ふむ、とラルは今日のコーヒーは上手くできたと二つのコーヒーを眺めながら軽く微笑んだ。

さっさと主であるユリウスの元に持っていこうと、意気揚々とコーヒーカップを持ち上げた時だった。



「!……」



何かに感づいたように、ラルは軽くを上を見つめ、コーヒーカップをそのままあった場所に置き、急いでユリウスの方を振り向いた。



「ユリウス様!」



声をかける前から、ユリウスは時計を直す作業を止めて、上を見上げていた。

ユリウスの方もラルに呼ばれて、ラルの方に視線をずらし、口を開く。



「どうやら、やっかい事のようだ」

「様子を見に行きますか?」

「そうだな、まったく…暇ではないというのに」



重い腰をあげたユリウスはドアにまっすぐ向かう、それに少し遅れてラルも後を追う。



「しかし…展望階に、一体誰が…?」

「……」

「ユリウス様?」

「…ああ、何でもない」



何かを考えてるように見えたラルだったが、深くは聞かないことにした。




――――――



殴りたくもなるよなぁ、とラルは呑気に目の前で白ウサギに口移しで何かを飲まされる彼女を哀れんだ。

しかし、その飲まされた物にラルは首を傾げた。

あの小瓶…どこかで?


そんなことを考えていれば、隣でユリウスが歩き出したことに気付く。

急いで後を追わなければ、とラルも歩き出し、もう一度彼女の方に視線をむければ、白ウサギは消えていた。

流石はウサギ、逃げ足は速い。



「待て!白ウサギ!!」



ユリウスの声は空しく響いただけ、せめて彼女に事情を聞こうとしたが…倒れ込んでしまった。

咄嗟に距離をつめて、抱きかかえてあげるが起きそうにはない。

軽く様子を伺うために、顔を覗き込むが寝ているだけのようだ。



「ユリウ…」



どうするか、指示を聞こうとしたがピタリとラルは言葉を止めた。

その後ろ姿がふるふると震えているため、恐らくだが怒っている。

ぶつぶつと、面倒なものを…とか言っている。


どうしようかと、もう一度抱きかかえた彼女を見て、違和感を感じた。



「……?…!?余所者!?」

「!、何だと!?」



それにすぐさま、反応したのはユリウスで急いで近づき、抱きかかえる彼女を見て、舌打ちした。







end