懐かしい夢を見たものだ、と心の中で思った。

朝日を浴びながら、私は日課になりつつあることをする。



「味噌汁よし、ご飯も炊けたし、おかずもある…」



食卓に3つの茶碗を並べて、確認を済まして、私は隣の部屋の襖を開けた。

そして、そこにいたのは夢の中の銀髪の男で、布団を蹴飛ばしながらも熟睡していた。



「銀、起きろ。もう朝だぞ」

「…ん、もう後、五分いや、やっぱ五時かn…」

「随分とケタが飛んだぞ、アホ。いいから起きろ、次に起こさないといけない子もいるんだ。もう、いい大人なんだから起きないか」



ゆさゆさと身体を揺らすと鬱陶しそうにしながら、やっと目を開けてくれた。

視線がばっちりと会うと、あー…と小さく唸ると、頭を銀は掻いた。



「はよ…」

「おはよう。ご飯出来ているから、顔を洗って来い」

「了解~」



上半身をあげ、大きく伸びをする銀時を横目で見ながら、私は次に押入れに向かう。



「開けるよ、神楽ちゃん」



返事がないのはわかっているため、ゆっくりと開ければ、幸せそうに寝ているまだ幼い女の子がいた。

この子は銀が拾ってきた?、神楽ちゃんだ。今では家族のように見えないこともない。



「神楽ちゃん、起きて」

「…むにゃ」

「今日の朝ごはんは神楽ちゃんの好きなものを作ったよ、起きないと銀に食べられしまけど…」

「起きたネ!おはよう、悠!!」



バタバタと寝癖をつけたまま、洗面所に走っていった。

食べ物のことになると行動が早い。

押入れの布団を直しておく。



「ぐふっ!」

「邪魔ネ、銀ちゃん!」

「銀さん使ってるでしょうが!」

「温かいうちに悠のご飯、食べなくちゃいけないネ!どけるネ、天パ!!」

「ちょ、今、銀さんのハートに刺さった、深く刺さったぁああ!」



直している最中、洗面所から二人の声が聞こえた。

相変わらず、仲がいいみたいだ。



「おはようございまーす!」



そろそろ、ご飯を盛ろうとすれば、玄関からまだ若い男の声がした。

ああ、来た来た、と私は玄関に向かう。



「あ、おはようございます。悠さん!」

「おはよう、新八くん。ご飯出来てるから食べてね」

「本当ですか!?悠さんの料理は美味しいですから、楽しみです!」

「…じゃあ、私、バイトがあるから。銀たちにご飯盛ってあげて。じゃあ、また」



この男の子も今、万事屋…ああ、説明してなかった。

あの出会いから、銀は私の母、お登勢が経営しているスナックの上で何でも屋の万事屋を営んでいる。

その従業員であるのが、この新八くんと神楽ちゃんだ。


あ、そうだ。



「ワン!」

「定春のご飯も居間に置いたよ、食べておいで」

「ワン!!」



玄関のところで寝ていたペットの定春にも声をかけ、今度こそ悠は玄関の扉を開けた。



「おい、悠。飯」



扉を閉めようとしたのだが、誰かの手が伸びてきて止められた。

まぁ、誰かはわかっているのだが…



「…置いておいたと思うんだが?」

「俺達のことじゃねえよ、お前だお前」

「?、何が」

「どうせ、またお前食ってねえんだろ。食べてけ」

「……私は食べたからいらない」



本当は食べていない。

だけど、どうにも食欲が起きないのだ、昔からだし、今では倒れたりすることもない。


閉めないまま、出ても問題ないだろうと歩き出すがガシリと両腕と首元を掴まれた。



「うぐっ」

「何言ってるネ!もう悠の分も盛っちゃったアル」

「みんなで食べた方が美味しいですよ」

「よ~し、お前ら悠を連行するぞ~」



右の腕に神楽ちゃん、左の腕に新八くん、そして首に巻きついた腕は銀のもの。

ずるずると家に戻され、強制的に椅子に座らせられる。





そこには、三つしか置いてなかったはずの茶碗が…四つあった。


まるで私も彼らの一員になれたような、そんな感じがした。



「お前ら、ちゃんと手は合わせろよー、いっせーの」

「「「いただきます!」」」「…いただきます」



賑やかで五月蝿いけど、嫌な感じはしない…。



「あ、悠が笑ってるアル!」

「え、本当だ!?」

「ちょ、おま、カメラ、カメラどこだ!!」



寧ろ、温かい。

こんな日々が続けばいいのにね。






end