今日は前置き無しで、さっさと1898年(明治31年)11月16日付『機密第50号』の続きを見ていきましょう。

猶又本官は、天長節祝賀の答礼に托し、帰路仏・英・米等の各公使を訪ひ本件に関する意見を叩き候処、仏公使は寧ろ協会に同情を表する者の如くなるも、概して冷淡にして、今回事件を重大視せざるに似たり。
米公使に至っては、其国人と該協会間には、最初より密接の関係存することとて、内心同情を寄すること勿論に有之候。
将又、英公使は突然趙・閔2氏の入閣したるを見、曾て露使スペーエルが右の両人を使ひ、激しくブラオン退治を行ひたる時代を回想し、且つ閔種黙が去る5日の夜、外部の官印を宮中に持行き、露公使と秘密条約を結べりとか、専有的礦山採掘特許条約に調印せりとか云ふ風説に駆られ、頗る不安の模様に相見候。(閔外部が官印を宮中に持行きたる事に関し、其後探聞する所に依れば、右は協会鎮圧の為め兵力を用ふべしとの通知を各国使臣に送らん為めにして、露公使との関係云々は事実無根なりし者の如し。)
英公使の談話中、其通辯人をして外部大臣に伝へしめて曰く、韓政府にして若し兵力を用ひて協会員の解散を強制するが如きあらば、之れが為めに城内一塲の騒擾を惹起す恐れあるに付、在留英国人の生命財産を保護するの為め、必要の設備なかるべからざるを以て、果して韓政府にして兵力鎮圧の挙に出でんとするには、先づ其2、3日前、予め通知せられたしと申込みたる旨吹聴致候。
是れ、盖し独立協会の為め、暗に牽制手段を執りたるものと推測せられ候。
そういえば、ロシア以外の国の反応って、あまり報告無かったような。
フランス公使は、独立協会側に同情的だが、概して冷淡であり、今回の事件も重要視していないようだ、と。
アメリカは、8月6日のエントリーで、独立協会会長の尹致昊が逮捕事件の際にアメリカ公使館に逃げ込んだように、密接な関係があるため勿論独立協会同情派。
イギリス公使は、趙秉式や閔種黙が突然入閣したのを見て、度支部顧問からブラオンを解任しアレキセーエフを就けようとした丁度1年前の一件を思い出し、風説にも惑わされて大変不安そうだ、と。

要するに、仏・米・英は立場的に、どちらかと言えば独立協会側なんですね。

抑も今回事件の発端に関しては、其曲政府に存すると、趙秉式、閔種黙等の如き最も有名なる奸悪が突然出でて権力を握りたる等の事情は、大に内外一般の人心を騒擾し、今や輿論は全く独立協会に向って同情を傾注しつつある姿なりし。
此時に当り、本官の地位に立って観察を下すときは先づ、皇帝は独立協会を嫉視せらるること蛇蝎の如くにして、従来我に昵近せば、有力輩に至っても亦た同様の感情を抱くこと明なり。
然るに、一方を顧れば韓廷の腐敗は日一日と前進し、何時か之を改革するの機なくんば、国家の滅亡決して久しきを待たざるべき有様なれば、協会の挙動往々穏かならざるものあるも、其唱道する所、正義に合するもの少なからず。
之を、韓廷に対する防腐剤として見るときは、其効決して没す可からざるものありて、今一挙にして之を剿絶せしめんこと遺憾なき能はず。
加之ならず、趙・閔等奸輩にして一旦其目的を遂げ万歳を称するに至らば、事局収まるの後に於ても、尚ほ永く其権力を弄するや必せり。
果して然らば、其我に不利なること云ふを要せざるなり。
事情右の如くなるを以て、本官は一方に於ては表面上独立協会に対し、■々無関係の態度を装ひ帝及其他の嫌疑を避けつつ、一方に於ては竊に趙・閔の輩を排擠し、且つ協会の厄運を救ふを得策と考へ、前陳露館よりの帰路各使臣を訪問したるに際し、深く協会に同情を有する者と認めたる英・米2公使に向っては、本官が露公使と談話したる事につき1、2を語り、該公使が這回の事件に何等直接の関係ありや否やは、素より断言の限りに非らざるも、其抱く処の意見は、正しく韓廷今番の処置と附合する者なり。
又、趙・閔等所謂奉露派の棟梁が、遽に出で其衝に当るを見ても、此間に多少の消息あるを察せざる可からず。
果して然らば、此際韓廷の行為を牽制せんとせば、先づ露公使を抑へ、彼をして単独の運動を為さしめざること緊要にあらずや云々と縷々陳弁したる次第に有之候。
如此にして、本館英館を退きたる後、間もなく別紙回文にも見る如く、英・米2公使、露公使を訪問して稍詰問的談話を試み、該公使をして遂に民衆の鎮圧に兵力を用ゆるは、不可なりとの意見に同意せしめたる由に有之候。
そもそも今回の事件は、政府が駄目駄目なのと、趙秉式や閔種黙といった最も有名な奸悪が突然権力の座についたため、内外一般の人心を乱して、当然世論は独立協会の方へ傾きつつある、と。
趙秉式と閔種黙、かなり悪評紛々だったようで。

