お店の人に言われたとおりに、進めば・・・森は抜けれた。
しかし、抜けなければ良かった・・・。
「お姉さん~、逃げないでよ」
「そうだよ、お姉さん。 痛みなんか、ないからさ」
森を抜ければ・・・大きい門が目に入った。
そして、斧を持った二人の子供・・・見分け方が目と服などの色でしか、わからないほど似ている、多分双子だ。
双子が、エフェルを見つけるや否や・・・笑顔で、切りかかってきたのだ、斧で。
びっくり、したが・・・なんとか、避ける。
「痛みはなんでも、あるよ・・・」
そんな会話をしながら、切りかかるのを避けを繰りかえした。
本当なら、遠くに走って逃げたいのだが・・・逃げようとすれば、挟み撃ちに会い・・・双子達は、にこりと笑って、
「「逃がさないよ、お姉さん」」
と、何とも息があっている・・・さすが、双子だ。
でも、感心している場合ではない。 力に自信は、あるが・・・体力は、最低なくらいない。
今でも、避けるのがやっとのところだ。
そのうち、ばっさりいく気がしてならない
「(多分、この子供達・・・ブラッディ・ツインズだ。 ユリウスに聞いたとおり、斧も持ってる・・・そして、誰構わず、切りかかることも、聞いてる)」
「お姉さん、中々粘るね」
「うんうん、僕達びっくりだよ」
「・・・はぁ・・・帽子屋ファミリーの屋敷・・・」
キーン! 二人の子供達が、交互に斧を振り落とし、ぶつかって金属音響く・・・そのおかげで、エフェルの言葉は聞こえない。
此処がどこか、確信を持てたのはいい。
だが、それがユリウスに一番、気をつけるよう・・・言われている場所だった。
「あ・・・」
疲れが、出てくる・・・もう一度、避けたとき・・・バランスを崩してしまった。
何とか、体勢を整えるものの・・・目の前に見えたのは、
「さようなら、お姉さん」
「楽しかったよ、お姉さん」
同時に、双子が斧を振り落とすところだった。
ぎゅっと、目を瞑る・・・目を見開いたまま、死ぬのは・・・嫌だから。
――――キンッ!
何かの音が、聞こえたと思うと・・・すぐさま、誰かに抱き寄せられた。
「うわぁ!」
あまりの力強い引き寄せに、情けない声が出る。
誰?と言う前に、聞き覚えのある声がすぐ近くで聞こえた。
「間に合ったか? 怪我はねぇよな」
「・・・・・・あ」
ぴょこぴょこと、うさぎ耳が揺れる。
オレンジ色の髪・・・そして、除いてくる顔にも、心当たりがあった。
エリオット=マーチだ。
名前と顔が一致したとき・・・ぴくっと、エリオットの眉が動いた。
その視線は、どうやら先ほど、避けたときに首の所に出来た小さな傷みたいだ・・・。
「くそガキ共、覚悟は出来てんだろうな」
さっきまで、笑っていたのに・・・がらりと、表情が変わった。
若干、周りの温度が下がった気がする。
「やれるもんなら、やってみろよ。 ひよこうさぎ!」
「僕達の仕事の邪魔するなよ!」
パァン!、キィィン・・銃の音と、金属の音がする。
エフェルは、それを止めることも出来ずに・・・眺めることしか出来なかった。
でも、どちらか・・・危なくなったら、自分も銃を抜こうと、服に隠されている腰の銃をそっと、触る。
「お嬢さん、それで彼らを撃つ気かな?」
「・・・撃つ―――・・・けど、武器にだけ当てる。」
ん?
今、エリオットと双子達は戦っていて・・・近くに、誰もいなかったはず。
誰と話している?
疑問に思ったと同時に、バッと、エフェルは後ろにいるであろう人との距離を空ける。
そこにいたのは、帽子を被った男の人だった・・・黒いシルクハットで赤い薔薇をつけていて派手な帽子だ。
自分のと、比べる・・・いや、比べてはいけない、自分のは地味だ、うん、なんだか地味でよかった。
「・・・お嬢さん、失礼なことを考えているだろう?」
「え・・・いえ、別に。(心でも、読めるんだろうか)」
何歩か、後ろに下がる・・・しかし、なぜか帽子の人もそれと同じくらい、いやそれ以上に近付いてくる。
「・・・えっと、なにか?」
「なるほど・・・君が、赤髪か」
じぃっと、こちらに視線を向けてくる・・・主に、先ほど動いたせいで、乱れた、帽子から出ている赤髪に目がいっている気がする。
いや、多分この赤髪のせいで『赤髪』とわかったのだと、思う。
「私の部下が迷惑をかけたそうじゃないか」
「・・・部下?」
部下・・・といわれても、心当たりが無い。
記憶を辿ってみる。
・・・そこに、エリオットがこちらに気付いた。
「ブラッド!」
その名前に、エフェルは肩を揺らした。
・・・そうだ、今更だが、エリオット=マーチは帽子屋ファミリーの№2だ。
そして・・・帽子屋ファミリーのボスは、ブラッド=デュプレという名前だ。
背中に冷や汗が、流れた・・・。
その間に、エリオットがこちらに走り寄ってくる。
・・・双子達が、追いかけてきて斧を振り落とそうとしたが、ブラッドが静止の言葉を言うと、ピタッと大人しくなる。
そして、思い出したように声を出した。
「ああ、そうだ。 自己紹介していなかったな。 私は、ブラッド=デュプレ。 そこにいる双子は、トゥイードル=ディーと、トゥイードル=ダム、うちの門番だ。 エリオット、は紹介などしなくてもわかっているだろう」
もしかしたら・・・という期待を、ことごとく・・・裏切ってくれた。
失礼のないように、丁寧に自己紹介をする。
「私は赤髪です、エリオット・・・さんから、聞いている通り、名も無かった役なしです。」
役なしの部分を出来るだけ、強調して・・・会釈する。
それに彼は、笑みを浮かべ・・・こちらに、手を差し出してきた。
「それでは、役なしお嬢さん・・・感謝の意を込めて、お茶会にお誘いしよう」
エフェルは、手を取らず、確認を取る。
「・・・いいんですか? 役なしの分際ですよ」
なぜか、敬語になってしまう・・・なんだろう、今まで会った誰よりも迫力がある気がしてならない。
「もちろんだ、役なしだろうと、なんだろうと・・・エリオットが世話になったのは、変わりないさ」
「いいんですか、そんな・・・本当、私、敵かもしれませんよ」
「そんな訳ねぇよ!!」
今まで、黙っていたエリオットが急に、言葉を遮って怒鳴る。
あまりの大きな声に、耳が痛くなる・・・ブラッドも、顔を顰める。
「エリオット・・・大きな声を出さずとも、お嬢さんには聞こえるだろう」
「ご、ごめん・・・」
ブラッドに怒られ、エリオットの耳が垂れた。
また、うずうずしてきた。
「さて、お嬢さん・・・エリオットも、こう言っているが? どうする?」
断れないと知っていながら絶対、聞いてきている。
目を見れば・・・大体はわかってしまうものだ。
諦めたように、一度エフェルは頷き・・・ブラッドに真正面から、見合った。
「ぜひ、参加させてください・・・」
満足そうに、一度ブラッドは笑い・・・もう一度、手を差し出してきた。
今度は、ちょっと戸惑いながらもゆっくりと、手を重ねた。
この後、どうなるのか・・・それは、きっと神様もわからないかもしれない。
END