こんにちは。
開院して随分時間が経ったように感じますが、開院後すぐシルバーウィークに突入、10月上旬は休診期間を頂いたりで実際は1ヶ月半ほどしか経っていないはずですが。。随分長く感じます。慣れないこが多いせいかもしれません。
兵庫県の児童精神科医療に携わりはじめて感じていることは、
病院や医療機関単位ではないところで、民営の療育機関や放課後デイなどのサポートシステムが予想していた以上に存在することです。
そして、お母さん達がその情報を把握されていて、受診以前に何らかの療育に繋がっていたりすることも。
それはとても良いことと思っています。
さて、今日は自閉スペクトラム症やADHDなどの発達障害の早期発見・早期治療と支援が大切だと言われるゆえんについてお話ししたいと思います。
よく、病気は早期発見・早期治療が大切!と、言われますが、もちろんそれは多くの場合、早く病気に気づくことで酷くなる前に治療できるので予後が良い、という意味ですが、
発達障害に関しては少し意味合いが異なります。
発達障害というのは脳の機能障害ですから、治す、治癒するという概念はあまり馴染みません。
多くは、うまく特性と折り合っていくことが治療目標となります。
ではなぜ、早期発見・早期支援が推奨されるのでしょうか?
(早期療育の成果ははずせない理由のひとつと思いますが、)
まず、早期発見は、発見したり診断することにその目的があるわけでないと感じています。
それに繋がる次のステップがとても大切なのです。
当院では発達に偏りなどの問題(や発達障害)があるかもしれないと判断したお子さんに対し、診断の補助として発達検査を行います。検査からはその子の認知機能に関する様々な情報が得られます。
その子の得意なこと、不得意なこと、特性などなど。(発達検査についてはまた後日ブログの記事にしたいと思います)
診断とともにこれらの検査結果をお母さんに説明しますと、お母さん達の多くが、「この子のことをもっとよく知りたいと思っていました。まず知ることって本当に大切ですね。」と言われます。
発達特性を知ることで、やっとスタートを切ることができ、次に進むことができます。
そして、その障害や特性について知識を得たり、適切なかかわり方を学ぶことができます。
通院しながら、ペアレントトレーニングや応用行動分析学(ABA)的なかかわり方などを学んでいただくこともあります。
奈良教育大学特別支援教育研究センター 教授の岩坂英巳先生は、ご著書で、
「治療や支援のスタートは車のナビゲーションに似ている。まず、現在位置をしっかり把握してから目的地設定をすることが大切。現在地が誤まって認識されていたら、目的地には到着できません」と、言われています。
ナビゲショーンで現在地設定を正確に行う作業というのは、まさしくその子の発達特性を正しく知ることにあたるわけです。
知ることで、周囲の人達の子どもへのかかわり方や対応が変化するきっかけとなります。
つまり、「どうして?」「なぜ?」といった周囲の人達と子どもとのつかみどころのなかった関係性が、理解することができたり、多少の具体性をもってじっくりとかかわることができるようになるわけです。
例えば、
同じことをしていることを、途中でやめさせられると癇癪を起こす子がいます。
自閉スペクトラム症の子ではよく見られる「こだわり」という症状ですが、
それがその特性から生じているということがわかっていれば、
意識をこちらに向けて、静かに、具体的に指示をだす とか。
視覚的に興味のひきそうな別のおもちゃを見せて別の遊びに誘う とか。
また、そのこだわりが危険を伴いすぐにやめさせないといけないものでない場合は時には思い存分こだわりを続けさせてあげる ということもひとつです。
その子の特性を知らないがゆえに、まじめで一生懸命な親御さんほど、自分のしつけ不足や甘やかしのせいにしてしまい、ますます叱って激しい癇癪を助長してしまい逆効果ということも多々あります。
そうするとお母さんも疲弊してしまい、子どもとの関係に悪循環が生まれてしまいます。
そういった悪循環を作らないためにも、その子の特性や適切なかかわり方、対応の仕方を知っておくことは大切なのです。
さらに、発達障害の早期介入にはもうひとつの重要な意義があります。
次回つづきをお話したいと思います。
ひびきこころのクリニック