名前:ルラ
 
海軍と海賊の親を持つ。
母が女性海軍であり、少将であったがルラを身籠ったと同時に姿を消した。
その一方で、海賊ロジャーの船にいた父も、忽然と姿を消した。
 
そして、ルラが生まれるまでひっそりと、両親は旅を続けた。
海賊をつぶしたこともあるし、海軍をつぶしたこともあるしで、自由きままな旅であった。人が助けを求めれば、人を助け、困っている人がいれば助ける。
 
お互いに自身が海賊であろうと、海軍であろうとそんなのは関係なかった。
幸せだったのだ。
 
そして、ルラが生まれ…両親はある一つの島に滞在を決めた。
ルラには様々な知識が教え込まれた。それは戦いであったり、航海術であったり、治療の心得であったり、本当に様々なことであった。海賊の決まり、海軍の決まり…ルラにはそのどちらも教え込まれた。
 
そして、ルラはそのどちらも、拒むことはなかった。
 
「ルラの正義心、戦闘スキルは最高、だからこそ海軍になるのよ!…ねー!」
「何をいっているんだか、ルラの航海術といい、戦闘能力といい、海賊にもってこいだ!…なー!」
「……母様、父様」
「「なに/なんだ」」
「私は、二人が仲良くしていただければ…どちらでも、構いません」
 
困ったように笑みを浮かべる娘に二人はにっこりと笑みを浮かべた。
 
「「流石はうちのこ!!!」」
 
 
がっしりと二人に抱きかかえられ、ルラはまた一段と困った顔をしたが…それでも嬉しそうに笑みを浮かべた。
 
 
 
 
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両親はドフラミンゴが父親を殺した場面に居合わせており、ロシナンテとドフラミンゴを助けた。一時的ではあったが、両親はどちらにも面識あり。
 
ロシナンテとは時折、海軍でもあったため連絡をとっていた。
ルラも幼い時に面識あるが、優しい人とドジな人という記憶しかない。
 
しかし、ロシナンテが最後の最後に連絡をとったのはルラの母親。
近くにルラの母親がいることを知っており、ローを頼みたいと…それだけの用件で切れた。
 
ルラはそれを聞き、1人外に飛び出ていた。
どこに向かえばいいのかなんてわからなかったが、足は動き出していた。
 
「…助けなきゃ、助けないと…いけない?」
 
それは初めてルラが一人で誰かを助けようとした行為であった。父と母が当たり前のように人を助けている行為はみてきたし、手伝いもしたが…自分では行動しなかった。
 
大切な人が無くなる。
 
それは…どれだけ、悲しいことなのだろうか?
 
 
 
 
「…あの子、かな?」
 
しかし、まぁ…なんだろう。凄い場面だ…。
 
クマをいじめる二人組の悪ガキと、目つきの悪い男の子…が悪ガキをボコボコにしている…
 
とりあえず…
 
「喧嘩は…だめ!」
 
とりあえず、全員の(クマ)以外の頭を殴っておいた。
 
「……あれ」
 
今まで父と母と相手をしてきたゆえ、加減を間違え全員倒れたのは言うまでもなかった。
 
「か、母様ぁああああ。ごめんなさぃいいい。この子たち手当てしてあげてぇえええ」
 
 
――――――――――
 
ルラはそれからというもの、4人…正確には3人と一匹の手当てをしていた。
 
「…あ、起きた?」
 
起きた瞬間に全員が全員…飛び引いたのは言うまでもなかった。
身構えるが、申し訳なさそうに謝るルラに毒気が抜かれるのだった。
 
悪ガキ二人はすぐさま、町に戻ったが…時折、様子を見に来ているようで…よく見る。
 
男の子といえば、
 
「黙れ」
「はい、まだ!安静!」
「ぐっ…」
 
無理に動こうとするので、実力行使に出ています。
 
「ルラ。彼が怪我人であること忘れないように」
「忘れてはいません。けど…今の彼は動かない方がいいです」
「そうなのですけど…貴方がそんな風に守るとは母は思いませんでした」
「……彼は、今のままなら死にますよね。母様?」
「………なぜ、そう思うの?」
「きっと無理をして死にますよ。そんな目をしてます」
「……そう、貴女が助けたいと思ったのなら、貴女の方法で助けてみなさい」
「はい!」
 
