』とか、なめてんのか!」

『凄いですよ谷村さん! 番組にリスナーの皆さんからの抗議電話がバンバン掛かってきます! 『谷村さんの嘘つき! 仕事サボってないで、はやく復活しろ!』 谷村さん、大変すわー。こりゃ、はやく復活してみなさんに弁解せえへんと』

「嘘つきは、おまえやろ! ……ん、みんなおれの復活を期待してんのか?」

 今にも怒りで暴れまくりそうな谷村さんだったが、ラジオから次々とリスナーの「谷村帰ってこい」コールが聞こえてくると、次第にその顔は穏やかになる。

「……こりゃ、来週はスタジオに行かなあかんな。安倍のホラ吹き野郎をしばいてやるわ!」

 そう言った谷村さんの笑顔は、心の底から楽しそうに見えたのだ。



『谷村さん、ぼくが差し入れたAVの『あの元有名子役井達祐実の母親、井達有里AVデビュー』をごっつ喜んでくれましてね、「これ、欲しかったんすわー」と、泣いて喜んでくれたんすよ!」

「だから嘘をつくなって!」