大体、拭き終った。
闇に浮かぶ月
そういえば、男はまだ食べ終わらないのだろうか・・・と、様子を見に行く。
「食べ終わりましっ!?・・・」
居間の戸を開ければ、男が上半身、裸だった。
急なことに、目を見開き・・・固まる。
「クク、どうした?」
絶対、わかってやってやがる。
「いーえ、何も・・・先に包帯取っててくれて、助かりました!」
嫌味ったらしく、言って、隣にいく。
「てか、自分で取るなんて痛くなかったんですか?」
「昨日と比べれば、なんともねぇ」
「・・・(どんな傷だったか、知ってんのか、この人。 てか、今、思えば一日、二日で動ける傷じゃなかった気がする)」
傷の様子を見れば、顔が自然と、引きつる。
治りが早い。 傷がふさがりつつある。
世の中、こんな人もいるんだな、と思い、包帯と塗り薬を取り出す、そして塗り薬を昨日と同じように塗る。
「ちなみに、なんでこんな怪我したんですか?」
「・・・知って、何か意味あんのか」
まぁ、ごもっとも、知って何になるという訳でもない。
「なんとなく、気になっただけです。 まぁ、話したくないならいいですけど・・・あ、でもこれだけは、教えてください」
「なんだ?」
「貴方のなま―――」 [ピンポーン]
貴方の名前は、何ですか? と聞く前に、家のチャイムが鳴る。
タイミング、悪いなーと思いながら、立ち上がる。
「ちょっと、行って来ます。」
居間の戸を開け、玄関に向かう。
その時、男が私に鋭い視線を向けていたのも、知らずに。
――――
「はいはい、今、開けますよ」
声を掛けて、歩いていく。
さっきから、チャイムの音が鳴り止まない・・・少しぐらい、待てというのだ。
「はい・・・なんです、か?」
いい加減に、インターホン押すの止めろと、怒りの気持ちを抑えながら、開ければ。
瞳孔が開きぎみ男が立ってた。
「おい、お前―――「すみません、その瞳孔はうちじゃ、どうしようもないので、お引取りください」
目が合い、冷静に私は、戸を閉める。
「どう意味だ、コラァ!!」
「ちょ、不法侵入! 止めてくださいよ!?」
よし、包帯を巻く作業に戻ろうと、歩き出した。
しかし、男は怒鳴りながら戸を思いっきり、開けてきた。
「・・・で、何か用ですか?」
一呼吸してから、男を見つめながら、言う。
男は、こちらをギロリと一度睨んで、何か言いたそうだったが、顔を引きつらせながら、落ち着け、俺と・・・言って、口を開く。
が、その前に
「あ、瞳孔関係のお話じゃ、私お役に立てませんよ?」
「上等だ!! 表出やがれ!?」
この人、面白いな・・・。
「冗談ですよ。 私も忙しいんで、用件なら早くしてください」
「てめぇ・・・、ああ。 わかった」
「(おお、我慢してる。 えらいえらい)」
絶対、切りかかって来たいんだなと、わかるぐらい、手を握りしめてた。
「ふぅ・・・昨日、夜、この周辺に―――高杉晋助が目撃された。」
真剣な表情に変わって、私に何かの紙を見せた。
私は、その紙を受け取り、内容を読む。
「!・・・」
まず、目に入ったのは写真だった。
冷や汗が、流れたのは言うまでも無い・・・だって、写真は見たことがある人だったから。
そう、私が昨日、手当てをして・・・家に連れてきた人物なのだから。
END