安室奈美恵さん
振付ダンスサークル
MASQ
2020年6月、ジャーマネ感謝祭。
2018年6月、TOMOYO MASQマネージャー就任。
***
ともよちゃんと初めて出会ったのは2年前の2016年8月、ROCK STEADY。
MASQがオフィシャルオープンしてまだ半年。
今は66曲踊れるMASQがまだ10曲にも満たない頃。
ある日、1件のお申込みメッセージ。
「MASQ様 初めまして。フルネームともよと申します。8月のレッスンに申込させて頂きたくご連絡しました。
よろしくお願いいたします。」
はじめましてのメッセージで感じたこと。
それは、「安心感」
・挨拶ができて良識のある30代の社会人
・コミュニケーションがスムーズに取れそう
・仲間ともうまくやっていけそう
・人が良さそう
・信頼できそう
・協調性がありそう
たった1通のメッセージからでもなんとなくの人柄はキャッチ。
***
当日。
指定のルームに入室してきたともよちゃんはおっかなびっくりのド緊張で、
「おはようございまーす・・・よろしくおねがいしまーす・・・」
と、今にも消えそうな声と無表情で、中腰で壁伝いに入ってきたあの姿は今でも覚えている。
「おはようございます!よろしくお願いします!」
っていうタイプではないのは分かってたけど、
思ってた以上に緊張してしまうタイプなんだな、とわかったのであまり距離を詰めすぎず、様子見することに。
レッスン序盤ではやっぱり緊張感があったけど、中盤に差し掛かったあたりから
「楽しい!!」
と叫び始め、
後半には
「すごい楽しい!!」
「楽しすぎる!!!!!」
を連呼。
さらにレッスン後はコーラとハイボールで乾杯して、
動画を見返してたら「キャーーーー!!!!!」とエキサイティング。
スイッチオンでチェンジタイプ。
***
レッスンの休憩中、ともよちゃんはコンビニに出かけた。
「すいません、チョコ買ってきてもいいですか?」
「もちろんどうぞ!」
そんな気持ちで送り出したけどスケジュールがずれそうだったから
「(どこで15分巻こうかなー)」
と考えていた。
「〇時までにここまで終わらせる!」
まだオープンして間もないMASQはすべてが手探り。
時間配分をミスらないようにスケジュールは分単位で組んでいた。
これが後にすごい形で返ってくる。
***
個人的には「休憩」をあまり知らない。
初めてダンスに触れたのは高校の部活だったんだけど、スーパー体育会系に入部しちゃったもんで、コーチや先輩から
「休憩!」
の声がかかるまで休憩はない。
しかも、休憩だからと言って腰を下ろすこともない。
ダッシュで水分補給をしてダッシュで戻ってくるだけの休憩しか経験したことがなかった。
ダンススクールとかワークショップでも休憩中にお出かけしたりおやつを食べたりっていう経験もなかった。
だから私にとっては、しっかりと時間を取って休憩することがすごく新しい感覚だった。
だからこそ、
「きっと何か理由があるんだろうな」
と感じていた。
「なんかチョコが食べたいんでコンビニいってきまーす」
というニュアンスではないことぐらい分かるし、
「コンビニ行ってきていいですか?」
っていう聞き方でもなかった。
「チョコ買ってきていいですか?」
これは必ずチョコを買うと決めていなきゃ出てこないセリフ。
そこで、コミュニケーションの糸口として、
「チョコすきなのー?」
って聞いてみたら思いもよらない答えが返ってきた。
「振付を覚えるのに頭と体を使うので糖分を補給するとちょっと回復するんです~」
アメイズィング!!
振付を頭で覚える人がいるんだ!!
そんなに疲れているのか!!
チョコで回復するんだ!!
そうなのか!!!!!!
