寒い、その一言に限る。
外の風景を見つめ、軽く前方に座っているユリウスが目に入る。
こっそりと小さな声でラルは声を掛ける。
「寒くはないですか?ユリウス様。ブランケットをお持ちしますが…?」
「必要ない、それよりお前こそ、そんな格好でここにいるな」
「あ、いえ…中身は重装備ですので」
「おい…お前たち!」
ラルとユリウスが会話をしていると第三者の声が響いた。
ハッとしたようにラルは申し訳なさげに、その第三者…ナイトメアの方を見た。
「申し訳ありません。練習中ですのに」
「酷いじゃないか!私がこんなに一生懸命にっ!」
「え、ええ。ですが、先ほどから同じフレームばかりで…ユリウス様、寒いんじゃないかと思いまして」
「なら、私にも聞け!…うっ」
「あ…」
ゲホゴホとナイトメアは血を吐き出してしまう。
ちなみに今は会議所でナイトメアの次の会合の練習中だった。
ラルとユリウスは強制参加でもちろん、グレイもいる。
「ナイトメア様!?」
「ああ、ごめん!グレイ、私のせいだ!」
ワタワタとグレイとラルが、ナイトメアの傍による。
ラルは近づいたと同時にしゃがんでナイトメアの背中を擦ってあげる。
それをグレイは何処か優しげに見つめる。
「いや…君のせいじゃない。いつも、君はナイトメア様や俺たちの手伝いをしてくれる」
「あ、あの…グレイ?私の方ばかり見てないで、夢魔を…」
「!す、すまない」
ハッとしたようにグレイもナイトメアの介抱につとめる。
ラルも引き続き、手伝おうとしたがクイッと腕を引かれ、立ち上がらせられる。
「私達はそろそろ戻る。ナイトメアがそんな状態では続けられないだろう。行くぞ、ラル」
「え、あ……はい!」
グレイとユリウスを見合い、一瞬、どうしようか悩んだラルだったが、グレイの方にペコリと頭を下げ、出て行こうとするユリウスの後ろを追う。
その後姿を少しだけ、グレイが寂しそうに眺めていた。
end