そのような情勢を日置の立場で見た場合、高宗は独立協会を嫉妬と恨みで激しく嫌っており、有力者も同様の感情であることは明白だ、と。
自分より人気があり、且つ既得権を侵されそうなわけですから、当然と言えば当然の感情ですな。

しかし、一方では韓国政府の腐敗は日一日と進んでいくわけで、どこかで改革しなければ遠からず滅亡するような有様なので、独立協会のやり口は不穏当な場合も多いけれど、言ってる内容は正しい事も少なくない。

で、腐敗には防腐剤。(笑)

韓国の宮廷の防腐剤と考えれば、その効を埋もれさせるのは勿体ない、と。
しかも、趙秉式や閔種黙が主流派になれば、事件が収まった後でも長く権力をもてあそぶに決まっており、そうなれば、日本には当然不利。
ってことで、日置は表面上は独立協会と無関係を装って、高宗などの疑いを避けながら、一方で趙秉式や閔種黙を陥れて独立協会を不運から救うことが得策だろうと考え、ロシア公使館帰りにイギリス・アメリカ両国の公使に会って、ロシア公使と話たことを少し暴露。
恐らくは、前回の政党排斥説の話と、独立協会の解散への同意辺りの話でしょうねぇ。

で、ロシア公使が今回の事件に絡んでいるかどうかは別にして、言ってる事は韓国政府のやってる事と同じだし、趙秉式や閔種黙が表に出てるし、大体分かるよねぇ?(・∀・)ニヤニヤと。(笑)
ということで、もし韓廷の行いを牽制するなら、ロシア公使の動きを掣肘すれば良いんじゃないかなぁ~。(・∀・)ニヤニヤ
すると、日置の思惑通り、イギリス・アメリカ両国公使は、ロシア公使に民衆の鎮圧に兵力を使うのは駄目だという意見に同意させるに至った、と。

去る6日の夜、本官英館より帰るや否や、軍部署理大臣兪箕煥来訪の上、這回の事件に関する顛末を詳述し、且つ如何なる場合に臨むも、政府は断じて兵力鎮圧の挙に出でざるべき旨、本官に向って担保を与へ候に付、不取敢其趣英公使に私信を以て通知致候処、之と行違ひ、同公使も亦た外部大臣より同様の担保を与へられたる旨内報に接し候。
本官は、兪氏来訪の機械を利用し、這回韓政府が独立協会に対する処置振りは、極めて不穏当にして、一見独立協会を出し脱きたる形跡あるは頗る遺憾なり。
斯くては、何人も韓政府に同情を表する能はざるのみならず、寧ろ独立協会を庇護せしむるに至れり。
是れ、韓政府の為め深く惜まざるを得ず、宜しく之れが善後策として17名の会員を放免し、且つ衆怨を解き、人心をして其堵に安んぜしめ、是と同時に政府大臣には、年少有為の人材を登用し、鞏固なる内閣を組織し、秕政を釐革する等、着々之れが実行を期せられたし。
苟も、内外人の共に嫉視排斥する所の趙秉式、閔種黙如き人物を採用するが如きは、国政改良を目的とする所以にあらざる旨を勧告致候処、同氏も大に了解する所あり、入って内閣員閔泳綺等と篤と商議し、力めて事局を穏便に落着せしむるの手段を講ずべしとて辞し去れり。
而して本官は猶、人を介して同一の勧告を閔泳綺に与へたるに、同氏も亦た快く之を容れ、此に趙秉式、閔種黙、李基東の一派に反対する閔泳綺、閔丙奭、閔泳煥、韓圭卨(咼の上にト)の一派、稍頭角を顕はすに至れり。
6日の夜、イギリス公使館から帰るやいなや、軍部大臣署理の兪箕煥が来て、今回の事件の顛末を詳述し、どういう場合に臨んでも政府は断じて兵力で鎮圧するような事はしないと担保する。
この担保は、イギリス公使にもほぼ同時に伝えられていた、と。

ついでに日置は、この機会に兪に向かって勧告するわけです。

韓国政府のやり方、不穏当、不誠実で実にマズイっしょ。
そのせいで、みんな独立協会に同情するどころか、独立協会を擁護するようになっちゃってんじゃんよ。
韓国政府がこんな風に思われてるのは、非常に残念だよね。
もし挽回するなら、逮捕した17人を放免して独立協会の怨みを解いて安心させ、同時に大臣には少壮有為の人材を登用して強い政府を作り、秕政を改革するとか,しなさいよ。
みんなが非常に嫌ってる趙秉式や閔種黙を登用するようじゃ、全然駄目、と。

これを聞いた兪箕煥は、大いに了承して、これから閔泳綺などと話し合って、時局を穏便に収める手段を講じてみますと述べて、帰って行く。
今回の事件、既に民衆も加わってる状態なので、それを収めるためにはかなり妥当な勧告ではありますね。

更に日置は、閔泳綺にも別途同一の勧告をすると、閔泳綺も快くその勧告を受け取った、と。
ということで、この時期の韓国政府には、趙秉式、閔種黙、李基東の一派に反対する、閔丙奭、閔泳煥、韓圭卨(咼の上にト)の一派が頭角を現し始めて来たんですね。
尤も、直ぐに褓負商と万民共同会の過激な一派のせいで、直ぐに無政府状態にはなりますけど♪(笑)


今日はこれまで。



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