これがきっかけでスタジオレッスンではおやつタイムが導入された。
***
そんな4年前、MASQ1周年記念の場で
「いつかステージを創ることが夢なんだよね」
と語ったところ、その場の盛り上がりと勢いでMASQ LIVE開催が決定。
個人的には準備期間にせめて1年は必要という意見だったけど、半年後に決まった。
それならもう今からやるしかないぞモードに急変。
大会の出場経験があったから、本番を迎えるまでのことはある程度想定できた。
思ってる以上に過酷になるはずだから出演は強制しません、出演するなら覚悟して欲しい、かなり厳しいことも言う、やるかやらないか自己責任で決めてくださいとお願いして、出演メンバーが決定。
本番に向けてできることを精一杯やってきたつもりではいたけど、性格、経験、熱意、意識、思考がそれぞれ違うメンバーを1つにまとめるには未熟すぎた。
本番1ヶ月をきって、出演メンバーの人数が変更。
何日もかけてつくった17曲のフォーメーションは白紙、覚え直し。
スケジュールはめちゃくちゃで、毎日2時間寝れたらいい方。
それでも、やってもやっても理想のスピードではこなすことができないでいた。
それを見かねたともよちゃんが声をかけてくれた。
「やれることはこっちでやるから言ってね!せりちゃんにしかできないことをやって!」
この言葉はほとんど毎日かけてくれていたけど、そのたびに
「大丈夫、お願いすることがあったら言うね!」
と伝えていた。
みんなは新しいフォーメーションを覚え直す、練習するだけでも大変なのがわかっていたし、責任は自分にあるからメンバーには負荷をかけられない。
全部自分で抱えることが迷惑をかけないことだと思っていた。
本番2週間前。
「もう全部出して!今抱えてるタスクをとにかく1回全部こっちに投げて!!じゃないと何が残っていて、どれぐらい時間がかかって、どれぐらい大変なのかなにもわからない!もう時間はないんだよ!気持ちはわかるけど、全部出して!!こっちでやるから!せりちゃんはプロデューサーなんだから、せりちゃんにしかできないことだけをやって、お願い!」
ハッとした。
「そっか、ほんとに渡したほうがいいんだな・・・」
これだけ伝えてくれたその気持ちをムダにしないためにも、ステージのためにも意を決してこれまで溜め込んでいた課題を本当に1つ残らず手渡した。
ありがとうございます
お願いします
としか言えなかった。
課題を引き受けてくれた後のともよちゃんの仕事スピードと仕上げ方はプロだった。
こんなことがあってのMASQ初LIVE。
みんなのおかげで夢が形になって、かけがえのない経験と想い出は手に入れることができたけど、いろんな理由からステージはもう二度とやらないと決めた。
だけど、その2ヶ月後、安室奈美恵さん引退発表。
お知らせをくれたのはMASQをつくるきっかけになった高校の同級生から。
そして次に連絡をくれたのはともよちゃんだった。
「せりちゃん大丈夫?私にできることがあればなんでも言ってね。私はせりちゃんについていくよ。信じてる。」
この数分後、LIVE会場の店長からも連絡が入った。
「せりさん大丈夫?俺にできることがあれば手伝うよ。ステージ空いてたら練習で使っていいよ」
引退発表の1時間後、最後のステージを決意。
本当にこれが最後、あと1度だけ。
MASQ LIVE STYLE 2018
初回ミーティングは引退発表の翌月。
その翌日にはアイディア、課題、対策を長文でまとめて連絡をくれたともよちゃん。
誰よりもMASQに時間と愛情を注いでくれている行動、言動をずっと見てきたから、
「ステージプロジェクトにおいて何かしらの役職名を付けてあげたいな」
と思って、私からオファーを出した。
「ともよちゃんはもうマネージャーのようだよ」
「ともよちゃんにはぜひマネージャーの肩書を持ってもらいたいと思ってるよ」
「マネージャーはともよちゃんにしかできないよ、それぐらいのことをやってくれてるよ」
そうは言っても、役職が付くということは責任がずっしりとのしかかって、その責任を果たさなければならないプレッシャーも一緒に付いてくる。
だからこそ役職を担うかどうかはメンバー全員に委ねていた。
オファーを出し始めたときは、
「いやいや!私なんかがそんな!めっそうもない!」
って謙遜してたけど、すべてのスケジュールを逆算で決めて、Damageの振り入れとパフォーマンス練習をしていた2018年6月のある日。
「すべての責任を私たちが背負いますという覚悟でステージに上がってください」
「安室奈美恵さんの引退で傷を負ってしまった方やこれまでに負ってきたいろんな傷を全身で受け止めるつもりで『Damage』をパフォーマンスしてください」