倒れた男の子を背負い、ルラは自身のベッドに男の子を横たわせた。
 
「…顔、白い。」
 
ハクエン病。
父と母はそういっていた。
 
「うーん…」
「……お前、なんなんだよ」
「あ、起きた?」
「質問に答えろ!!!」
「何と言われても…ルラ、だけど?」
「そういうことじゃねえよ!!!」
 
鋭いツッコミを入れる男の子にルラはにこりと笑みを一つだけ浮かべた。
 
「そうだなぁ…まぁ、お節介やろーかな?」
「……」
「君はもう少し療養してほしい。何か欲しいものとか知りたいこととか、私が手に入れるから…なんでも言って、その変わり、動かずにいてほしい」
「うるせえ!俺はこんなところで!」
「お前こそ黙れ」
 
静かな一声であったが、それは効果てきめんであった。
男の子は口を噤んだ。
 
「…君が何を焦っているのかは、わからない。知らないから。でもね、君の今の状況を知れ。身体は二重の意味でボロボロだ。今、君に何が出来る?」
「……」
「動かずに療養することも大事なことだ。動かないでも出来ることは…あるでしょう?」
「………」
「何でも言っていい」
「……なら、本をくれ」
「本?」
「…俺は医者にならないといけねぇんだ。」
「そう、それなら…母が持っている書物を全部持ってこよう。他は?」
「……いらねえ」
「うん、わかった」
 
 
 
――――――
 
「これと、これと…これ。後は…」
「…どんだけあんだよ」
「いっぱいあるよ。母は知識を得ることはいいことだと言っていたから、物知りなの。技術だってある。そこいらの医者にも負けないぐらいね」
「……な、ら」
「ん?」
「なら、俺の…」
「ハクエン病のこと?知ってるよ」
 
息を呑む声に、ルラは首を傾げた。
 
「…なら、近づくな。」
「……知識を知らない奴はかわいそうだ。ハクエン病は伝染ではない、と母様は言っていた。」
「……」
「何も心配しなくていい。”ここ”は君を助ける場所だ」
「………わからねえ」
「今はわからなくていいよ」
 
笑うルラの姿が…目に焼き付く。
 
「どうだ?ルラ、あの子は?」
「全然!いうこと聞かないよ!!」
「あはっははははは」
「ふふふ、ルラったら。」
「だって、未だに名前も知らないし…」
「あら、名前なら…」
「だめ!…あの子から聞かないと意味がない!」
「……そう、頑張って」
 
 
「…ねえ、君さ…」
「…ローだ」
「ロー?」
「トラファルガー・D・ワーテル・ローだ」
「…ロー!!!」
「うわっ、抱き付くんじゃねえよ!!!」
 
 
「…なに?」
「だから、私の身体を使えばいい!」
「…馬鹿か!!死ぬかもしれないんだぞ!!」
「でも、試さなければ、君は助からないのでしょう?」
「…そんなの」
「いいから、時間がないのなら、私の身体を切って試しなさい」
「……」
「大丈夫。タフだから!!!」
 
初めて、ローが切ったのがルラ。ルームを使用し、初めて切って、初めてつなぎ合わせた。
…ハクエン病が摂りぬかれた日だった。
 
「おめでとう。」
「……なぁ、俺は海に出る」
「そう」
「…俺は復讐したい奴がいるんだ。コラさんが…引けなかった引き金を引きに行く」
「うん」
「……だから、お前も来いよ」
「……」
「お前には本当に世話になった。コラさんに負けねえくらい、世話になった」
「……」
「だから」
「行かない!」
「…な」
「いーかない!私はまだここにいる!」
「……お前、」
「まだ、海軍になるか、海賊になるか。私決めてないの、だから行かない!でも…ロー。私、貴方のこと嫌いじゃない!」
「…いつ、決まるんだよ」
「わからない。でも…そうね。海賊、になるなら、君に声をかけにいくよ。でも、海軍なら…うーん、挨拶だけいく!」
「……くっ。ははは、お前らしいな!」
「あら、酷い。笑うなんて…」
 
 
―――――――
 
ローは、あの悪ガキ二人。ペンギンとシャチ、そしてべポと海へ出た。
初めて私が救いたいと思った彼が…元気になった。
 
人を救うことがこんなに嬉しいことだと私は知った。
 
だから…決めた。
私は、海軍にも海賊にもならない。
 
困っている人がいるのなら、海賊だろうが海軍だろうが助けよう!