前回のショックが尾を引いてますので、今日も簡単に・・・。
今日は、山縣=ロバノフ協定。
アジア歴史資料センター、『独露ノ膠州湾及旅順口租借問題並ニ韓国保全ニ関スル日露協定摘要/2 韓国問題ニ関スル日露両国間協商一件 1(レファレンスコード:B03041182100)』から。

茲に又、同年3月山縣陸軍大将の特命全権大使として、露国皇帝戴冠式に参会するを機とし、同大使をして親しく露国政府の当局者と会同し、韓国問題に関し彼我の意見を交換し、日露両国間協商を遂げしむることに廟議一決し、西園寺前外務大臣より閣議を経て同大使へ訓令する所ありたるを以て、同大使は、此訓令を帯び露都莫斯科に至り、戴冠式に係る諸式挙行中露国前任外務大臣「ロバノフ」と会見し、種々論議の末同年6月9日協議全く整ひ、左の議定書に双方記名調印を了せり。


議定書

日本国皇帝陛下の特命全権大使、陸軍大将山縣侯爵及露西亜国外務大臣「ル・スクレテール・プランス・ロバノフ・ロストウスキー」は、朝鮮国の形勢に関し其の意見を交換し、左の諸條を協議決定せり。

第1条
日露両国政府は、朝鮮国の財政困難を救済するの目的を持って、朝鮮国政府に向て一切の冗費を省き、且其の歳出入の平衡を保つことを勧告すべし。
若し、万止を得ざるものと認めたる改革の結果として、外債を仰ぐこと必要となるに到れば、両国政府は其の合意を以て朝鮮国に対し其の援助を与ふべし。

第2条
日露両国政府は、朝鮮国財政上及経済上の状況の許す限りは、外援に藉らずして内国の秩序を保つに至るべき、内国人を以て組織せる軍隊及警察を創設し、且つ之を維持することを朝鮮国に一任することとすべし。

第3条
朝鮮国との通信を容易ならしむる為め、日本国政府は其の現に占有する所の電信線を引続き管理すべし。
露国は、京城より其の国境に至る電信線を架設するの権利を留保す。
右諸電信線は、朝鮮国政府に於て之を買収すべき手段附き次第、之を買収することを得るものとす。

第4条
前記の原則にして、尚ほ一層精確且つ詳細の定義を要するか、又は後日に至り商議を要すべき他の事項生じたるときは、両国政府の代表者は、友誼的に之を妥協することを委任せらるべし。


秘密條款

第1条
原因の内外たるを問はず、若し朝鮮国の安寧秩序乱れ、若くは将に乱れんとするの危懼ありて、而して若し日露両国政府に於て両国臣民の安寧を保護し、及電信線を維持するの任務を有する軍隊の外、其の合意を以て更に軍隊を派遣し、内国官憲を援助するを必要と認めたるときは、両帝国政府は其の軍隊間に総ての衝突を予防する為め、両国政府の軍隊の間に全く占領せざる空地を存する様、各軍隊の用兵地域を確定すべし。

第2条
朝鮮国に於て、本議定書の公開條款第2条に掲ぐる内国人の軍隊を組織するに至る迄は、朝鮮国に於て日露両国同数の軍隊を置くことの権利に関し、小村氏と「ル・コンセイエー・デター・アクチュエル・ド・ウエバー」氏の記名したる仮取決は、其の効力を有すべし。
朝鮮国大君主の護身上に関し、現に存在する状態も、亦特に此の任務を有する内国人を以て組織せる一隊創設せらるるに至る迄は、均しく之を継続すべし。


3月4日のエントリー等を見ても、ロシアに行く以前から韓国問題に関する話し合いは行われる予定だったわけで。

で、第1条は最大の難問である財政再建の話。
これは日清戦争前からの課題ですからねぇ・・・。
つうか、4月6日のエントリーとかで話になった300万円の恵与の話とか、政変につぐ政変が無ければ、どうなってたんだろうなぁ・・・。

2条は軍事面に関して。
外国からの軍事的援助っつうのは、日清戦争に限らず壬午事変や甲申事変等、半島騒乱の原因ともなっていたわけで、まぁ、他国に頼らない独自の軍事力と警察力を持たせる、と。

3条が電信線。
ここで、日本が占有する電信線について、日露両国の合意が得られていたのね。
で、代わりにロシアは京城からロシア国境、恐らくウラジオストック辺りになるのだろうけど、電信線の架設の権利を留保、と。
ただ、朝鮮政府が買い戻しの準備ができ次第、買収できるんですね。

4条は、その他何かあった場合に、友好的に妥協しよう、と。

で、秘密條款が2つ。
1つめは、これまた日露の衝突回避の為の条文ですね。
2つめが、小村=ウェーバー協定の効力確認。

つうか、別に秘密にする必要も無いような・・・。(笑)