「ほんとは歌詞も心も『I can't heal this damage』だけど、引退後もMASQには安室奈美恵さんの振付ダンスを踊れる場所を提供できるから『MASQ can heal this damage』という気持ちでおねがいします」
とかなり重みのあるメッセージを伝えてレッスンした。
そしてこのレッスンの休憩中、コンビニから戻ってきたともよちゃんが小さく体育座りをして、静かに話し始めたあの姿もよく覚えている。
「あのね、
MASQ LIVE 2017から今日まで私なりにいろんなことを1年やってみて、
今の私ならマネージャーとして認めてもらえるかなと自信が付いたから、
今、マネージャーに立候補したいです」
「・・・・・ありがとう・・・よろしくお願いします。」
ただ感謝の気持ちを伝えるだけで精一杯だった。
2018年6月、ともよちゃんマネージャー就任。
初めて会った2016年から「ともよちゃんてすごいな」と思ってたけど、2018年にマネージャーという肩書きがついてからは「ともよちゃんてやばいな」になった。
やばいなのエピソードは伝えきれないほどあるけど、1つだけ明確に伝えられるとしたら、これかな。
「〇時までにここまで終わらせる!」
MASQ LIVE STYLEのタイムスケジュールは、時間配分をミスらないようにスケジュールを秒単位で組んでいた。
だけど、リハが始まった頃には15分おしていた。
「(どこで15分巻こうかなー)」
そう考えながら前を見たまま踊っていると、フォーメーション移動で私の隣にきたともよちゃんが前を見たまま、踊ったまま、こう言った。
「どこで巻こうね?」
***
2020年6月。
ともよちゃんがマネージャーになってくれてから2年。
「踊りたい曲、1曲プレゼント!」
ジャーマネ感謝祭。
絞っても絞り切れない中から最終的にAliveに決定。
感謝祭当日は不思議なことが起きた。
予約証明書にも記載があったけど、なぜか予約されていなかった。
MASQをオープンする前から使っているスタジオでもうかれこれ7年ぐらいになるけど、予約されていなかったのはこれが初めてのこと。
長年お世話になってるだけあっていつも優しい対応をしてくれる店長さんがこのときも気を利かせて空いてるルームを繋ぎ合わせてすぐに手配してくれた。
ありがたく使わせてもらった。
1ルームで6時間はもう空きがなかったから4ルームを数時間おきに移動して使うことになった。
A 2時間
B 1時間
C 1時間
D 2時間
これで6時間。
今回はたまたまジャーマネ感謝祭でともよちゃんと2人のレッスンだからよかったけど、初参加さんもいるレッスンだったらトラブルだったから今日っていうことが奇跡的。
7年もいてピンポイントで今日って、すごい。
最初に使うAルームは、ともよちゃんと初めて会った2016年8月にROCK STEADYで踊ったルーム。
そして、実はAとDは同じルーム。
つまり、初めて出会った場所で始まり、初めて出会った場所で感謝祭レッスンを終えるという日になった。
そういう巡り合わせの日だったのかもしれない。
いつも音源をつなげてシャッフルで曲を流すけど、こんなことが起きたのではROCK STEADYを最初に流す以外の選択肢がない。
いつものようにストレッチして、レッスンスタート。
マンツーマンでレッスンは久しぶり。
MASQ LIVEをやりきって燃え尽きた2018年だったから、2019年からはマイペースに活動しようかなと考えていて、頻繁な告知もしなかったことで参加メンバーが誰もいない「0人レッスン」っていう日があってそのとき以来だから1年振り。
ともよちゃんは初参加のときから振り覚えが早いタイプだったけど、MASQに4年もいるもんだからさらに振り取りのスピードがアップしてた。
スタジオレッスンではみんなのちょうどいいペースで進めてるけど、マンツーマンレッスンではともよちゃんペースで振り入れ完了。
ここからはともよちゃんが自ら気が付いたところの振り直し。
基本的にダンスは本人が楽しいと感じることが大切だからあんまり細かいことは押し付けてまでは伝えないけど、ともよちゃんの場合は振り覚えも早い、リズムにも遅れないで踊れる、細かいステップも入れられるタイプだからフォームをすこし整えるだけで見違えるほど良くなる。
私も基礎はまだまだ足りてないけど、私にできることであればアドバイスをさせてもらっている。
1曲を通しで踊れるようになったころ、なにかを感じた。
「1人で踊ってみる?」
「うん、なんで分かったの」
そんな気がしたのよ。
Myカウントなし、隣にもいないっていう状態で踊ったともよちゃんはワーキャー言いながら楽しそうに、一生懸命踊ってた。
こういう熱心な姿ってほんとに輝いてるんだよね。
***
最後に、最初にいた4年前のルームに帰ってきた。
過去にレッスンしたHigherのプチ復習もやって、Aliveをガンガン踊って、ジャーマネ感謝祭フィニッシュ!
