「ただいま。そんな顔しないで、大丈夫だよ、ジェリコ」
ユリウスと共に戻ってきたラルは身体中、傷だらけでも笑っていた。
そのまま、ユリウスに連れて行かれると思っていたが、ユリウスの方に外せない用事が出来たらしく、逃げ出さないようにとジェリコに預けられた。
そして、笑い続けるそんな姿を見ていられなくなったジェリコはラルの頭をぐしゃりと撫でた。
「痛いってば、子供じゃないだから!やめて」
「その傷より痛くねえだろ?ほら、手当てしてやるから、大人しく部屋に来い」
「!、や…やだ。ジェリコの手当、荒いもの」
ラルの反応から手当てしてもらったことがあるようだが、嫌でしょうがないようだ。
ふるふると頭を横に振って、拒絶するがジェリコがそれを許すつもりはない。
「ほら、行くぞ」
「い、いやぁあああ」
ぐいぐいと引っ張られるラルの悲痛な叫びが廊下に響いた。
――――
「っ!、っつ!」
ビクッ、とラルの身体が揺れる。
「こら、腕を引っ込めるな。」
「いっ、だって…だっ!」
「ん?液の量間違えたか?」
「馬鹿ジェリコぉおお!」
ソファの上でラルとジェリコが激闘を繰り返していた。
少しでも痛いとラルは一歩下がり、ジェリコはもう一度治療しようと一歩近づく。
そのせいか、二人はソファの端におり、ラルはもう落ちそうだった。
「ほら、落ちちまうから、こっち来い」
「嫌だって言ってる!!」
「たくっ…。そんな態度取るなら、こっちも考えがあるぜ」
「は…?ぎゃ!」
ニヤリとジェリコが笑ったと思えば、ラルの腕を思いっきり引っ張り、自分の方に倒れ込んだ瞬間、くるりと自分の場所とラルの場所を入れ替えた。
ポフッとラルの背中に柔らかな感触。
「……は、早業!?」
「よーし、続けるぞ」
「…ぎゃああああ!」
押し倒されてるとか色々と思うところがあるが、今はお互いそれどころじゃないようだ。
「ほら、暴れるなよ」
「暴れっ…いたぁああああ!」
「よし、あと少しだな」
―――――
結局、抜け出せないまま、ラルの治療は終了した。
「ま、大体は手当て出来たな。医者にもきちんと見せるんだぞ」
「……」
「ん?(やりすぎたか…って、この体制はヤバいな)」
ソファにぐったりするラル、どうやら痛すぎて気絶したようだ。
その状態で暴れないようにと、両腕を片手で頭の上で押さえつけ、足の間に片足をいれてと…これでは襲っていると間違われても文句は言えない。
「あまり、無茶するなよ…ラル」
軽くまた、頭を撫でて腕の拘束を解き、ラルの眠りの邪魔をしないようにソファの下に降り、凭れ掛かる。
「お前はまだ…―――」
ボソリと呟かれた言葉はそのまま、言葉にならないまま、消えた。
end