目を覚めしたとき、彼は泣いていた。
あんなに強い彼が泣いていた。
――――――
「……ぅ、あ?」
「…ルラ、ルラ!」
ルラが目を覚ました時、ミストガンがベッドの横で涙を流していた。
この状況がつかめなくて、ルラは口を開いたが声にはならなかった。
「ルラが目を…!誰か!あれを!」
「……み、が」
「今はしゃべるな。体が硬直しているのだろう」
そっと、頬を撫でる手が温かくて、本当にここにいるのはミストガンなんだと実感した。
そこでルラは少しずつ頭が覚醒してくるのを感じていた。
「(私は…たしか、みんなを助けるために、アクノロギアを…)!!、みん…がっ」
「ルラ!…落ち着くんだ。大丈夫」
「……(ミストガン。あれ…?なんだか…雰囲気が、違う…?)」
「…それでいい。もう少し、休むんだ」
「(…ほんとう、このひとのことば……あんしん、する)」
もう一度、ルラは目を瞑る。
…目を覚ました時、ミストガンが傍にいることを願いながら。
これは一体、何が起きているのか。
「王子!脈に問題はありません。体も4年も眠り続けたとは思えないぐらい健康です…ただ血が」
「ああ。しかし、先ほど目を覚ました時は…」
「4年も動いていなかったのです。思うように体が動かせないのも仕方ないかと」
「…ふむ。む?ルラ!起きたか」
自分の体が他人に触られているのに、動けない。
遠くの方で何かを話していたミストガン…ジェラールはルラが目を覚ましたことに気付き、ルラに近づく。
「……みすと、がん」
「ああ、なんだ。ルラ」
「いったい…なにが」
「君は…4年間、眠り続けていたんだ、あの日から。…4年前、君がこの世界に落ちてきた。」
「おちっ…!?」
「恐らく、こちらであの装置を動かしたことが原因だろう。君は…傷だらけだった。しかし、不思議なことに君は…止まっていた」
「?」
「血も、息も…すべてだ、時が流れる中、君だけが止まっていたんだ。」
「…?、?」
「…誰か、鏡を」
一人のメイドが鏡をミストガンに差し出す。
そして動けないルラにミストガンがそっと鏡をルラが自信が見えるように差し出す。
「…!……!え、は?」
「4年間、君は眠っていた」
信じられなかった、鏡に映る自分の姿は何も変わらず。
ただ信じなければ、いけなかった。
だからこそ、自分の体は痛み出しているのだと…時がまた動き出したのだと。
痛みが始まりを教えてくれる。
end