あの日と同じようにハイボールとコーラをおかわりして回想話に花を咲かせた。
ともよちゃん、2年間マネージャーに尽力してくれてありがとう。
4年間MASQにいてくれてありがとう。
これからもよろしくおねがいします。
***
この記事は誰よりも先にともよちゃんに伝えたかったのと、ともよちゃん的にこの内容で公開していいかの判断をしてもらいたくて1番に読んでもらった。
お返しの言葉は宝物。
その中でも、ともよちゃんがマネージャーになることを決心した瞬間の言葉をもらえたからそのままともよちゃん本人の言葉でMASQの歴史に刻むことにします。
*****
最初にマネージャーのオファーをもらったときは、
『自分はこのパフォーマンス、この貢献の仕方を、ずっと続けていけるのか?』
が、まだ見えなかった。
色々考えて、真剣に本心で言ってくれてるのは分かってたからいい加減に軽い気持ちで安請け合いできなかった。
そのあとは、ずっと片時も頭から離れなかったほどではなかったけど、折に触れて思い出して、自問自答していたんだよ。
でもなかなか決心がつかずに、たまにその話を振られても、
「うーん・・・」
みたいな曖昧な返事しかできずにいたよね。
だけど、これだけは明確に覚えてる。
Damageの振り写しをしてもらってるときに、フォーメーションから演出から、MASQ LIVE STYLE 2017の苦労の歴史とせりちゃんからの激アツな想いが込められていることを知って、もう心のお返しをせずにはいられなかった。
休憩の合間にコンビニに親子丼を買いに行って、ぼーっとレジに並んでるときにふっと迷いが消えて。
「あ。マネージャーをやらせてもらおう」
って腹が決まった。
スタジオ戻ってからは、なんだかちょっとくすぐったくてもじもじ伝えたと思う笑
でもあのときの光景、リアクション、せりちゃんの「ありがとう」は目に焼き付いてビジュアルで覚えてる。
やばい思い出し泣きしてきた笑
とにかくね、こんな細かい話までは全然載せなくていいんだけど、
最初に種まきをしてくれたのはせりちゃんだったってこと。
それが少しずつ少しずつ育って時間差で実を結んだんだってことを残して欲しいなと。
たぶんそれがなかったら今の私はないから。
マネージャーもやってないよ。
さすがに誰にも何も言われてないのにしゃしゃり出ないよ爆
「どこで巻こうね?」
うっすらしか覚えてないけど印象に残ったんだねー!
私は普段は分単位のスケジュール立てるとか絶対無理なんだけど、せりちゃんのおかげで時間の重要性、ステージリハの貴重さが理解できたから自然に頭がまわったのかな。
せりちゃんから学んだことはほんとにたくさんあるよ。
こちらこその大感謝だよ。
ほんとにありがとう。
***
ありがとうともよちゃん。
これからもよろしくおねがいします。